ブロードバンド競争はラストマイルからラストフィートへ
続・ホワイトスペース利活用の行方

デジタル・ホーム戦争で注目されるITU-T G.hn規格を解説する米ホームグリッドフォーラムのVenkat R.Uppuluri事務局長 (2010年9月デジタルホーム会議で筆者撮影)

 前回は、新たな電波資源として注目を浴びるホワイトスペース(スーパーWi-Fi)を解説した。そこで述べたように、米国はホワイトスペースを無免許周波数*1 に開放した。一方、日本は地域放送サービスを中心に従来通り特定事業者への割り当てを行おうとしている。

 筆者は、日本でも「ホワイトスペースはWi-Fiなどのホームネットワーク、地域IPネットワークの充実に活用すべきではないか」と考えている。今週は"なぜ、地域放送よりも、ネットワーク通信を重視するか"を分析しながら、ブロードバンド整備と電波利活用についてもう少し掘り下げてみたい。

ブロードバンドのボトルネック、モバイルは解消へ

 前回、ブロードバンドを強化するためにホワイトスペースを無免許周波数の充実に当てるべきだと述べた。では、なぜホワイトスペースを無免許周波数に開放すべきなのだろうか。私は次の2点を指摘したい。

1. ブロードバンド整備において、モバイル・ボトルネックは数年で解消される
2. ボトルネックは"ラストマイル"から"ラストフィート"へ移っていく

 ブロードバンドは大雑把にアクセス網とコアネットワークに分かれる。アクセス網とは、私たちが直接利用するネットワーク部分で、固定系のアクセス網は光ファイバー、DSL、ケーブルモデム、無線LAN(Wi-Fi)などに分かれる。一方、モバイル系*2 は主に携帯データとなっている。

*1 本稿の無免許周波数とは、免許不要局が使える周波数のこと。免許不要局は日本では、(1)無線マイクや無線LAN等の小電力無線局、(2)市民ラジオ、(3)ラジコン玩具などの微弱無線局を指す。
 
*2 モバイル(移動通信)は大きくふたつの意味に使われる。ひとつは携帯電話のように車などで移動しながらでも利用できるタイプ。もうひとつは、公共Wi-FiやWiMAXなどのように、歩く程度の移動あるいは利用中は移動しないタイプ(俗称ノマディック・サービス)。
 
  前者は無線基地間での端末移動に対応するハンドオフ機能をネットワークが持っている。一方、後者はハンドオフ機能がないあるいは限定されている。ちなみに、WiMAXは前者に分類できるモバイルWiMAXと後者に属する固定WiMAXがある。本稿では、ハンドオフ機能を持つ前者のサービスをモバイルと呼んでいる。

 固定系サービスは、既に数十Mbpsから数百Mbpsの世界に突入しているが、携帯データは数百Kbpsから数Mbpsと固定系に比べて極端に遅い。そのため、ブロードバンドでサービスを展開しようとする企業やデベロッパーにとってモバイルがボトルネックとなっている。

 たとえば、パソコンや家庭のネットテレビにはHDビデオやHDビデオ・ゲームを配信できる。しかし、移動中のノートパソコンやタブレットでは同じサービスが利用*3 できない。これがモバイル・ボトルネックだ。これでは将来、"茶の間テレビで見ていたニュースを一時中断し、通勤中のバスで続きを見る"といった次世代サービスをテレビ会社が提供できない。

 しかし、モバイル・ボトルネックはあと数年で大きく改善される。日本でも米国でもLTE(Long Term Evolution)と呼ばれる第4世代*4 携帯データ網の整備が始まった。たとえば、米国のベライゾン・ワイヤレス(米携帯業界トップ)はLTE網を建設中で、そのサービス・カバー地域の人口は2010年末までに1億1000万、2012年末には2億、2013年末には2億8500万以上に達する。

 つまり、向こう3年で現在の3G並に4Gが普及する。ベライゾンのLTEは当初、下りで5Mbpsから12Mbps、上りで2Mbpsから5Mbpsを保証している。もちろん、次世代LTEはより高速を目指しており、最終的には移動中で下り100Mbps、家庭など固定サービスで1Gbpsという高い目標に向かっている。

 少なくとも2015年までにはDSL並のスピードが実現できると予想されている。日本でもNTTドコモをはじめとしてLTEネットワーク整備が始まった。LTE整備により、モバイル網はようやくスピード面で固定網と同じ水準になる。つまり、2014年ぐらいには、モバイル・ボトルネックは大きく改善されるだろう。

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