基軸通貨の地位が危なくなるドル
長い目で見ると、ドルは、基軸通貨の地位を維持することが難しくなっているとも考えられる〔PHOTO〕gettyimages

 7月27日時点で、米国債のデフォルト懸念は解決されず、格下げが実施される可能性を払しょくすることすらできない。それに伴い、ヘッジファンドなどの投機筋や、金融機関の為替ディーラーたちは断続的にドル売りを仕掛けている。それを見た、ベテランの市場関係者の一人は、「基軸通貨であるドルが、投資家から信認を取り戻すのは容易ではないだろう」と指摘していた。長い目で見ると、ドルは、基軸通貨の地位を維持することが難しくなっているとも考えられる。

 今回の現象の直接の原因は、オバマ政権と共和党との対立だ。共和党が約14兆3000億ドルの国債発行残高を引き上げることに反対しているため、米国政府は、新規に国債発行を行うことが出来ず資金繰りに窮しているのである。ただし、今回の出来事を、単なる政治的な対立の産物と捉えることは適切ではない。その裏に、もっと大きな問題が潜んでいるからだ。

世界的な財政状況の悪化

 米国債のデフォルトに関して見逃してはならないポイントは、世界の主要国、特に先進国の間で、財政状況が悪化していることだ。2008年9月のリーマンショックに続く世界的な経済低迷の中で、多くの先進国は、国債発行によって景気刺激策を打ってきた、その"つけ"が、現在、色々なところで顕在化している。

 ユーロ圏では、ギリシャやアイルランド、ポルトガルさらにはスペインやイタリアにも、ソブリンリスクの懸念の火の手が広がっている。ソブリンリスクの高まりは、当該国が、返済が困難なほどの国債を発行したことに端を発している。それこそまさに、2000年代初頭のバブルの跡始末に伴う財政悪化であり、景気刺激策を採ってきた"つけ"が顕在化したものだ。

 一方、大西洋を挟んだ米国でも、住宅ローン会社の救済や、景気刺激策などのために多額の国債を発行したコストが、今、政府の双肩に重くのしかかっている。しかも、当初、ほどなく景気が回復することが期待されたのだが、肝心の経済活動の回復が遅れているため、景気対策の長期化を余儀なくされる一方、景気回復の遅れで期待されたほど税収が上がっていない。それが、主要先進国の財政状況を悪化させる大きな要因となっている。

 今後、国債発行上限問題に何らかの進展があれば、短期的には、投機筋などのドル売り持ちポジションの手仕舞いが出て、ドルが買い上げられる局面はあるとみられる。しかし、米国経済の回復が遅れたり、政治情勢が一段と混迷するようだと、基本的にはドルは弱含みの展開になることが予想される。それは、着実に、基軸通貨であるドルの信認が低下してゆくことになる。

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