ネットビデオの覇者"フールー"売却を追う(前編)
なぜ、米大手メディアは同社を見捨てるのか

Hulu Main Homepage(出典:Hulu社プレスキット)

 約1ヵ月前、米国でブロードバンド放送の人気サイト"フールー(Hulu LLC)"の売却先探しが始まった。以来、米国のIT業界では"どこに売却されるか"とメディアが大騒ぎを繰り広げている。

 フールーといえば2007年に、ディスニーやフォックスなど大手メディアが出資して始まったネット・ベンチャーだ。2008年3月の一般公開以来「The Office」「Law & Order: Special Victims Unit」「Glee」など大手テレビ局の看板ドラマで人気を集め続けている。

 2010年11月には有料サービスのフールー・プラス(Hulu plus)も開始した。そうした矢先、ディズニーやニューズ・コープなど同社株主は、売却を決定した。

 なぜ、順調に成長している同社を売却するのか。今回は、売却の理由について追ってみたい。

フールーの人気は、ネットによる無料再放送

 2005年にユーチューブ(YouTube)が登場して以来、米国のブロードバンド放送業界では様々な商業化モデルが模索されてきた。広告モデルを追うグーグル、レンタル・モデルを追うアマゾン・ビデオやネットフリックス(Netflix)、小売りモデルを追うアップルなどが競い合う中、ネット・ビデオの卸売りモデルで先頭を走っているのがフールーだ。

 最近、会員数でネットフリックスに大きく引き離されたが、若者には『映画ならネットフリックスだが、テレビ番組ならフールーだ』と根強い人気を誇っている。

Hulu TV Homepage(出典:Hulu社プレスキット)

 2011年6月末現在、有料会員数は87万5,000名で、今年の売り上げは5億ドル(約400億円)越えると予想されている。同社の月間視聴者数は2850万人(ComScore Video Metrix調べ)で、CATV業界第2位のタイム・ワーナー・ケーブルを越えている。また、同社経営陣は、2013年あたりをめどに20億ドルの株式上場(IPO)を狙っていた。

 同社の株主はNBC(Comcast傘下のNBC Universal、持株比率約32%)、フォックス(Fox Entertainment Group、同31%)、ディズニー(Disney-ABC Television Group、同27%)、プロビデンス(Providence Equity Partners、同10%)から構成されており、各社の看板番組をフールーが配信している。

 その他にも、様々なビデオ番組を同社は配信しており、その調達先は多岐におよぶ。しかし、人気を支えるのは、広告付きとはいえNBCやABC、Foxという大手テレビ局(同社株主)の看板ドラマだ。つまり、人気テレビ・シリーズを、簡単に無料で、パソコン視聴できるところに"フールーの魅力"がある。

 同社が当初注力したのは、オンライン広告モデルではなく、ウェブ・シンジケーション・モデル、つまりウェブ番組の卸売りだった。同社は発足時に、AOLやMSN、MySpace、Facebook、Yahoo!、Xfinity TV(コムキャスト社)などへ番組を提供している。

 次に、2010年11月には月額約8ドルで有料サービスのフールー・プラスも開始した。当初は1万3000時間程度だった有料コンテンツは、現在2万8000時間に及び、それにつれて有料会員数も順調に増加してきた。つまり、フールーはウェブ・シンジケーションをベースに広告、課金、卸売りのすべてをカバーしている。

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