雑誌 ドクターZ
特別版 このままではマネー敗戦
民主党よ、経済は苦手ではすまない

 菅直人政権の経済運営はもはや国民の迷惑である。15年ぶりに80円台に突入した円高は、輸出関連企業に大打撃を加え、国民生活に負の影響を与え続けているが、収まる気配はない。

 それはそうだろう。菅氏は昨年の副総理兼国家戦略相時代にデフレ宣言をしたが、経済を知らないから何ひとつ手を打てなかった。円高とデフレはコインの裏表の関係だ。デフレを止めることができなかった人が、円高に対処できるわけがない。

 モノの量が通貨の量に較べて相対的に多くなると、モノの価値が薄れるから値段が下がる。これがデフレだ。一方、為替レートも通貨同士の相対量で決まる。円がドルに較べて相対的に少なくなると円に希少性が出るので円高になる。つまり、デフレも円高も通貨=円の流通量を増やすことが有効な対応策なのである。

 結論として、おカネを刷る日銀の役目が極めて重要になる。だが、民主党政権下で日銀は野放し状態だ。自公政権時代は経済財政諮問会議に日銀総裁もメンバーとして加わっていたので政府の意向を浸透させることができたが、民主党はその仕組みをなくした。代わりに国家経営の司令塔になるはずだった国家戦略局も有名無実だ。

日銀にコロリと騙された

 10月5日、その日銀が金融緩和策を決定・実施した。誘導金利を従来の「0・1%前後」から「0~0・1%程度」とする政策が軸で、メディアはこれを「実質ゼロ金利」ともてはやした。桜井充財務副大臣も「我々が想定している以上の政策を打ち出していただいた。心から感謝を申し上げたい」と絶賛した。呆れるほど不用意だ。

 役所文書の「等」「程度」には罠があるし、本文より注釈や別添に重要なことが書かれていることがしばしばだ。今回の誘導金利も「前後」と「程度」が使われており、役所のお約束としてこれらの用語には5割程度の許容度がある。つまり、「0・05~0・15%」が「0~0・15%」に変更されたにすぎないのだ。誤差の範囲である。

 そして案の定、公式文書の「注2」には、補完当座預金制度の適用金利や資金供給オペレーションの貸付金利といった主要金利について「引き続き、0・1%である」と明記されている。いったいどこが「実質ゼロ金利」なのか。

 また、35兆円規模の資産買い入れ基金創設が「目玉」であるかのように報じられているが、実際の資産購入は5兆円にすぎないし、「別添2」には買い入れ資産について、「開始から1年後を目途に・・・買入れを進めることを軸に検討する」と書いてある。

 額も少なく、スピード感は皆無で、しかも「軸に検討」だから購入するかどうかはまったく不明。国民を愚弄するにもほどがある。

 もっとも、強(したた)かなマーケットは、この程度のことはお見通し。だから円高は逆に進み、ついには80円台に突入したのだ。

 みっともないのは政府である。日銀にまんまと騙されて「想定以上の政策」と大歓迎しただけでなく、「心から感謝」までしてしまった。金融緩和=円高是正に消極的な白川方明(まさあき)総裁にお墨付きを与えたと同時に、当面は為替介入しないと宣言しているようなもので、海外から見れば円高容認。日本にとっては、紛れもなく「マネー敗戦」である。

 菅政権がダメなのは金融政策だけではない。補正予算も情けない。

 10月8日、菅内閣は補正予算案を柱とした総額5兆500億円の追加経済対策を閣議決定した。この対策でGDPを0.6%押し上げ、雇用を45万~50万人創出するとしている。代表選で「雇用、雇用、雇用」と叫んだ菅総理の思いがつまっているのだろう。だが、この数字ははっきり言って嘘っぱちである。

 経済学では、失業率と実質成長率の間に「オークンの法則」という相関関係があることが知られている。国ごとにそれぞれ安定した相関関係があり、日本の場合は失業率を1%下げるには、成長率が3%高くなる必要がある。これに当てはめれば、0・6%成長は失業率を0・2%引き下げる効果があることになる。

 そして、日本の労働力人口の0・2%は約13万人。政府が創出するとしている雇用増の3分の1にも満たないのだ。ちょっと大げさに言ったというレベルの話ではない。デタラメで悪質だ。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら