田原総一朗×夏野 剛「カネ、人、技術の揃ったニッポン企業はこうやれば浮上する」
立ち上がれ!ガラケー日本!! vol.2
田原 総一朗

vol.1 はこちらをご覧ください。

田原: この20年、日本が完全に落ちこぼれたといわれます。それについてはいろんな統計があるんだけど、スイスのある機関の調べでは、1990年には日本の国際競争力は世界で第1位だった。それが今27位に落ちてしまった。あるいは、2000年には日本の一人当たりのGDPが世界で3位だった。それが23位に落ちてしまった。なんでなんですか?

夏野: 日本に対しての悲観論はたくさんあります。だけれど、僕は楽観視してるところがあるんです。

田原: そこが聞きたい、一番。

夏野: それは何かと言うと、経営の三種の神器は何って考えるんですよ。そうすると、まずお金ですよね。だいたい企業が何かやろうとすると、どうやってお金を集めるかが大事なんですね。

 これを海外から集めるってすごく大変なんですよ。日本は1400兆円の個人金融資産というのが国内にある。

 これがほとんど銀行に預けられちゃってるんですけど、もうちょっと、たとえば100兆円でも株式市場に来たり、あるいは新しい技術に来たらすごいことになりますよ。お金があるってことですよね。

田原: それに幸いなことに円高でしょう。円高ってのは、集められれば海外からなんでも買えるわけですよね。

夏野 剛iモードの父と呼ばれ、NTTドコモの独走時代を牽引しながら、その後、退職。現在はドワンゴ取締役などとして経営者、そして論客として活躍する

夏野: まず、お金は国内にある。たしかにベンチャーの人が集めようと思うと、なかなか集まんないですよ。でも、少なくとも国内にあるっていうのはすごいアドバンテージですよ。

 それに二番目は人材です。日本の教育レベルが下がったとかいろいろ言う人がいますけど、僕も海外で運営したことあるんで言えますが、日本だけなんですよ、経営者が「従業員さぼるんじゃないか」って、あんまり考えなくていいのは日本だけなんです。

田原: そりゃそうだ、みんな働いてる。

夏野: アメリカとか中国行くと、みんな指示出してないとすぐ違うことやってるんですよ。で、「なんで違うことやってるんだ」と言うと、「だって指示受けてないもん」と言っちゃうんです。指示しないと、3時に帰っちゃいますよ。

 ところが、ニコ動のエンジニアもそうなんですけど、日本人はほっとくと深夜まで働いてるんですよ。指示しないと仕事探すんですよ、一生懸命。こんなすごいは国ないですよ。

田原: 古い話で恐縮ですが、Quality Controlという話があった。日本ではTotal quality control。

夏野: TQC。

田原: もともと、QCというのはアメリカで始まった。アメリカは大失敗した、日本で成功した。なんでアメリカで失敗して、日本で成功したか。アメリカは上の言うことを下が聞く。上が職場で仕事しやすくするために、いろんなことやれって指示を出すんだけれど、、上は職場を知りません。上が言うことはろくなことがない。

 日本は逆、下から上がってくる。下から「こうしたい、こうしたい」という提案がある。もっと言えば、日本の場合には、上の命令なんかなし。下が勝手にこうしてみようと、それで成功したのを上げるんですよ。

日本に残された時間はあと10年

夏野: そうなんです、こんな国ないんですよ。人材のレベルが何とかとか、ゆとり教育が何とかとか言ってるけど、まだまだ全然問題ない。それで2つ。そして最後、技術があるんですよ。

田原: これは世界一だ。

夏野: どこに行ったって、国内にこんなに技術がごろごろ転がってる国は日本しかないんです。この3つが経営の3種の神器なんですよ。お金があって、人がいて、技術があったら失敗するわけないんです。ただね、あとマネージメントが必要なんですね。これがダメなんですよ、日本は。逆にいえば、マネージメントに、リーダー層に、意思のある人間、すごい哲学がある、「俺はやるぞ」という強い意思のある人間を連れてくれば日本は復活します。

田原: 残念なことにそういう人間は、日本では社長になれないんですよ。

夏野: いままではね。でも、いよいよね、こんなことになってきて、このまま行くと日本は2050年に人口1億人切るんですよ。2100年には6000万人になっちゃうんですよ。このまま行くと。

田原: 大丈夫、ならないですよ。僕は自信持ってます。

夏野: なんでですか? 

田原: それは、今日本が端境期だからです。例えば男女雇用機会均等法とか、男女共同参画社会とか、今までは女性ははっきりいえばお茶くみでしか入れなかった。今は総合職で入れる。総合職で入ると地位もあがっていく。するとね、いまの日本の職場では結婚すると損なんですよ。出世も遅くなるし、給料も減る。これじゃ結婚しませんよ。結婚が遅くなる、子どもを産まない。

 それに対してフランスやアメリカは2人で2を超えてる。日本は1.37。なんで超えてるか、それは子どもを産んでも損じゃないよと、女性が思えるからです。それも変わりますよ。

夏野: たしかに、そういう社会を作らなきゃいけないし、そうなってほしい。ただし今のところ、政府の政策見てても、社会保障の分担は今の菅さんの演説を聞くと、全然若者とか女性に重点配布していませんから。

田原: 大丈夫です。テレビで菅さんの奥さんと話したときに、「菅さんは何にもわかってないから、奥さん、言わなきゃ」と言ったんですよ。「言いますとも」ってましたから。あの人は奥さんに言われたら大丈夫(笑)。

夏野: そこを重点的にやんなきゃいけないと思う。今のままだと市場がシュリンク(shrink)する。市場がシュリンクするということは、企業は成長がなくなると今の規模を維持できませんから、成長を求めるなら外に出ていかなきゃいけないんですよ。

 新しいことをやんなきゃいけない。すると、今までみたいに積み上げの経営者ばかりじゃだめなんですね。こういうところまで追い込まれているということなんです。

 それから、1400兆円の個人金融資産もね、国が900兆円も国債で持ってるから、残り500兆円しかないんです。これ逆転しちゃったら、つまり、国の負債が1400兆円超えると、IMFがやってきて破綻ですからね。だから日本に残された時間は短いんです。

田原: かつて1997年、東アジアの国々が通貨破綻して、まさにどんどんIMFが入って来た。韓国もそうですね、管理されてどうしようもなくなった。下手すると日本もそうなると。

夏野: いやあ、もうあと10年しかないです。そうならないためには、日本の企業が自分からきちんと態勢立て直さなきゃいけない。

 簡単なんですよ。だって、技術があって、人がいて、お金があるんだから、経営者を替えるだけなんだから、これだけでできるなんて、マジックみたいなもんですよ。

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