スポーツ

佐々木則夫監督となでしこたちの1300日戦争
貧乏に負けなかった

2011年08月03日(水) 週刊現代
週刊現代
佐々木監督は1年前から「なでしこは世界一をめざす」と語っていた「選手にはスポーツ馬鹿になってほしくない」と言う佐々木監督〔PHOTO〕gettyimages

 お金にも環境にも恵まれない選手たちの頑張りを支えたのは、型破りな指導者の存在だった。オヤジギャグと細かい気配りは「小さな娘たち」の才能をどう開花させたのか。苦闘と笑いと感動の物語。

給料をもらえない選手も

 サッカーで世界一に輝いたチームが、飛行機では狭苦しいエコノミークラスで移動する---。

 男子なら絶対にあり得ない話が、女子では現実に存在する。W杯で劇的な優勝を収め、7月19日に帰国したなでしこジャパンのメンバーは、ルフトハンザ航空のエコノミークラスに乗っていたのだ。

 移動はビジネスクラスと決まっている男子代表チームと比べると、天と地ほどの待遇の違いだが、気の毒なことに、女子サッカー界は経済的に恵まれていない。選手たちも、必死で練習に打ち込み、名誉ある国の代表に選ばれているにもかかわらず、生活は決して楽ではない。なでしこジャパンの選手の平均年収は約240万円、最高レベルの澤穂希でも350万円前後と思われる。

 大半の女子選手がサッカーだけでは生活できず、昼は会社勤めやアルバイトを含むさまざまな仕事で生活費を稼ぎ、夜に練習という毎日を送る。所属チームから給料が出ない選手もいる。昼から練習するなど夢のまた夢、というわけだ。

 そんな貧乏に負けずに世界一の栄冠をつかんだことは素晴らしいとしか言いようがないが、その偉業は一人の男にがっちり支えられていた。なでしこジャパンを率いる佐々木則夫監督(53歳)である。

 この佐々木監督、他のスポーツ界の大物指導者とはかなり雰囲気が違う。普通、名監督と聞けば、近づきがたいカリスマ的な印象で、試合中は鬼の形相で檄を飛ばす—というイメージを多くの人が持つだろう。ところが、佐々木監督はいつもオヤジギャグを絶やさず、怒りをあらわにすることもあまりない。選手からは「監督」ではなく「ノリさん」と呼ばれている。

 サッカージャーナリストの江橋よしのり氏は以前、佐々木監督がなでしこの現役選手と一緒にサッカースクールを訪れ、少女たちを指導するところを目撃している。監督はやおらマイクを持つと、「さあ、ドリブル競争をやるぞ。よ~い、ドン!・・・と言ったら始めること」 とボケてみせた。なでしこの選手も含めて全員がずっこけ、日本代表監督という重々しいイメージにそぐわない楽しさに、会場は大笑いになったという。

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