21世紀の怪物 中国とどう闘うか 前編このままでは日本は必ずやられる

2010年10月18日(月)
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 野口氏が脱北者支援という特別な活動にかかわっていたから、中国の公安に狙われたということは間違いない。しかし、中国に詳しい専門家や現地駐在経験を持つ人は、「ある程度の期間中国に滞在する人で、中国の監視網に掛かっていない人はいない。フジタの社員が、日中間で政治的な問題が生じているときに突然拘束されたように、すべての日本人が公安や治安機関の標的となる」と口をそろえるのだ。

プレゼントの中に盗聴器

 独立総合研究所の青山繁晴代表は、駐在する日本人を狙った監視の手口の一端を説明する。

「ターゲットが日本人の場合、一般的にはその人が使うカラオケバーなどを突き止めて、女性スタッフあるいは男性のバーテンなどに偽装した工作員を店に潜入させ、客の情報や弱点を探ります。当然女性スタッフの場合なら、性交渉も持ちかけて、弱みを握ります」

 いわゆるハニートラップは古典的な諜報手段のひとつだが、この手法は影を潜めるどころか、年々その重要性が高まってさえいるという。中国に進出する企業向けのコンサル事業を行っている調査員は、こんな話を明かす。

「最近、中国駐在の日本人の間では、中国人相手のビジネスの難しさに打ちひしがれて精神を病む『中国うつ』が急増していますが、彼らはハニートラップのターゲットになりやすい。精神的には落ち込んでいるが、高い地位におりカネも持っているので、癒しを求めてバーやナイトクラブ通いをはじめるうちに、中国人女性にはまってしまうのです」

 さらにこの調査員が続ける。

「サイコロを振って、出た目に応じてお酒を飲むゲームが、ナイトクラブではよく行われますが、相手が日本人ターゲットの場合、サイコロに仕込みをして、より多くのお酒を飲む目が出るようにすることもあります。狙いは携帯電話の中の情報です。最近のビジネスマンはスマートフォンひとつで、スケジュールから会社の重要なメールまで管理するので、相手が眠ってしまえば、その人がもつ大方の情報は吸い上げることが可能なのです」

 ナイトクラブで泥酔し、卑猥な写真のひとつでも撮られればそれでおしまい。会社の名刺は出会った時に女性に渡しているし、スマートフォンのなかには当然家族の連絡先やメールアドレスも入っている。「この写真を会社や家庭にばら撒くわよ」とひと言脅せば、彼は立派な協力者に成り代わるのである。

 中国に監視されているのは、人の行動だけではない。

「たとえば、日本の企業の幹部が中国に行けば、その滞在先に盗聴器が仕掛けられると考えたほうがいい。政治体制が違う国だということを忘れてはならないのです」

 中国の松下電器有限公司の元取締役で、『今、あなたが中国行きを命じられたら』(ビーケイシー刊)の著者・高田拓氏がこう警告するように、中国でビジネスに携わる日本人は、中国に貴重な情報をもたらす良き「運び屋」となる。

 電話などの盗聴なら、まだいくらか警戒のしようがあるかもしれないが、厚意を装った諜報活動も行われている。大手商社に勤務する社員の話。

「中国の取引先企業の社員から、デジカメをプレゼントされた。帰国後に使用してしばらくすると調子が悪くなったので、修理に出したら盗聴器が仕掛けられていました」

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