21世紀の怪物
中国とどう闘うか 前編

このままでは日本は必ずやられる
[1] たったの25分! 屈辱的「御用聞き」外交の全内幕
       したたかな中国は菅直人が頭を下げてくるのを待っていた


温家宝に会えると知り、菅首相はベルギーまですっ飛んで行った。会談に成功すると大はしゃぎ。だが日中間の緊張関係は何も変わっていない。存在の耐えられない軽さが、日本を危機に陥れている。

誘拐犯にスリスリするとは

 中国・温家宝首相と、ベルギー・ブリュッセルで「会談」に成功した菅直人首相は、鼻高々だった。

「国内の反応はどうだ?」

 10月5日夕方に帰国した菅首相は、羽田空港に降り立つやいなや、側近の一人に弾んだ調子でそう電話をかけた。帰国の途中には、専用機の上から前原誠司外相にも電話をかけ、

「今後の日中関係のあり方について話をしよう」と、自信たっぷりに話していたという。

 だが、喜色満面の菅首相を待ち構えていたのは、その意に反して「総スカン」に等しい世論だった。京都大学大学院の中西輝政教授がこう語る。

「これはとんでもない失態外交です。前回、中国人船長を釈放してしまったことに、さらに恥の上塗りをするような失敗です。日本企業・フジタの社員が人質に取られたままの状態で温首相に会いに行くとは、『釈放してください』と懇願しにいったようにしか見えない。言ってみれば、誘拐犯に頭を下げに行ったようなものです。自国民が不当に拘束されているのですから、まずは抗議するのが当たり前でしょう。なのに、関係修復を求めて擦り寄っていくとはまったく信じがたい」

 ベルギーの現地時間で4日夜に行われた「日中首脳会談」は、わざとらしい舞台設定がなされていた。

 この夜、ASEM(アジア欧州会合)のワーキングディナーが終了した後、菅首相は、会場となったベルギー王宮の廊下を同じ方向に歩いている温首相を「発見」。声をかけたところ温首相が応じたため、「やあやあ、座りましょうか」と、廊下にあった椅子に座り、ハプニング的に「日中首脳会談」が始まったのだという。

浮かれて帰ってきたら、国会で連日の追及を受けた

 しかし、会談の時間はたった25分に過ぎない。

「自民党の外交部会に外務省が提出したペーパーの見出しも、『日中立ち話概要』となっていました。外務省自体が、会談と呼べるようなものではないと認めている」(全国紙政治部記者)

 しかも、「立ち話」とはいえこの肝心な場面に、菅首相は中国語ができる通訳を帯同していなかった。

 温首相のほうは、対話にあたって日本語ができる通訳を同席させていた。したがって温首相の発言は、その通訳が日本語に翻訳し、菅首相に伝えられた。

 一方、日本側の通訳は英語しかできなかったため、菅首相の発言はいったん英訳されて中国の通訳に伝えられ、その英語を中国の通訳が中国語に変換して温首相に伝える、という非常にややこしい形になった。

 菅首相にしてみれば、温首相がいったい何を話したのか、正確に把握することが不可能な上、自分の発言が正しく温首相に伝わったのかどうかも分からない。

 これでは、中国側に一方的に言質を取られたようなものだ。後々、菅首相は中国側に、これを駆け引きの材料にされる可能性があるのに対し、逆に温首相が「そんなことは言っていない」などと言い出しても、反論することはできない。こんなものが果たして「首脳会談」と言えるのか。

 この「立ち話」で、菅首相は尖閣諸島について「我が国固有の領土であって、領土問題は存在しない」と主張したが、温首相は「釣魚島(尖閣諸島)は中国固有の領土だ」と話したという。この時点で、まったく話が噛み合っていないことがよく分かる。これは「対話」ではなく、単に互いの主張をぶつけ合っただけなのではなかったか。

 実際、中国のメディアで、この立ち話は「温首相が釣魚島は中国の領土だと強調した」など、いかにも都合よく報じられている。中国は、菅首相があたかも御用聞きのように温首相に擦り寄り、「日本がヒザを屈してきた」ことにして、国内で大宣伝しているのだ。

「中国は、いまだに『謝罪と賠償』の要求を撤回していません。その段階で温首相に会ったのでは、世界から見れば、日本が中国に謝罪をして、関係修復を願い出たように見えます。国際外交の場では『ヒザを突き合わせて話せば分かり合える』というような、日本型の情緒的外交は通用しません。諸外国からは、日本がまた譲歩したんだな、と見られる。中国側は『日本が会いたいと言って来た』と触れ回る。なぜこんな愚かな外交をしたのか、世界の外交常識では考えられない」(前出・中西氏)

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら