トヨタ「カローラ」の生産ライン海外移転でも「空洞化」に脅えるなかれ


ダイハツ京都工場の閉鎖問題も浮上

 トヨタ自動車が国内で生産し、輸出している「カローラ」を海外生産に移すことを検討している。移転先については、北米市場向けは新たに稼働するミシシッピ工場、その他地域向けは台湾工場かタイ工場が有力。10月14日の為替相場は15年ぶりに1ドル=80円台に突入しており、円高による為替差損の影響を回避したり、生産コストの安いアジアで生産することで競争力を高めたりする狙いがある。

トヨタの看板車種のひとつである「カローラ」の国内生産の一部が海外に移ることは、製造業の空洞化を象徴しており、中小下請け企業が多い自動車産業の雇用に影響が出ると見られ、民主党政権が掲げる「雇用第一政策」に少なからず打撃を与えそうだ。

 トヨタは国内で現在、カローラを高岡工場(愛知県豊田市)と関連企業の関東自動車工業とセントラル自動車で生産。09年の生産台数は約22万台で、このうち半分以上を輸出している。今回の計画により10万台以上の生産が海外に移ることになる。一般的に自動車の大工場一つ分の年産能力は30万台程度であり、一工場の年間生産台数の約3分の1が消える計算だ。

 トヨタは減少する分を車の骨格がカローラベースの商用車「プロボックス」などの生産で補いたい考えのようだ。現在、「プロボックス」は子会社のダイハツ工業京都工場に生産委託しているが、その生産を「カローラ」の生産ラインの穴埋めに使うと見られる。この結果、今後、ダイハツ京都工場の閉鎖問題が浮上しそうだ。

 筆者はこうした情報を9月30日、あるトヨタ系部品メーカー幹部との取材でキャッチした。その際、同幹部は「トヨタは公式的には国内雇用を守ると公言しており、経済産業省に対しても同様の説明を最近行った。しかし、言っていることと現実にやっていることが違う。部品メーカーとしては不信感がある」と語った。

 この幹部の言わんとしていることは、トヨタは国内の仕事が減っても社員を抱えるだけの余裕があるが、グローバル化が遅れている規模の小さい部品メーカーは、国内での仕事が減少したら雇用の維持など死活問題につながるということだ。

 自動車産業界では、日産自動車が「マーチ」の生産を追浜工場(神奈川県横須賀市)からタイ工場に移したばかり。さらに日産は10月5日、国内最大の生産拠点である九州工場(福岡県苅田町)を、来年秋をめどに分社化すると発表、賃金上昇を抑制することで国内の生産基盤の競争力を維持する考えを示した。スズキや三菱自動車工業も国内への設備投資を抑制し、アジアへの設備投資を拡大させている。

工場の海外移転を徒におびえるな

 業界最大手で、日本経済の「顔」のひとつトヨタが、主力車種の生産の海外移管を決めたことは、自動車業界のみならず、多くの日本の産業がこうした流に追随する可能性が出る。この結果、国内雇用維持のために法人税率の引き下げ議論が本格化するだろう。

 しかし、筆者は、法人税率を引き下げたからといって、すぐに国内雇用の確保につながるという点には懐疑的だ。その理由は、一般的に経営者としての志やモラル、能力が低下し、従業員を簡単にリストラする人が増えた中で、法人税率を下げて浮いた利益を本当に国内雇用確保の原資に回すのだろうかと疑わしいからだ。

 日本の製造業はもっと積極的に海外に進出し、国籍を問わない有能な人材を使いこなし、海外で確実な利益を出し、その利益で、国内雇用や、日本の強さである熟練技能や先端技術の開発力を守る方が得策ではないか。

 そうした視点から、カローラ生産ラインの海外移転を捉えるべきであろう。

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