「ソーシャル・ジャーナリズム」のビジネスモデルはできるのか
田原総一朗、長谷川幸洋、佐々木俊尚、津田大介シンポジウム vol.2

vol.1 はこちらをご覧ください。

津田: いまメディアに対してもにも政治に対しても閉塞感が広がっています。たぶんネットで小沢一郎さんを支持していた人は、小沢一郎ならそれを打破してくれるんじゃないかと、というところがあったと思うんです。

 僕は情報通信政策とかが専門分野ですけど、やっぱり「小沢さんか、菅さんか」という選択なら、小沢さんのほうが良かったかなという気がします。今回、原口(一博)さんが総務大臣を降ろされましたよね。

 原口さんにはいろんな評価があるとは思いますけど、原口さんになったことで、いままでの総務大臣だったら間違いなく議題にも上らせなかったような問題が議論されることになりました。

 電波オークションの話だとか日本版FCC(通信・放送委員会)を作りましょうという話だとか、いろいろな第三者機関を作ってやりましょうとか、さらにはある種のマスメディア規制にもなるクロスオーナシップの話という問題も含めて、そういうものをやろうとしていた。

 その意味で、総務相が片山(善博)さんに代わって、これからどうなるのかには注目しています。

 いまはねじれ国会なので、今後、いろんな重要法案の審議が相当止まるわけです。法案を作って進めていかなければいけない改革があるのに、国会審議が止まってしまう。そのときに、ねじれ国会を3回経験して、いろんな法案を通してきたという、ある種の実行力、実現力を持った小沢さんの力に一か八かに賭けるという意味で、小沢さんが党の代表をやったほうが期待感はあったんじゃないかという気はしています。

田原: 僕は原口さんに最初は期待したんだけれど、結果としてはほとんど失望しているんです。彼は最初、「電波の開放」といったんですよ。電波の開放というのは、明らかにいろんな業者がテレビに参入できるという意味ですね。

 さらに、いまはテレビ局はほとんどが新聞社の子会社化しています。新聞社から社長が入ってくる。そこで原口さんは、新聞とテレビを分けようとした。でも結局は両方とも彼は途中で止めちゃったんです。

長谷川: その問題もそうだし、地方分権に関わる一括交付金の話もそうです。

 私もインタビューで聞いたけれど、彼は「やる」と言っていた。でもインタビューをしながら、やっぱり感じるんです。いまのクロスオーナーシップの話にせよ、地方分権の話にせよ、政策は確かにきれいに語っているんだけれど、「この人は政策にどこまで信念・確信を持ってやる人なのか。

 そうではなくて、ひょっとすると政局ゲームの比重が大きくて、そのためにどちらのほうが自分が権力を握っていられるか、そっちの判断のほうが強いのかな」ってね。

 津田さんがおっしゃたように、小沢さんは、確かに、今回の代表戦で革新的なことを話し、あたかも政策的な爆発力があるかのように感じるんだけれど、本当にそうかなと。つまり、そんなに政策に確信をもって、これまで政治活動をやってきた人かというと、そうではなくて、やっぱりこの人は政局ゲームの人なんじゃないかな、というのが私はあるんです。だからあんまり信用はしない。

評価が分かれる原口前総務大臣

佐々木: 原口さんに関しては、僕は総務省のタスクフォースの委員なんで、いろんな声が耳に入ってきました。

 原口さんは当初、政治主導ということでタスクフォースを設立しました。要するに「いままでの有識者の懇談会は、霞が関で政策立案されたものに関して、『皆さんで検討してイエスかノーか提言してください』というだけだった。

 だけど、このタスクフォースではもう、最初にミッションは下ろさない。最初から皆さんでこれからのIT戦略、政策を考えてくれ」というのが、去年10月にタスクフォースが出来たときの話だったんです。

 最初はそれで話が始まっていたので期待したんです。しかし、ふと気づいてみると、今年の春ぐらいからですね、なぜか知らないうちに「光の道」とかわけの解らないことが・・・。

田原: うん?。

佐々木: 光の道。日本全国にブロードバンドをっていう。

田原: ああ、ソフトバンクの孫(正義)さんと組んでやろうとしたやつ。

佐々木: それを敷きましょうみたいな話が突然下りてきた。これはすでに話が出来上がった、規定のミッションだったんですよ。

 あんまり言うのも何ですが、これはどう考えても孫さんから吹き込まれたに違いないっていう話があるんですよ。密かに個別にお会いになったりするのでね。

 ことほど左様に原口さんって、あちこちにいろんな人に個別に会いに行っては、何か言われると、「おー、それはいい」と思ってポッと寄ってしまう、というマインドの方なんですよ。

 それに、民主党の中では「ITに詳しい」と言われていますが、私から見るとそうれはどうかな。全然詳しくないんです。

田原: どういうことですか。

佐々木: 基本的にいまのブロードバンドとかITの置かれている状況をあんまりよく理解していない節がある。しゃべっている内容を見るとね。

 たとえば放送の問題に関しても、クロスオーナーシップを止めましょうと言っていますが、民主党政権になる以前には、「今後も放送と新聞が一体となってやっていくことを私は支持していきます」ということを口に出したりしているんです。

 だから常にその場の雰囲気で、言われたこと、言ってほしいことを口にしているだけであって、そこに統一された、きちんとした政策の考えがあるとは到底思えない。

田原: 要するに、彼は政治とバラエティー番組をごっちゃにしているわけね。ほとんど区別がついていない。

津田: 詳しいというレベルで言えば、たぶん原口さんが佐々木さんほど詳しいとは僕も思いません。でも別に総務省の政策も、原口さんだけでやっているわけではない。

 原口さんが打ち出した計画を見ている限りでは、もちろんツッコミどころはあるけれども、進めている方向は総論的には間違っていないと思います。

 その後の「じゃあ各論としてどうやってやっていうんだ」という話とか、「ソフトバンクの孫さんのいいなりでそのままやっていいのか」みたいなところは、いろいろつっこむ必要もあるでしょう。逆にそういうところを検証していくのが、まさにジャーナリズムの役割だと思います。

 それにそこの検証は、ネットジャーナリズムが一番噛めるところじゃないですか。ソーシャルメディア、インターネット、情報通信政策に詳しい人もいっぱいいるんだから、総務省がやろうとしていることを個別に検証することもできる。それぞれの意見を持っているんだから、その情報を発進する力もある。

 原口大臣、総務省は少なくとも情報をオープンにしようとしてきたと思います。だから総務省がやろうとしていた情報通信政策に関しては、ソーシャルメディアジャーナリズムが機能していくきっかけになるんじゃないのかなと期待していたんです。今回、原口さんが降りたことで、そんな動きが止まっちゃうんじゃないかという懸念がすごくあります。

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