真壁昭夫(信州大学教授)×上田眞理人(FXプライム専務)緊急対談(前編)
「ソブリンリスク、レバレッジ規制で外為投資はどうなる」

左から真壁昭夫氏(信州大学教授)、上田眞理人氏(FXプライム専務)、司会の本山華子さん(タレント)

司会:本山華子(タレント)

本山: 去年8月、すべてのFX業者に対してレバレッジを100倍から50倍にまで引き下げる規制が行われたのに続き、今年の8月にはさらに25倍まで引き下げられます。この規制にともなう影響について、真壁昭夫さん、上田眞理人さんにお話をうかがいたいと思います。

 その前にまず市場の動きについてお聞きします。今為替相場が大きく動いています。米国債の格付引き下げの話題もありますが、このあたりの動きについて、まず真壁さんはどのようにお考えですか?

真壁: 今起きているのはソブリンリスクの問題です。国の信用が揺らぐという傾向が世界的に出ていて、ヨーロッパではポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインといった国の信用状況が悪化しています。7月上旬にギリシャ議会で財政収支縮小の法案が通ったので小休止したと思ったら、それがまた再燃したという状況だと思います。

 基本的にはこれは単純な問題ではなくて、いろいろな理由がありますが、2003~2006年まで世界的に不動産バブルが起こり、その処理がまだ終わっていないという状況が大きいですね。この問題が解消するまでには、けっこう時間がかかると思います。

 それと同様に、アメリカでも財政収支が悪化しています。国債発行の上限が設定されていますが、5月でその上限に達しています。今は新規に国債が発行できないという状況です。最終的には8月2日までに議会と大統領がどこかで合意するんだと思いますが、まだ紆余曲折があるでしょう。ということは、金融市場はもう少し不安定なままで推移すると思います。

本山: 上田さんはいかがですか?

上田: 為替の面から「では今なぜ円が買われているのか」というお話をしますと、ヨーロッパは利上げのサイクルに入ってはいますが、今はソブリンリスク問題がやや深刻化しており、まだユーロ売りが優勢と思います。

 アメリカは今真壁さんがおっしゃった連邦債務の法定上限の問題もありますが、第二四半期に景気の減速感が出てきまして、バーナンキさんも追加の緩和をにおわせています。それに対する不安感からドルが売られているわけです。

 一方、日本では何も目立った要因がないんです。それで、リスク回避という意味で何もない円が買われているわけです。元々日本はゼロ金利ですし、政治家のリーダーシップもまったくない状態です。たとえば、もしもオバマさんが菅さんと同じような言動をとったら、ドルは暴落しますよ(笑)。

 ところが何も起こっていないということは、日本の政治状況はまったく無視されていて相場に影響がないということです。普段なら、リスクテイクの方向にいけば円は買われないんですが、今はリスク回避の方向へきているので、「しょうがないから円を買ってみるか」というのが実情だろうと思います。

 ヨーロッパのソブリン問題については、真壁先生がおしゃるようにまだまだ片づかないと思います。ECB(欧州中央銀行)は、語弊があるかもしませんが、市場規模の小さいギリシャやポルトガルをいつ捨ててもいいと本音では考えていると思います。ただ、この影響がスペインやイタリアにも及ぶと大変なことになるので、それを一生懸命阻止しようとしている。にもかかわらず、格付会社がそれをあおり立てている、というのが実情だと考えています。

 多分本格的な危機的局面は2012年頃までは先延ばしされると思いますので、ユーロが買われる場面は出てくると思います。アメリカも、第三四半期には経済が持ち直すと思いますので、いつまでもドルが売られ続けるとは思っていません。ただ、現状はドル安ユーロ安、したがって相対的には円高、という相場が続くだろうと思います。

外貨を考える四つのカテゴリー

真壁: そもそも世界の通貨を考える場合、大まかに四つのカテゴリーに分けるとわかりやすいと思います。まず一つは安全通貨。何かあったときに逃げ場所となる通貨で、これはスイスフランと円です。それから資源通貨。これは資源国の通貨でオーストラリアドルとカナダドル。三つめは新興国通貨。これはブラジルレアルです。そして最後に、先進国通貨。これはユーロとドルです。この四つに分けると非常にわかりやすい。

 アメリカとヨーロッパはバブルの後始末が終わっていないので、基本的には金利が上がりにくい。短期的にみると為替は金利で動きますから、金利の上がる通貨は買われるはずなのですが、ユーロに限っていえば信用力が低下しているため、危ない通貨になってしまった。それで現在金利が上がっていても買われないというのが現状です。

 今買われているのは円とスイスフランで、この傾向はもう少し続きます。ただし、アメリカと日本の金利の差は、これ以上そんなに縮まることはないでしょう。アメリカの金利はこれ以上あまり落ちないでしょうから、そんなに円高にはならないと思います。それを整理するとわかりやすいと思います。

 四つの通貨がそれぞれどんな場合に買われるかというと、何かあって危ないと思ったら安全通貨として円やスイスフランが買われます。何もない平穏な状況では、新興国の成長率が高いですからブラジルレアルが買われます。本当はここに中国の人民元が入るんでしょうが、管理通貨だから入れられません。そうすると、ブラジルレアルがターゲットになって買われます。

 それと同時に資源の価格が上がりますから、資源通貨のオーストラリアドルやカナダドルが買われます。最も上がりにくいのは先進国通貨で、ドルとユーロが上がりにくい。そういう構図だと考えています。

本山: こういう状況のなかでは、個人資産にもいろいろな金融商品がありますが、どういうバランスの組み合わせが良いのでしょうか?

上田: 個人資産のバランスを通貨で考えるのなら、私はやはり大半は円で持つべきだと思います。よく「三分法」といいますけれど、こういう混沌とした状況のなかでは、商品でいろいろ分散するのはけっこうですが、通貨ではたとえ金利がほとんどつかなくても大半を円で持つべきだと思います。

 ただ、外貨でいえば金利が高いところでないと意味がないので、真壁さんがおっしゃったなかでは資源国通貨のオーストラリアドルやカナダドルが良いと思います。新興国通貨も良いのですが、流動性に欠ける面もあります。投信などに組み込まれているのならしょうがないですが、ブラジルレアルをたくさん持つというのは、私はどうかなと思います。

 ではどうするかというと、ゼロ金利のドルと、ドルに比べて金利が高いユーロ、たしかにどちらも危ないかもしれませんが、そういう国の信用がまったく失われることはないと思いますので、組み入れるべきだろうと思います。そうすると、オーストラリアドル、ユーロ、ドルをうまく組み合わせるということで、ポイントは流動性だと思います。

 円の国際的地位がものすごく低下しているにもかかわらず買われるのは、やはり流動性が高いからですよ。「円を買う」という意識もなく円を買っている、つまり、アジアの一通貨としていちばん流動性の高い円を買っている、という人もいると思います。

 こういう状況でも、行動様式としてリスクオンのときはオーストラリアドルやユーロが買われて、リスクオフのときは円やドルが買われます。今はドルが危うくなっていますからスイスフランが買われています。その行動様式が変わらなければ、しばらくこういう形で動くと思います。

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