「幹部人事凍結」を破って誕生する金融庁新長官の役割は「沈没するニッポンの資本市場」救済だ
課題は被災地救済だけではない

 新聞各紙は7月26日、金融庁の三國谷勝範長官が退任し、畑中龍太郎監督局長が昇格すると一斉に報じた。

 監督局長から長官に就任するのが慣例となっており、畑中氏の昇格自体は規定路線だ。ただ、東日本大震災の発生で、霞が関の局長級以上の幹部人事を当面凍結するという閣僚懇談会の申し合わせが5月に行われており、退任確実と思われていた三國谷氏の扱いが注目されていた。

 5月に枝野幸男官房長官が行った"人事凍結"指示に金融庁内は凍りついた。長官就任から満2年を迎える三國谷氏は、本人自身も周囲も退任することを疑っていなかっただけに、「三國谷3年目」の可能性が出たことに衝撃が走ったのだ。

 というのも、長官就任以来、三國谷氏は「慎重でリスクを取らない」という評価が定着。「政治家にも弱腰」という見方が役所内にも広がっていた。青森県出身で口数が少ないこともあるが、自らの信念を腹蔵なく語るタイプではないことから現場の官僚たちの人心を十分に掌握し切れているとは言い難かったのだ。

指導力を発揮しなかった「IFRS問題」

 その三國谷氏の「慎重さ」が如実に現れたのが5月末に起きた国際会計基準IFRSを巡る騒動だった。IFRSの日本企業への導入に反対する一部の経営者が長官宛に要望書を提出。その後、自見庄三郎・金融担当相を動かして、既定の路線をひっくり返した事件だ。
(参考記事:http://gendai.ismedia.jp/articles/-/9505
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/11138)

 国際化路線を進めてきた金融庁の現場からすれば、こここそ三國谷氏の出番と期待したのだが、金融行政のプロである長官が素人の大臣を諌めることはなかった。菅直人首相が退陣を伺わせる発言をした時期と重なったこともあり、「いずれ大臣は変わるのだから静かにしておこう」という消極的な姿勢を取ったのだった。

 もちろん、三國谷氏の長官としての実績がないわけではない。金融ビジネスのグローバル化に伴って重要性を増している金融監督の国際化に対応するため、国際担当の人員を大幅に強化したのだ。

 銀行監督のルールづくりなどを担うバーゼル委員会(事務局・スイスのバーゼル)など、国際交渉において日本の存在感が大きくなったのも、金融庁が対応に本腰を入れてきたことが大きい。英語のできる課長補佐がもっぱら国際交渉を担当していた大蔵省時代から比べれば雲泥の差だ。

 さらに、三國谷氏自身、課長時代から会計基準の国際化を担当してきた。IFRSについては庁内で最も詳しいだけに、大臣の暴走に対して、三國谷待望論が大きかったのだが、まったく指導力を発揮せずに終わった。

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