雑誌
もう中国には勝てないのか
世界第3位へ転落する日本、「坂の上の雲」めがけて疾走する中国13億の民

ついに追い抜かれたデフレ日本
━━━ 合い言葉は「超日」。
「中国ASEAN縦断鉄道」で日本に代わり、アジアの盟主になる。この驚くべき中国の成長力、経済力を見よ!
増え続ける高層ビル、成長著しい産業、そして中国の権力者にとりつこうと群がる政治家たち。中国は世界の盟主になろうと本気で考えているのか───

「2010年は中国経済にとってどんな年かと聞かれると、表向きは『8%成長を持続する年』と答えています。しかし政府内部では、『日本経済を追い抜く年』というのが共通認識です。鄧小平同志が日本をお手本に改革開放政策を唱えてから32年、ついに日本経済を追い越す時が来たのです」

 感慨深げに語るのは、中国の高位の経済官僚だ。

 中国は今年、GDP(国内総生産)で日本を追い抜き、アメリカに次ぐ世界第2の経済大国にのし上がることが確実視されている。輸出額でもドイツを抜いて世界1位(約112兆円)、時価総額を基準とした世界の銀行ランキングにおいても、上位3位を中国の銀行が占めており、中国はこの世の春を謳歌しているかのようだ。

 中国ではいま、「超日」という言葉が流行語になっている。文字通り、「日本を超える」という意味である。

 GDPでも、外貨準備高でも日本を超えた中国で、現在進むのは製造業における「超日」である。胡錦濤政権は現在、広州や深センを中心とした南部の「珠三角」地域、上海を中心とした中部の「長三角」地域に続く第3の「中国経済の牽引役」として、北京郊外の「天津浜海新区」開発に、国を挙げて取り組んでいる。本誌記者は昨年末にこの巨大な経済開発区を訪れたが、渤海に面していて日本から目と鼻の先というのに、トヨタを除けば、日本企業の存在感は薄かった。「天津浜海新区」を統括するTEDA(天津経済技術開発区)の幹部が解説する。

「ここに進出している日系企業238社のうち、中国での年間売上高でベスト50社に入るのは、トヨタ(1位)、富士通(43位)、矢崎総業(45位)の3社だけです。代わって最近伸びてきているのが中国企業で、中国石油天然気(6位)以下、実に50社中23社を中国企業が占めています」

 厳冬の夜が明ける朝8時過ぎのトヨタ工場前。160台の専用大型バスが立て続けに停まり、5000人の工場労働者が一斉に出勤する風景は、確かに壮観だ。だが「米ビッグ3」の凋落を見ても分かるように、この「トヨタの栄光」が、明日も続くとは限らない。

 実際、年間1300万台以上が販売される中国の自動車市場において、トヨタのシェアはわずか7.8%でしかない。中国最大の国産メーカー「奇瑞」(シェア5.6%)が「超日」に快哉を叫ぶ日も、刻一刻と近づいているのである。

 中国政府は、一昨年秋の金融危機以降、4兆元(1元=約13.4円)もの緊急財政支出を行い、「輸出主導型経済から内需主導型経済へ」という経済システムの大転換を図った。結果、中国国内で中国企業が雨後のたけのこのように伸張し、各業界で日系企業を駆逐し始めているのである。

 昨年11月23日、中国に進出している日系企業の団体である中国日本商会と、北京市政府との年に一度の懇談会が、北京のホテルニューオータニで開かれた。日本側は主要日系企業84社の代表及び日本政府代表8人が勢揃いしたが、中国側は「副局長」「副主任」などという肩書の「ナンバー2」たちがパラパラと出席しただけだった。発足した7年前から毎年出席している日系企業の代表が、タメ息交じりに語る。

「中国側はこれまで、『どんな無理でも聞きますから北京に投資して下さい』と平身低頭でした。『投資してほしかったら(多くの日系企業が事務所を構える)ホテルニューオータニの前の目抜き通りを(日系企業のハイヤーが通りやすいよう)UターンOKにしろ』と誰かが冗談交じりに言ったら、翌日に『Uターン可』の交通標識が立ったほどです。しかしいまや中国側は、『他国の企業も中国企業もあるし、日系企業が投資したければどうぞ』という態度で、非常に冷めた目で日本を見るようになってきているのです」

新幹線もジャンボも自前で

 産業のみならず、技術における「超日」も著しい。昨年12月10日、小沢一郎幹事長率いる民主党国会議員143人が、北京を訪問。この日本憲政史上前代未聞の「与党大訪中団」は、暮れの日本外交の大きな話題となった。だが、140人以上の与党国会議員が個別に胡錦濤主席と握手を交わしたというのに、「中国のNHK」にあたる中国中央テレビ(CCTV)は、このことを一切報じなかった。代わりにこの日、別の「日本関連ニュース」を、アナウンサーが興奮気味に伝えた。

<ついにわが国の鉄道にも「超日」の波がやってきました。武広鉄路(武漢―広州間の高速鉄道)“和諧号”の試運転で、日本の新幹線を抜く時速396kmを記録したのです。これは、北京から8時間以内に、中国すべての主要都市に鉄道で行ける夢の時代の到来を告げるのろしです!>

中国の成長を象徴する高速鉄道。北京市内では毎日渋滞が起きている

 日本の誇る“新幹線神話”が、開通46年目にして崩壊したとでも言いたげな報道ぶりである。この成功に自信を深めた中国鉄道省は、中国の鉄道産業を海外にも輸出していくことを決定した。

 成長に貪欲な中国が、鉄道の開発だけで満足するはずがない。中国が次に狙うのは、「空の制覇」である。金融危機の影響で世界の航空機需要が低迷するなか、中国の航空機需要だけは留まるところを知らず、昨年中国の航空会社が購入した航空機は250機を超えるという。自動車においては、'09年の新車販売台数が1350万台を超え、中国が「世界一の自動車市場」となったことが話題になっているが、2028年には航空機市場においても中国がアメリカにならぶ世界最大規模の市場になると、ボーイング社をはじめとした航空会社は予想している。さらに中国が野心を燃やしているのが、大型国産旅客機の製造である。

「中国が航空機の輸入国に留まっているのも、あと10年というところでしょう。我々は2020年までに、ボーイング社やエアバス社と競えるような大型旅客機を製造する計画を立てています」(中国の航空機メーカー職員)

 この計画は中国国内において着々と進行しており、昨年12月初頭、中国の航空機メーカー「中航工業西安飛機工業集団有限責任公司」が、オーストリアの航空機部品メーカーのFACC社を買収した。

「FACC社はエアバス社やボーイング社に航空機部品を供給していますので、同社の技術と開発力を得ることで、中国の航空機製造技術は確実に向上することになります」

 中国航空工業集団公司の幹部は誇らしげに語る。中国の製造した航空機が、世界の空を飛び回るのは、決して遠い日のことではないのだ。

 この「航空機の国産化」に象徴されるように、中国はいま、単純な輸入国、あるいは製造国からの脱却を図っている。昨年12月20日、胡錦濤主席は、マカオ返還10周年記念式典に出席するため、マカオを訪れた。胡主席はその帰路に立ち寄った広東省・珠海で、翌12月21日、次のような大号令を発した。

「中国企業は今後、『中国製造』(メイド・イン・チャイナ)から脱皮し、『中国創造』(クリエイテッド・イン・チャイナ)を目指せ!」

 かつて天安門事件の影響で経済が落ち込んだ'92年に、最高実力者の鄧小平が南方を視察し、「改革開放を加速せよ!」と活を入れ、その後の中国の高度経済成長路線を決定づけた。今回の胡主席も、鄧小平の「南巡講話」の再現を狙ったものと思われる。

 この胡主席の唱えた「中国創造」を地で行く代表的な中国企業が、「中国のシリコンバレー」といわれる中関村地区に存在する。「中国のソニー」こと「華旗資訊」だ。北京オリンピックの公式スポンサーにも選ばれた「華旗資訊」創業者の馮軍(フェンジュン)CEO(40歳)に話を聞いた。

「胡錦濤主席が珠海で唱えた『中国創造』宣言には、深い感銘を覚えました。まさに中国人が創造力を発揮し、世界に進出していく時代が到来したのです。

 わが社の代表的商品であるデジカメの例を示せば、絶対に手振れせず、3方向の風景を一枚に収めるデジカメを開発したおかげで、単月で首位のキヤノンを追い抜くまでに成長しました。デジカメのメモリー自体は日本の特許ですが、直接パソコンにつなげるメモリーの特許はわが社のものです。私はソニーの小さな販売代理店から身を興しましたが、創業から16年を経て、ようやく日本のトップメーカーを見据えるところまで来ました」

 自動車にしてもデジカメにしても、中国企業が技術で日本企業に追いつけば、価格競争で日本製品が中国市場から淘汰されていくのは自明の理である。中国中央テレビの記者が自信に満ちた表情で言う。

「『超日』ブームは、裏を返せば、中国が急速に日本を必要としなくなってきているという証なのです。ほんの数年前の小泉政権の時代まで、中国では歴史問題で『ジャパン・バッシング』(日本叩き)が花盛りでしたが、いまや『ジャパン・パッシング』(日本通過)の時代を迎えたのです」

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