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大研究 東大までの人東大からの人 2010年度版
週刊現代 プロフィール

「母親はピアニストで、父親は理系出身の弁理士。僕は父親の理系脳を引き継いでいるんでしょうね。幼稚園から公文式をやっていたのですが、卒園するころには、中学レベルの数学はすべて終わり、小学3年頃には、高校レベルの三角関数はできるようになっていた。パズルを解くような感覚で、難しい問題に挑戦するのが楽しかったんです」

東大総長賞を受賞した笠原晃恭氏

 中学・高校は筑波大学附属駒場。その中学時代、NHKスペシャルの「驚異の小宇宙 人体Ⅲ」のCG映像を見て衝撃を受けた。サイエンス系CGに対する熱は高まる一方で、自分でも作りはじめたが、大きな不満にぶつかった。

「サイエンス系のCGを作っているところを探したのですが、日本にはなかった。それで『自分が第一人者になるしかない』と決意したんです」

 東大を選んだのも、この決意と関係している。

「日本では新しいことをやろうとすると変人扱いされるけど、もともと変人の多い東大なら大丈夫だろうと。成績はそんなによくなかったですよ。理Ⅲの前期合格者80人中、たぶん50番以下の成績です」

 驚くのは入学後だ。頭にあったのは、CGの勉強をやりたいという一事のみ。CGなどのプロフェッショナル育成に定評のある養成機関「デジタルハリウッド」に通うと決めて、瀬尾氏はこんな行動をとった。

「デジハリに通う時間をつくるために、教養課程の必修科目以外の単位は、入学半年ですべて取得しました。1年の10月以降、授業はガラガラです。それでデジハリに通い、半年は技術の習得、半年は作品作りに取り組みました。デジハリでもサイエンス映像を作る人はいなかったので、珍しがられましたけど」

 将来の目標もまた、今までなかった世界を開くことに置かれている。

「医者の免許をとり、その知識をバックグラウンドに、CGを使った治療に貢献できればと思っています。画像をフル活用した治療法の研究です。ガンを発見し、リアルタイムに画像を見ながら放射線を浴びせるとか、そういう新しい治療法に貢献できればと思います」

 例えば肺ガン。放射線を当てようにも、肺の呼吸に合わせてガンも上下に動くため、患部へ照射できないのが現状だという。けれども、映像を見ながらガンの位置をリアルタイムにつかみ、それに合わせて放射線を動かすことができれば、ガンへの正確な照射が可能になるはずだと、瀬尾氏は目を輝かせる。

おかしなほど優秀

 瀬尾氏は幼稚園時代から公文式で天才ぶりを発揮していたが、経済学研究科金融システム専攻・修士1年生の笠原晃恭氏(23歳)も、小学1年生から「ゲーム感覚」で公文式をやっていたという。

「公文式はシンプルな問題をひたすら解いていくので味気ないという人もいます。でも、どれくらいのスピードでどれくらいの量をこなせるかとか、この問題とこの問題を組み合わせたらもっと難しい問題が作れると考えながらやると、ゲームみたいで面白いんです」