俺たちのガンプラ30年史 [後編]

「夢は歩かせること」ニュータイプ設計者の飽くなき「リアル化」の追求
'80年発売のガンプラ第1号(左)と今年7月に発売された最新型「RX-78-2ガンダム」。最新型は右下の内部骨格に外装パーツを付ければ完成。同じ1/144スケールの2体から、30年間の技術の進歩が浮かび上がる

前編 はこちらをご覧ください。

  ガンダムのプラモデルに賭けた男たち──ロングラン・ヒットの裏の「進化」と「苦悩」

[取材・文:豊田正義(ノンフィクションライター) 写真:濱崎慎治]

 アニメ『機動戦士ガンダム』で、パイロットとしてガンダムに乗り込むのは、地球連邦軍に所属するアムロ・レイという少年である。ジオン公国軍と戦う彼は、繰り返し戦地へと赴く。そんなアムロがガンダムのコックピット(操縦席)に出入りする際、機体のどこか決まった箇所を繰り返し触ることになるだろう。となれば、その部分はガンダムの塗装が剝げるはずではないだろうか・・・。

 '94年の夏、バンダイ(東京都台東区)本社の会議室で、こんな「架空の設定」を語り合う男たちの表情に、冗談めかした様子は欠片もなかった。

 '80(昭和55)年にバンダイ模型(現・バンダイ)のエース設計者・村松正敏(63)が「1/144」というスケール(縮尺)でガンダムという空想の産物に"命"を与え、ガンダムのプラモデル、通称ガンプラは生まれた。

 4年で販売個数1億個を突破する大ブームを巻き起こしたガンプラだが、'85(昭和60)年、任天堂が『スーパーマリオブラザーズ』を発売したのを機に、燎原の火のごとく広がったファミコンブームにより、プラモ作りそのものが、子供たちの遊びのシーンから姿を消した。

 冒頭は、ブームが去ってから数年後、バンダイが再度ガンプラに息を吹き返させるべく挑んだ商品開発プロジェクトで飛び出した議論である。

 あくまで討議すべき議題は、新たなガンプラのデザインである。だが、新製品のイメージを膨らませるべく、皆が口にしたガンダムにまつわる"想像"は、アムロの搭乗の仕方だけに止まらず、細かなディテールにまで及んだ。

「ガンダムのシールド(盾)にある丸い二つの孔は(弾の)貫通孔なのか、それとも塞がっているのか」

「あの孔から相手をうかがうシーンがあったと思う。貫通孔じゃないか」

「だったら、ガンダムがライフルの銃口を孔から出して撃つっていうシチュエーションもアリだな・・・」