古賀茂明(経産省キャリア)×長谷川幸洋(ジャーナリスト)「民主党から旗をかかげる人よ、出てこい」
退職勧奨を受けた改革派官僚を直撃VOL.3

vol.2 はこちらをご覧ください。

長谷川: 福島第一原発の状況ですが、小出裕章京都大学原子炉実験所助教は、「もはやメルトダウン、メルトスルーの段階ではなく、チャイナシンドロームの段階だ」と指摘しています。地中の中に溶けた核燃料がめり込んでいるとすると、もう冷やすことはできないとのことなんです。つまり、冷却水を循環させて冷温停止に持ちこむという基本戦略自体が間違っているのかもしれない。

古賀: 私の技術の専門家ではないので、長谷川さんが今おっしゃった以上のことはハッキリ言えません。ただ、メルトダウンしているという話が最初に出たときに、保安院の中村審議官がそれを正直に認めたため、更迭された。その後のいきさつを見ていると、小出先生のような方がもともと指摘していたことは後から考えると合っている。しかも、今になって原子力安全委員会の先生たちも「実は私もそう思っていた」と言ったりしている(苦笑)。

 もちろん、小出先生の説が間違っている可能性もありうる。今回の事態においては常にそうなのですが、「絶対に当たっている」という証拠は誰にもないのです。そして、「確証はない」→「だから、危険だとは言えない」という流れで、どんどん議論がすりかえられていった経緯がありました。

 チャイナシンドロームに関しても、おそらく保安院は、「論理的にはその可能性あるけど、そうではない可能性だってあります。ということは、そうではないと考えていいです」と、なってくるでしょう。

 また、チャイナシンドロームを認めてしまうと、とにかく急いで地下ダムを作らなくてはならないという話になる。東電も地下ダムの準備をしていることは認めましたが、一刻も早く作るとなると、1000億単位あるいはそれ以上の巨額の費用がかかります。4月~6月期の決算時にその費用を計上することになれば、その分損失や負担が発生し、4月~6月に債務超過になってしまうのではないかということになる。

 実は、ほとんど知られていませんが、賠償機構法案には最後の切り札があって、「タダで東電にお金をあげます」という意の条案が入っているんです。条案の中の交付国債に関する部分に、但し書きで「ものすごく大変な時にはただでお金あげます」という条文が入っている。

 だから、法案が成立すれば、何が起きても最後は国がただでお金をくれる。しかし、現状、賠償機構法案はまだ成立するか分からないので、確実に成立するまでは負担を増やしたくないわけです。

長谷川: それは、記者に発表した要項には入っていないのですか。

古賀: いえ、それが入っているんです。要するに、「資金を交付する」と書いてあるんですよ。交付という言葉が入っているので、交付国債なのかと皆思ってしまうみたいなんですが、別の話なんです。

長谷川: 保安院は地下ダムの建設をそんなに急ぐ必要はないというニュアンスを言うのだけど、細野大臣は早くやらないといけないというニュアンスを言っている。どうも現状認識と対応方針がグラグラしているような印象がありますね。

 でも、この問題はいずれ隠すわけにはいかないと思っています。私は『朝まで生テレビ』で「未確認情報ですがプルトニウムが(海水から)出ている」という話をしたんです。一部の方からは「確認もしてないのに、なぜそんなことが言えるのか」という批判も受けたのですが、これは政権側から出た情報なんです。野党の側から出た話ではないんです。

 そこが私は大事だと思っていて、すなわち官房長官や総理も「海水からプルトニウムが出た」という話を認識している可能性がとても高い。それくらい、事態は深刻度を高めているということです。

 そこまで事態が悪化しているのだとすると、東電を存続したまま収束が可能なのか疑問ですし、東電は存続意義可能性があるのかも謎です。

古賀: あくまでの架空の世界で、「上手く行ったらこうできるかも」という希望的観測をいまだにやっている気がします。東電がゾンビ企業になってしまうということに対する反論として、「5年後には配当の再開を考えているし、そのような資料も出回っている」と言う人もいます。かなり能天気ですよね。

公務員改革のキモとは

長谷川: 東電の賠償案をどうするかについては、再生可能エネルギーを今後どのように推進していくかと表裏一体です。

 自然エネルギーを広げようと思ったら、地域独占をやめ、発電部門と送電部門を分離する必要があります。そうなると、東電は解体しなくてはならないとなるわけです。

 東電の賠償問題はもちろん、公務員制度改革問題、増税問題の3つが次の政治を考える上での大きな軸になると思うのですが。そのあたりの見通しはどうですか?

古賀: 国民から見ると自民党も民主党もいろいろな考えを持っている人がいて、似たように見えるんです。主流派はどちらもあまり改革をやりたくないという感じなので、万一大連立した場合、"改革しない大連立"が出来上がってしまうわけです。

 でも、国民は、本当に国民のためになる改革をやってくれる人たちの連立を望んでいます。そのための一つの踏み絵として、増税だけで財政再建していくのか、というのが一つ。公務員改革については、いくつかやるべきことがあると思いますが、一番キモになるのが、幹部の身分保障です。

 私をクビにできるということは、幹部の身分保障はなくせるという証明なので、働きが悪かったり、政権の政策のテーマが変われば自由にクビにできるということがテーマになりえる。

 東電の賠償については、将来像として発送電分離、発電の分割、家庭までの小売の自由化の3つを掲げられるかが焦点ですね。東電の再生の問題としては、100%減資して株を紙切れにできるか、、銀行に債権カットをきとんとやらせられるかがテーマです。選択肢をはっきり、選びやすいような形に提示する。それがこれからの議論の中で行われる可能性がある。

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