雑誌
税金で「国民洗脳マニュアル」を作っていた
呆れてものが言えない「原発推進」行政

 史上最大規模の事故が起きたというのに、お構いなしに原発推進を叫ぶ人々がいる。原発がなければ経済が成り立たない。電気が足りなくなる・・・。ちょっと待って欲しい。それ本当に自分自身の考えですか? 誰かに「洗脳」されてませんか?

事故は原発推進のチャンス

〈停電は困るが、原子力はいやだ、という虫のいいことをいっているのが大衆である〉

〈不美人でも長所をほめ続ければ、美人になる。原子力はもともと美人なのだから、その美しさ、よさを嫌味なく引き立てる努力がいる〉

〈繰り返し繰り返し広報が必要である。新聞記事も、読者は三日すれば忘れる。繰り返し書くことによって、刷り込み効果が出る〉

〈原子力がなければどんなことになるか、例をあげて説明するのがよい〉

 文面から溢れる傲慢、不遜、〝上から目線〟に、開いた口が塞がらない。同時に、3月11日以降、我々がずっと違和感を持ってきた、「原発擁護論」の不可解さに通じるものがあることに気付く。

 実はこれは、「日本原子力文化振興財団」がかつてまとめた、原発推進のための〝国民洗脳マニュアル〟の一部である。

 同財団は、文部科学省、経済産業省という、国の原子力推進のツートップ官庁から業務委託を受け、「原子力への国民の理解増進に寄与するため、様々な広報活動を展開」(同財団事業報告書)する組織だ。

 役員名簿には、電気事業連合会の幹部の他、東京電力の清水正孝前社長、関西電力の八木誠社長、佃和夫・三菱重工会長、西田厚聰・東芝会長など、電力・メーカー幹部の名前がずらり。東京大、大阪大などの名誉教授クラスも、理事に名を連ねている。

 その運営の元手となる事業活動収入は、こうした会員企業・団体からの賛助金のほか、文科省、経産省からの受託事業による。'09年度の決算ベースで、そうした受託事業収入の総額は約3億2300万円に達し、同財団の年間収入の34.1%を占めている。

 つまり、この財団は〝原子力村〟からの上納金と、「税金」によって運営されているわけだ。そのカネを使って何をしていたのか。冒頭で紹介した「洗脳マニュアル」のようなものを作成し、原子力の〝安全神話〟を撒き散らしていたのである。

 問題の文書は、'91年に旧科学技術庁の委託を受け、同財団がまとめた『原子力PA方策の考え方』。PAとはパブリック・アクセプタンスの略で、「社会的受容性」などと訳される。簡単に言えば、「原子力への理解を一般大衆に広めよう」という目的で作成された文書、ということだ。

 検討委員会に参加していたのは、当時の財団幹部、科学技術庁の原子力推進担当者に加え、読売新聞の論説委員、電気事業連合会の広報部長、メーカーの宣伝担当、シンクタンク研究員ら。議論は20年前のものだが、原子力村の国民を愚弄した思考法、手口がよく分かる資料だ。

 そして、今回の福島第一原発の事故以降も、大手メディアで、あたかも事故などなかったかのような「原発擁護論」が垂れ流されてきたのは何故なのか。それがよく分かるので、ぜひ確認してほしい。

 まず、このマニュアルによれば、
〈広報効果の期待できるタイミングを逃さず、時機に応じたタイムリーな広報を行う〉

 べきだという。では、どんな時が〝タイムリー〟なのかと言えば、それはなんと、原発で「事故が発生したとき」なのだそうだ。

〈何事もない時の広報は難しい。事故時を広報の好機ととらえ、利用すべきだ〉
〈事故時はみんなの関心が高まっている。大金を投じてもこのような関心を高めることは不可能だ。事故時は聞いてもらえる、見てもらえる、願ってもないチャンスだ〉

 笑止なことに彼らは〝原発は人気がない〟ことをよく知っている。原子力は〈積極的に近づきたい、知りたいという気持ちになる対象ではない〉と認めている。だからこそ、事故が起きて耳目を集めやすい時が、むしろチャンスだという。

〈事故時の広報は、当該事故についてだけでなく、その周辺に関する情報も流す。この時とばかり、必要性や安全性の情報を流す〉

 世界史に残る大規模事故と放射能汚染を起こしたというのに、この4ヵ月、「でも原発は必要だ」という声が、不自然なほど強く唱え続けられてきた。実はそれこそ、マニュアルに則った「洗脳」の手口だったのだ。

 最近は「電力不足」「節電」に関する議論が巷では喧(かまびす)しいが、実はこれも〝広報活動〟の一環である。

〈夏でも冬でも電力消費量のピーク時は(原子力が)話題になる。必要性広報の絶好機である〉

 原発がなければ、再稼働しなければ電力が足りない。耳にタコができるほど聞いたこのフレーズは、まさに〈繰り返し繰り返し〉の刷り込み工作に他ならない。

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