激震!尖閣問題 中国を増長させた「A級戦犯」
「何とかならんのか」と言いたいのは
国民のほうだ! 外務省はそっぽを向き、
あぁ、内閣は責任回避バトル
問題の尖閣諸島は、魚釣島(奥)、北小島、南小島(手前)のほか、久場島、大正島の5島と3つの岩礁からなる

 中国がその島々の領有権を口にし始めたのは、’70年代。地下資源があると分かったからだ。今や中国の国力は、遙かに増強した。尖閣事件は、まるで中国にパイプのない民主党の外交センスを丸裸にしてしまった!

 仙谷由人(せんごくよしと)官房長官(64)は、時差を気にすることなくニューヨークからかかってくる国際電話にウンザリしていた。

中国政府が派遣したチャーター機で帰国した船長は、「日本側に謝罪と賠償を求める」とヒートアップする

「例の中国人の船長、どうするんだ」

「何とか早く処理できないのか」

 どうやら相手は、荒井聰前国家戦略担当相(64)や寺田学首相補佐官(34)ら、数少ない側近にもひっきりなしに電話をかけているようだ。

「何とかならんのか」と言うだけで具体案を出さない相手に、仙谷氏も冷静に振る舞うのが難しくなった。

「だったら、あんたが、温家宝(中国首相)と会談でもしたらどうなんだ!」

 電話の相手は、オバマ大統領との首脳会談などのために9月22~25日の日程で訪米していた菅直人首相(63)である。

 尖閣諸島(中国名・釣魚島)の海域で、海上保安庁の巡視船に体当たりを喰らわせて逃げ回った中国籍の漁船の船長・詹其雄(ヂャンチーシオン)容疑者(41=9月8日に公務執行妨害容疑で逮捕)は9月24日、おとがめなしで釈放された。帰国して早々、メディアにVサインで応えた男に、そもそも国家を背負う意識などあったのか甚だ疑問だ。

 違法操業を摘発されそうになって苦し紛れに発現したナショナリズムのおかげで、準大手ゼネコン「フジタ」の社員4人が“人質”として中国に拘束された。

民主党首脳会議に出席した仙谷官房長官。最近では「何が起きても俺のせいになる」と意気消沈

 船長が唐突に自由の身となるその日の朝、柳田稔法相(55)は首相官邸に2度、呼ばれている。菅首相は不在だから、官邸の主は仙谷氏である。2回目の会談は長く、約1時間にもわたった。

 その後、船長を釈放した那覇地検は「政治判断はなかった」と会見するが、一検察が日中関係を考慮して捜査に反映させることなど、ほとんど考えられない。ある民主党幹部が語る。

「この席で仙谷が『(法相の)指揮権発動も視野に入れんといかんのかな』とつぶやいたと言われます。

 船長の処分保留で釈放という判断は検察独自のものとされますが、柳田が大林宏検事総長に仙谷の“ご意向”を伝え、それまで『証拠も十分で事案も悪質。起訴すべし』でまとまっていた検察が、百八十度態度を変えた。

 法務案件の知識も経験も浅い柳田は伝書鳩の役割しか果たしておらず、柳田の『指揮権発動はなかった』という釈明も、あながちウソとは言えません」

 だが、ある官房副長官は、“仙谷主導説”を否定し、本誌にこう嘆いた。

「政治判断を反映させるなら、あんなタイミングで釈放しませんよ。現に、中国はフジタの社員を解放していない。少なくとも官邸は『船長釈放で中国は収まる』なんて情報は摑んでいないんです」

 政府は、中国を交渉の席に着かせるどころか、本音を探る能力もなく、閣内の司令塔が誰か不明のまま中国のペースに呑まれただけだった。事実、船長の逮捕後、仙谷氏が周囲の議員やメディアに「早急にハイレベルの話し合いが持たれなくては」と語りかけながらも、「民主党に中国とのパイプがないんだ」と声を荒らげる様子が目撃されている。

チャイナスクールの冷淡

 驚くべきことに、当事者でニューヨークにいた前原誠司外相(48)にさえ、釈放は事前に知らされていなかったようだ。外務委員会所属の民主党議員が明かす。

参院外交防衛委員会にて前 原外相と北澤防衛相。「日本 海に領土問題は存在しな い」と答弁した(9月28日)

「随行の秘書と話したのですが、『大臣も直前まで知らされていなかった。(米国時間の)深夜に、外務省出身の官邸スタッフから電話で知らされたんです』と言うではありませんか。

 その後、前原さんと話しましたが、憮然と『その通りだよ』と認めました」

 釈放の判断は、かくして結果的に仙谷氏の意に沿ったが、外交的敗北であった。釈放したのではなく、釈放させられた原因は、中国とのパイプの脆弱さにあるからだ。そして、対中外交を弱体化させたのは、他ならぬ菅政権、さらに言えば岡田克也前外相(57)であった。

7月26日、丹羽宇一郎氏 (右)の中国大使任命を祝う パーティで。岡田前外相も登壇した(ニューオータニ)

 丹羽宇一郎中国大使(元伊藤忠会長)が9月26日、中国の外務省に面会を申し入れ、すぐさま断られた事実は、その証左である。

「丹羽さんが中国大使に決まったのは今年の6月でしたが、赴任まで古巣の伊藤忠には出勤しても、外務省で積極的にレクチャーを受けようともしなかった。

 そもそも丹羽さんは中国語が不自由で、今回も公使が実質的に交渉している始末。面子を重んじる中国人が、丹羽さんをパートナーと認めるはずがない。

 チャイナスクールの外務省キャリアにすれば、自分たちではなく丹羽さんを大使に任命した民主党に協力せず、高みの見物というところでしょう」(外務省担当記者)

 中国の政府高官によれば、衝突事件が起きた9月7日の晩、胡錦濤(フーチンタオ)国家主席によって、日本政府に船長・船員の無条件釈放と船の返還を求める大方針が立てられた。9人いる党中央政治局常務委員に「譲渡不可、迅速解決」と書かれた書面が配付されたという。

「日本に強烈なプレッシャーをかけ、早期解決を図る狙いが見えます。'04 年、反日活動家の中国人が釣魚島に上陸した際、当時の小泉純一郎政権が、入管法違反容疑で逮捕したグループを超法規的措置で強制送還した経緯があります。中国政府にはその記憶があって、日本が早期に釈放すると踏んでいたのです」(中国問題に詳しいジャーナリストの富坂聰氏)

(左)28日の記者会見で、日本側に「誠実で実務的な行動」を促した姜瑜副報道局長
(右)9月21日、国連に出席した温家宝首相は、日本に船長の即時解放を求めた

 戴秉国(ダイビングオ)国務委員(副首相級)が中国外交部に呼びつけた丹羽大使や、記者会見での仙谷氏は、判で押したように「粛々と国内法に基づいて手続きを進める」と口にし続けたが、これも中国政府の癇に障った。

「粛々と」というグレーなニュアンスは、中国側に伝わらないに等しい。

「中国側も謝罪要求などトーンを強める以外に、日本に対して切るカードはありませんでした。そして温家宝首相が国連で『主権、国家の統一、領土に関しては譲歩、妥協はしない』と発言するというピークに至ったのです」(前出・富坂氏)

9月28日、赤坂の日本料理店で馬淵国交相と会合を終えた菅首相は、“秘策あり”とばかりに晴れやかな顔

 9月28日夜、東京・赤坂の日本料理店「七福神 環」で、菅首相と馬淵澄夫国土交通相(50)は極めて長い時間、会食をした。

 お題は、海保(国交省の外局)が撮影した漁船から巡視船にぶつかってきたことを示すビデオを公開するか否か、である。

 動かぬ証拠があれば、国際世論を味方にできるという目算を立てたのだ。

一方、菅首相から遅れること5分。店を出た馬淵国交相は険しい表情のまま車に乗りこんだ

「店を出る際、菅首相は、決定打を入手したとばかり笑みがこぼれていましたが、馬淵大臣は苦い顔でした。ビデオを公開すれば、中国側は『捏造の疑いがある』と難癖をつけ、事態がよりこじれることが明白です」(全国紙政治部記者)

 今後、尖閣問題で日本は譲歩していくしかなくなり、中国の既得権が重ねられていくことになろう。菅首相はじめここに書いた面々が、戦犯たちと言える。コップの中だけで嵐を起こしてきた民主党が、初めて外海の広さを知ったこのたびの事件。

 だが、知った時にはすでに、日本の歴史に大きな汚点が刻まれていた。

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