雑誌
内田 樹 「腐ったマスメディアの方程式」
君たちは自滅していくだろう

 テレビは見ない。新聞も本も読まない。マスメディアは世の中の急激な変化に戸惑うばかり。なぜ見なくなったのか。なぜ読まなくなったのか。内田教授はその理由を「作り手の劣化」と断じる。

先がない業界

内田樹氏の著書『街場のメディア論』(光文社新書)

 日本のメディア業界は、新聞も、図書出版も、テレビも、きわめて厳しい後退局面にあります。ビジネスモデルが、一変してしまいました。とにかくもう業界的には「先がない」状態だと思います。お気の毒ですけど。

 その最大の原因は、ネットの台頭よりもむしろ、従来型マスメディア自身の力が落ちたこと、ジャーナリストたちが知的に劣化したことで、そのためにメディアそのものが瓦解しようとしているのだと思います。

 先日の民主党代表選の報道でも、とても気になったことがありました。

 菅直人総理はじめ、政治家のぶら下がり取材をしている記者たちが、とにかく若い人ばかりなんです。

 20代から、せいぜい30代前半まで。ちょっと前までバラエティ番組で司会をやっていたようなアナウンサー出身の記者までいる。

 政治というのは経験の函数ですから、それだけ若い記者が政治イシューについて深い洞察を含んだ質問をすることなど、できっこないですよね。

 なぜこういうことになるのかというと、現場の記者に求められている取材能力レベルが格段に下がっているからに違いありません。

 新聞は、「こうやって書け」と定型の文体をまず徹底的に教え込み、その通りに書かせている。定型ですから、取材能力などなくても、必要最低限のことを聞けば、ある程度の記事は書けるわけです。

新内閣の発足。メディアはスター政治家が「感情を露にする」シーンを狙いつづける

 一方テレビは、「メディアを足蹴にして不機嫌な顔で立ち去る政治家」のような、感情に訴える画を常に欲している。

 落ち着いて縷々政見を語るとか、その政治家の本音のようなものはシャットアウトして、ただひたすら感情的な場面ばかりを伝えようとする。

 だからテレビの政治記者は、トンチンカンなことを平気で聞ける図々しさが必須ということになってくるんでしょう。政治家がそれに怒ってくれたら、思うつぼなんです。


9条どうでしょう』『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』などの著書で知られる論客、内田樹・神戸女学院大学教授が、メディアをめぐる問題について書きおろした『街場のメディア論』が話題を呼んでいる。 内田氏は(1)日本のマスメディアの凋落とその理由、(2)メディアとインターネットの将来、(3)書籍存続の可能性と著作権問題などについて鋭い分析を加えている。

 昨年流行した新型インフルエンザを巡る報道にも、非常に危険性を感じました。専門家たちが、「まず情報を集めて、分析し、危険性を見極めなくちゃいけない」と言っているにもかかわらず、メディアは「新型」というだけで大騒ぎしたのです。口蹄疫でも、同じ騒ぎが繰り返されました。

 いまの報道は、「浮き足立て」、「興奮しろ」、「取り乱せ」ということを要求し、平静にやっていると、「緊張感がない」と怒り出す。冷静に物事の真相を見ようという姿勢とは程遠い。失礼ですが週刊現代も、その例外ではありません。

 こんなことをやっていたら、狼少年と同じで、本当に危険な災害、流行病が来たときに、どんなことが起こるかわかりません。

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