古賀茂明(経産省キャリア)×長谷川幸洋(ジャーナリスト)「経産省は電力会社に天下り役員の退職を要請せよ」
退職勧奨を受けた改革派官僚を直撃VOL.2

vol.1 はこちらをご覧ください。

長谷川: 菅首相は、公債発行特例法案と再生エネルギー特別措置法案、第2次補正予算案の3つを成立させると言ってます。

 最近は、菅首相は「原発派」であるかのように振る舞っています。しかし、現状の再生エネ法案では、自然エネルギーは広がらないと思いますよ。というのも、現状の法案では、自然エネルギーを買う価格や機関は経産相が、つまり政府が決めることになっている。この法案がいかに社会主義的かを象徴しています。古賀さんはどのように思っていますか

古賀: 再生可能エネルギーの普及を後押しするための法案なので、何らかの形で政府が市場に関与することは、本来の目的からすると自然だと思います。

 ただ、長谷川さんがおっしゃたように、経産相が定める機関、あるいは価格で買い取りますとあるのですが、「全量買い取る」とは書いていないんですよ。一般的には「全量買取法案」と言われているのですが、たとえば太陽光の全量買取となると、太陽光発電は、家庭にも普及しているので、家庭の太陽光の電力もすべて買い取るということになるので、かなり面倒です。

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 案の定、条文を見たら、「全量買取」と明記されていなかったので、本当に全量が買い取られるのか不安ですね。それが出来ないとなると、「看板に偽りあり」ですから。

 では、なぜ「全量買取」だけがクローズアップされ、この事実が広く報道されていないのでしょうか。実は、会見で記者に説明するときに、条文全体は長くて分厚くなってしまうので、概要のみが書かれた紙を配布するんです。

 その概要には書いていないのですが、条文では「電力の安定供給に支障が出る場合には買取をやめられる」という意の条項がついています。電力会社は、「風力発電光や太陽光のシェアが増えると、天候によって発電量が大きく変化する。それが送電ネットワークに負荷を与えて、安定供給に支障が出る」と常々主張しています。

 つまり、もし風力や太陽光の競争力が増してきたら「変動が大きくて安定供給が危ない」とばかりに恣意的にカットすることができる条項だと読めるわけです。

長谷川: 発電方式や買取価格を明らかにすることで、買う側が電力会社を選択できるのが一番良い。「原発は危険だから、多少コストが高くても太陽光を応援しよう」といったようにね。

 そうなれば、太陽光発電で競争が起き、技術革新も盛んになるでしょう。風力や地熱も太陽光に負けじと頑張るようになるかもしれません。おのずとマーケットが収斂されていくわけです。

 その出来上がりの姿を想像すると、経産相が機関と価格をまず決めるというのは、頷けない。その裏側には、官僚の思惑や既得権益がついてきてしまう。

何がなんでも東電を守りたい

古賀: 非常に好意的にみれば、これは過渡的な措置だと考えることもできます。むしろ、過渡的なものとして扱わなければならないと思いますね。

 いずれにしても、何らかの形で、原発はものすごく優遇されて、有利な条件で整備されてきた。実際は立ち上がりの時期から今日まで補助金漬けで出来上がっているんです。

 そのような意味では、再生可能エネルギーも何らかの形で政府の後押しが入るのは悪いことではないと思いますが、最終的にはマーケットにゆだねられていかないといけません。その道筋がこの法律には用意されていないんです。本当は、段階的にシフトしていけるような仕組みを入れておくべきでしょう。

長谷川: 出来上がりの電力供給市場をどうやって整備していくのかがまったく見えないですよね。電力供給市場を整備する話と東電の処理は表裏一体。先日、東電の株主総会ありましたが、東電存続の姿勢は変わりません。何が何でも東電を守りたいということですね。

古賀: 現状の原子力損害賠償支援機構法案(以下、賠償機構法案)は、様々な意味で最悪の選択だと私は思っています。東電という企業から見ても、先が見えない。永久に塩漬けの会社になるという前提なので、東電で働いている人にとっても暗く、将来のない案になっている。

 もちろん、東電は賠償を払わなくてはいけません。どう考えても、賠償はもちろん、原子力を安定化させるだけでもものすごく費用がかかりますよね。廃炉にするコストだってかかります。すべて合わせて10兆、いや数十兆円かかるかもしれない。それが本当に国民負担ゼロで払うなんて無理だと国民も分かっている。だけど、民主党政権はそれを認めない。

長谷川: 海江田経産相も認めていないですね。

古賀: まずはそれを認めるところから始めないといけません。私は以前、「不人気政策をきちんとやることが責任政治家だ」と財務省官僚に言われたことがあるのです。菅首相は消費税増税の時だけは、不人気政策をきちんと言いましたが、東電問題については国民に不人気なことは一切言いませんよね。金額が分からないからハッキリしたことは言えませんが、国民の皆さんに何らかの形で負担してもらわざると得ないと説明することから始めないといけません。

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