企業・経営 国際・外交
ガソリンエンジンの燃費競争では韓国に負け
日本と北米でしか通用しない
「ハイブリッド車のガラパゴス化」

既存エンジンと変速機の進化で世界一狙うVW
ハイブリッド技術の代表格である「プリウス」〔PHOTO〕gettyimages

 軽自動車大手ダイハツ工業が19日、既存のガソリン車では最高の燃費効率(「10:15モード」で1リットル当たり32キロ)となる新型の軽自動車を9月に国内で発売すると発表した。日本経済新聞を初め多くのメディアが「燃費競争加速」などと大きく取り上げている。

 日本の自動車メーカーは低燃費技術を得意としてきた。1997年に「プリウス」として世に出たトヨタ自動車のハイブリッド技術はその代表格であろう。ダイハツの新技術もその伝統の流れに沿うように見える。

 しかし、筆者は「グローバル競争」という視点で低燃費競争を見ていくと、日本の技術は果たして今のままで大丈夫なのか、といった問題意識が芽生えてくる。軽自動車は日本だけにしかない商品であるし、ハイブリッド車も実は「ガラパゴス化」がかなり進んでいる。現状では国内市場中心にしか通用しない商品と言っても過言ではない。

 さらに言えば、ハイブリッド技術に力を入れ過ぎた結果、トヨタやホンダは、既存のエンジンの開発が疎かになっている傾向が見られる。両社ともにガソリン車では韓国の現代自動車に燃費競争で負け始めている。トヨタもホンダも大スポンサー故に大マスコミはこうした現実をほとんど報じない。

 米国市場で、トヨタの「カムリ」「カローラ」、ホンダの「アコード」「シビック」、現代の「ソナタ」「エラントラ」といった3社の主力車の燃費効率を比較すると次のようになる。ガソリン1ガロン(3・8リットル)当たり何マイル走ることができるかを示すデータである。1マイルは1・6キロメートル。

   都市走行 高速道路走行
カムリ 22マイル  32マイル
アコード  23マイル 34マイル
ソナタ 22マイル 35マイル
カローラ 26マイル 34マイル
シビック 28マイル 39マイル
エラントラ 29マイル 40マイル

 この結果、米国市場での販売競争で、「カムリ」も「アコード」もシェアを落としている。今年5月には「カムリ」が「ソナタ」に初めて販売台数で追い抜かれた。

 東日本大震災の影響で日本からの部品供給が止まったため、生産ができなくなり、販売機会を失っていると見られているが、これは「言い訳」過ぎない面がある。アナリストの中からは「これは一過性の問題ではなく、燃費効率の差も影響している」との指摘も出ている。

 トヨタはハイブリッド技術に胡坐をかいている間に既存技術を進化させることが疎かになった---。ホンダは先行するトヨタを意識し過ぎるあまり経営資源の配分がハイブリッドに偏り過ぎた、すなわち「トヨタの土俵」に乗ってしまったがために、自社の強みであったエンジン技術でライバルの後塵を拝する事態になった---ということではないか。

新興国市場では通用しないハイブリッド技術

 そもそもハイブリッド技術は現状では国内と北米の市場でしか通用しない「内弁慶な技術」と言っても過言ではない。日本では政治家、米国ではハリウッドのスターらが「プリウス」をファッションとして乗っているので、目立つ面もあるが、「グローバル商品」ではない。それはデータが示している。

 トヨタは2010年、全世界で「プリウス」を50万9000台販売した。地域別販売の内訳は、国内が31万5000台、北米が14万4000台、欧州が4万2000台。国内と北米で9割を占める。世界1位の自動車市場の中国ではほとんど走っていない。

 ホンダも10年に約14万8000台のハイブリッド車をグローバルで販売したが、その内訳は日本が8万9000台、米国が3万4000台、欧州が2万2000台。国内と米国で8割を超えている。

 エンジンとモーターの2種類の動力源があったり、開発投資のかかるコンピューター技術の固まりであったりすることなどからハイブリッド車は値段が高く、新興国ではまだ受け入れられていないのが現状だ。

 一方で、新興国市場でも車の販売増のためには「低燃費と低価格」が鍵を握っている。いまや世界で年間7000万台程度ある自動車市場の半分は新興国。こうした市場向けのエコ技術がなければ競争に勝つことはできないのだ。

 中国やブラジルの自動車市場で大きな存在感を示す独フォルクスワーゲン(VW)も現在、高収益を誇り、トヨタを追い抜き世界トップの座をうかがう勢いがある。そのVWの技術戦略を見ると、既存のエンジンと変速機の技術を地道に進化させる取り組みによって価格と環境技術を両立させてきた。ハイブリッド技術のように派手さはなく、こつこつと積み上げるドイツ流の職人芸的な取り組みのように映る。

 たとえば、VWの技術では、直噴エンジンを進化させ、ターボチャージャーと融合させた「TSI」と、マニュアル変速機(MT)をベースに開発した「DSG」が注目される。日本のテレビCMでもこの技術は放映されている。

 MTの技術でありながらクラッチがないなど操作方法は自動変速機(AT)に近く、利用者の利便性にも配慮している点などが評価されているようだ。また、ターボチャージャーと組み合わせたことで、エンジンを小型化しても高い馬力を維持できるため、燃費効率を重視する市場の流れにも合っている。

 筆者はハイブリッド技術を否定するわけではない。日本が誇れる技術の一つだと感じている。トヨタが先陣を切って市場を開拓しようとした努力にも敬意を表したい。しかし、いかに優れた技術であっても、世界市場で受け入れられなければ、それはメーカーの自己満足に終わってしまうのではないだろうか。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら