「ソーシャルメディア時代のジャーナリズムを考える」 Vol.1
新聞、テレビとtwitter、ブログの「世論」はなぜ違うか

田原: こんばんは。田原総一朗です。よろしくお願いします。民主党の代表選挙が終わったばかり(シンポジウムは9月16日開催)です。これはネットでもずいぶん盛り上がり、また新聞、テレビとネットのオピニオンの違いがはっきりしました。最初に、この点についていくつかお聞きしたいと思います。

 長谷川さん、私なんかが見ていると、党員・サポーター、あるいは地方議員では菅さんが勝つと思っていたけれど、国会議員では小沢さんのほうが勝つんじゃないかと見ていた。ところが"逆転"して、というか菅さんが勝ちましたね。これは長谷川さんはどういうふうに見ていましたか?

長谷川: 私は、小沢さんはよく健闘されたなと思っているくらいでして。

 というのはご承知のように新人議員がとても多い。あの人たちが代表選の間、地元に2回帰っているわけで、地元の支持者の声を聞くと、おそらく菅さん支持の声が6対4くらいの割合だったと思うけれど、これが無視できない要素として結構あったんだろうなと思う。それから見れば、206対200というのは、まあよく健闘されたと。

田原: むしろ小沢さんがよく健闘したと。

長谷川: ええ。

田原: 告示の前あたりに、各新聞が菅さんと小沢さんの票数、というか(支持する)人員の数を発表していますよね。菅さんのほうは、菅派、凌雲会、野田派を入れて120人と。

 小沢さんのほうは、小沢グループだけで150人。鳩山グループで60人。さらに旧社会党系を入れて、二百数十人ということで、圧倒的に小沢さんが多いと言われていた。だけど、特に若い議員たちは、選挙区に帰って「小沢になんか入れるな」と相当言われたんですか。

長谷川: その150という数字自体、「どうなのかな」という感じがあります。確かに150と書いた新聞が多かったんですけど、120というところもありました。他のグループとダブっている部分もあったでしょうから、150っていうのがそもそもちょっと多めに出ていた。「それプラス鳩山グループの40~50だから200だ」というのが、最初から読みとして、ちょっと強かったんじゃないかと。

田原: 小沢グループの150人という数がそもそも多すぎたと。

長谷川: ええ。言われているほどものすごく強烈な団結、結束力って本当にあったのかなと。私は小沢グループの基礎票は100~120くらいと見ていたので、それプラスどこまで伸びるかという視点から見ると、鳩山グループその他を考えて200票というのは、「ああ、すごいな」というのが私の感じなんです。

田原: 新聞記者である長谷川さんにこういうことを聞くのは愚問だと思うけれど、どっちが勝ったほうがよかったですか。

長谷川: 私個人の意見ですが、実は私は菅さんを強く批判していたんです。でも代表選の勝者は菅さんのほうがいいなと思ったんですよ。

 どうしてかというと、小沢さんが代表になった場合、ひょっとすると野党を巻き込んで参院で過半数を確保しにかかるかもしれない。具体的に言うと、一番の最有力候補は公明党なんですが、ご承知の通り、公明党と小沢さんの関係は深いですね。

田原: しかも一・一(いち・いち)ラインの市川雄一さんが 表に出てきた。

長谷川: そうです。それから太田代表、神崎さんが引退されました。あの辺の流れから見ても、公明党は民主党に明らかにシフトしてた。それから参院の議長選の問題では、山口代表がレッドカードを突きつけた手前、結局は方向転換しましたけど、一時はかなり民主党になびいたことは確かです。

 そういった経緯から見ると、小沢さんが勝った場合、公明党がどう出るのか。ひょっとすると展開によっては、小沢長期政権ということになって、ある種、時計が止まるような事態になりはしないかと。

田原: 小沢さんじゃ時計が止まるわけですか。

長谷川: ちょっと(停止時間が)長くなるんじゃないかなと。

 菅さんの場合だと、これはどの新聞も今書いていますけど、来年3月までが大きな山で、これは一回ガラポンになる可能性が高い。

 だから「どっちがより悪いか、より悪くないか」ということで言えば、菅さんに代表になっていただいて、むしろ流動化の要素が強まった方が全体としてはいいのではないかと。

田原: つまり、菅さんのほうが早く終わるからこっちがいいと?

長谷川: まあ簡単に言えばそういうことです(笑)。

田原: そこで佐々木さん。新聞の世論調査では、だいたい、朝日から産経まで、大雑把にいって菅さん7、小沢さん2。ところがネットは全く逆転していましたね。佐々木さん、ネットでは小沢対菅の比率はどうなっていました?

佐々木: ツイッターとかを見ている限りでは、圧倒的に小沢支持ですね。

田原: 逆転ですよね、8:2くらいで。ツイッターでは圧倒的に小沢さんが強かった。

 ところが一般の新聞、つまり既成のジャーナリズムでは、圧倒的に菅さんが強かった。結果的には菅さんが勝っちゃった。これ、どう見ています?

佐々木: これはなかなか難しいんですけれど、まず一つには、ツイッターのユーザー層っていったいどこの誰なんだっていう問題があるんです。

 ネット世論という言い方がよくされていますが、例えば今回の「菅勝利」について、ツイッターのタイムラインなんかだと、「ネット世論の敗北だ」とか「ネット世論、全然たいしたことなかったじゃないか」「マスメディアのほうが強いじゃないか」っていう、割に落胆とも諦めとも言えない響きの声がたくさん広がっているんですけど。

 でも一方で、僕はツイッターのユーザーって実はものすごく偏っているんじゃないかと思うんです。

田原: ツイッターのユーザーが?

都市部のユーザーが引っ張るインターネット

佐々木: 具体的に言うと、都市部の30代、40代。

 実はインターネットって圏域としては広くて、じゃあ最近話題になっているグリーとかモバゲータウンとか、いったい誰が使っているか。これは実は田舎のヤンキー層みたいな、そういう人たちが使っているわけです。

 じゃあひょっとしてグリーとかモバゲータウンで、「小沢と菅、どっちを支持しますか」って聞いたら、菅のほうが多かった可能性は十分にあるわけです。だからまず一つには、地方と都市、あるいは所得層によってネット世論の中身も違ってくる。

 昔のようなインターネット上のコミュニティが2ちゃんねるしかなかった時代はともかく、いまのようにいろんなコミュニティが生まれてきている状態では、ネット世論といっても一概には言えない、という問題が一つあります。

 なおかつ、結局日本のインターネットって都市部の住民が牽引してきていて、都市部のコミュニティになっちゃっている部分って非常に大きい。そうすると、東京のこの周辺での世論って確かに小沢支持が多かったのかも知れないですよね、30代とかを中心に。

 でも田舎に行くと、実はそうじゃなかった可能性というのも十分にある。

 それから、都市部の住民でない層が菅を支持したとすれば、これはいったいなぜそれを支持したのかってこともを考えないといけない。

田原: 新聞の世論調査ですよ。

佐々木: そうなんですよね。結局、新聞の世論調査で事前に「菅直人圧勝」と言っても、それは単なる世論調査の結果であって、その母集団は国民ですよね。

 今回の民主党代表選というのは、党員とサポーター層なわけだから、そもそも母集団がずれているわけです。

田原: ああ、年寄りだ。党員・サポーターに若い人はいない。

佐々木: 本来、党員・サポーター層というのと国民って違うじゃないですか。

田原: 長谷川さん、その辺どうですか。

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