田原総一郎×郷原信郎 緊急対談「検察の失墜」 第2回

vol.1 はこちらをご覧ください。

田原:村木厚子さんの裁判では、弘中(惇一郎)弁護士を中心とした弁護団の非常に適切な弁護があったと郷原さんは指摘しています。そこを聞きたい。適切な弁護って、例えばどういうことですか。

郷原:やっぱり、まず村木さんに「自白」をさせなかったことです。これはなかなか簡単なことじゃないんですよ。

田原:逮捕・勾留期間は164日間に及んでいます。

郷原:そこです。それは弁護団が適切に弁護して、村木さんにちゃんと、どういう供述をしたらどうなると、この裁判というのはこうなるんだ、ということをちゃんと理解させて、そして村木さんをちゃんと励まして、接見で。

 そういう努力があったから村木さんが「自白」しなかったんです。嘘でも自白をしてしまうんですよ。それはもう今までにもいろんな冤罪事件がありました。

田原:足利事件がいい例で、足利事件の菅家(利和)さんは、幼稚園の女の子を殺したという罪で17年入っちゃうんだけど、捕まってその日のうちに自白させられちゃうんですね。

郷原:まあ、ああいう事件とまたちょっと違うんですけどね。というのは、ああいう事件っていうのは、そういう非常に性格的に弱い人などが心理的に追い込まれて自白をするわけです。でも、自白をしたからといって釈放されるわけでもなんでもないんですよ。自分にプラスになることは何一つないんですよ。菅家さん、17年もその身柄を拘束されたわけですから。

田原:なるほど。

郷原:しかし特捜検察の事件の場合は、ずっと「事実はない。無罪だ」って言い続けたら、間違いなく、村木さんもそうですけども、拘留は延びるわけですよ。簡単に事実を認めたら、場合によっては20日で出して貰えるかも知れない。

 しかもそれだけじゃない。検察の捜査が、どんどん、どんどん、いろんなところに及んでいって、家族、知人、親類縁者もいろんな迷惑を受ける。そして場合によっては、企業の人であれば、会社がひょっとすると潰れるんじゃないかと思うところまで追い詰められる。

 そういういろんな不利益が生じるぐらいだったら、嘘でもいいからもう認めてしまおう、ということで自白をする可能性があるんですよ。

田原:私はリクルート事件を相当調べてまして、江副(浩正)さんとも会いました。江副さんが逮捕された。で、「おまえの会社、潰してやるぞ。今の社長もパクる、専務もパクる、全部パクると。必ず潰してやる」ということで責められて、で、「土下座せよ」とかね、「壁に向かって立ってろ」とかね、もうほとんど拷問ですね。そういう中で吐いちゃうんですね。

郷原:だから、特捜事件のほうが、放っておけばたいてい嘘でも自白してしまうということになりかねないんですね。

田原:2年でも3年でも、一生でもおまえ留めとくぞ、と。

郷原:それをさせないようにした、そういう嘘の自白に追い込まれないようにした、今回の弘中弁護士を中心とする弁護団っていのは、非常によく弁護した。しかも検察のストーリーのおかしさを、一つ一つ客観的に潰していったわけですね。

 それで完全に表に出てしまったわけです、検察がつくったストーリーはまったく事実と違うということを。裁判所もそのリアリティのなさ、これは嘘だという事実に向き合わざるを得なくなった。そういういろんなことが積み重なっているわけですね。

田原:なるほど。

今回の事件で検察は反省をするのか

郷原:今回の事件では無罪判決がでました。でも、その前提となってる特捜検察の捜査のやり方、取り調べの仕方、調書の取り方、調書を取るまでの過程でメモは全然残さない、取っていても捨てる、そして主任検事の了承を得ないと調書を取らない、そういうやり方自体は、今まで特捜検察が、ずぅっとやってきた方法ですよ。

 それがたまたま今回は他の要因でまったく嘘だということが分かってしまったから、裁判所に、こんなやり方をしてたら信用できない、「特に信用すべき状況がない」といって調書が採用されなかったんです。そこが違うだけなんです。

 今までの特捜検察と、今回は違うことをやってきたわけではまったくない。同じなんです、まったく。今回の事件から本当に特捜検察全体が、検察全体が、反省しないといけないと思うんですよ。

田原:反省しないでしょ。

郷原:そこですね、問題は。

田原:別の話を聞きます。村木さんの無罪判決の直前に、鈴木宗男さんの最高裁棄却で収監が決まった。無罪判決が出る直前にこれをやったのは、検察かなんかの思惑があるんじゃないかと、こう言われてますが、このへんどうですか。

郷原:ここは非常に難しい問題ですね。なかなかこうだとは言い切れないですね。

田原:証拠がないですからね。

郷原:ええ。最高裁の判決、決定というのは、それに至るまでの審理は、まったく何が行われているか分からないんですよ。

田原:そうなんですか。

郷原:2年も3年もずっと放っておかれて、いきなり上告棄却っていうのが出る場合もあれば、弁論再開っていうことで見直される場合もある。それまでのプロセスって、まったく分からないんですよ。

 ですから、1ヵ月前に決定が出ても今月出ても、理由はまったく分からないです。ですから、たまたま今回9月7日に上告棄却の決定が出たことが、何故なのかということを説明をする義務はないんですよ、最高裁の場合には。

 そういう意味では、たまたま今日でした、たまたま一生懸命やってきたらこの時期になりましたと言われたら、絶対にそれはおかしいとは言えないんです。しかし、でも私もやはりどうしても疑問が残るのは、基本的には最高裁の審理がどうなっているか分からないし最高裁の側の勝手なんだけども、でもなぜ9月7日であって、例えば(民主党代表選翌日の)9月15日じゃないのか。

田原:そうなんですよ。

郷原:それはどうしても、みんな疑問に思いますよね。ここまで来たら、もうちょっと後でもいいんじゃないか。村木判決の後でも、民主党代表選の後でも、いいんじゃないかと。

田原:でも村木判決の後だと、これで検察の権威とか信用はまったく落ちるわけだから、その後に最高裁が棄却、収監っていっても、嘘だろうっていう話になりますね。

郷原:そういうことを気にしたんじゃないかと疑われるというのも、分かる気がします。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら