雑誌
自動車メーカーの苦しい胸の内
営業利益は全社大幅黒字!!・・・・・・なのに
今期の見通しが立たない!!2011年3月期決算総括

 1年間のトータルの数字を見れば決して悪くないのに、決算発表の会場はどこも重苦しい雰囲気に包まれていた・・・。

 ゴールデンウィーク前後に自動車メーカー各社が相次いで決算を発表。営業利益でトヨタが3・2倍、純利益で日産が7・5倍と景気のいい数字が並ぶが、本当に業績がよかったのか。見通しの立たない今期予想を含め、各社の決算を総括する。

概況 アジアの販売増だけが好要因!?
震災損失は全社計2200億円!

 2011年3月期の決算会見の席で、自動車メーカー各社の首脳が東日本大震災や東京電力の原発事故による影響を懸念しながらも、〝ギリギリ滑り込みセーフ〟の好決算にひとまず安堵の表情を浮かべていた。

 国内の自動車大手8社の'11年3月期の連結決算は、急激な円高や昨年9月に予算切れで打ち切られたエコカー補助金の反動減など業界を取り巻く環境は厳しかったものの、アジアの新興国を中心に海外販売が好調で、前期に比べて売上高で微減となったダイハツ1社を除くと7社が増収を計上した。

 このうち、本業の儲けを示す営業利益ではトヨタ自動車が3・2倍、富士重工が3・1倍、三菱自動車が2・9倍、マツダとダイハツがそれぞれ2・5倍などと全社が大幅な増益を確保した。

 しかも、税引き後の最終損益は、新興国市場に出遅れるなどで販売台数が伸び悩み、繰り延べ税金資産を取り崩したマツダ1社だけが前期に引き続き赤字となったが、日産自動車の7・5倍をはじめ、三菱が3・3倍、ホンダ、トヨタもほぼ2倍近くに膨れ上がった。

 北米や中国販売などが好調な富士重工もようやく黒字に転換。'08年秋のリーマンショック以降の世界的な金融危機の影響で、自動車各社の業績は軒並み落ち込んでいたが、需要が旺盛な海外販売の好調などに支えられ、どん底状態からようやく抜け出したことを印象づけた。

 ただ、今回の'11年3月期連結決算を細分化した四半期別でみると、この1~3月期は、日産、三菱を除くと各社とも前年同期比で大幅な減収減益となった。急激な円高による為替差損に加え、3月11日に発生した大震災の影響などで、年度の最終コーナーで想像を絶するほどの大きなダメージを受けたためだ。

 震災による特別損失など業績への影響は、3月分だけでも8社の合計で約2200億円に達している。なかでもトヨタは子会社の東北のセントラル自動車などが被災したほか、自動車用半導体を製造するルネサスエレクトロニクスの那珂工場の生産停止で電子部品の「マイコン」をはじめ、被災地からのゴム部品などの供給が滞り、国内外の工場で生産停止に追い込まれた結果、営業利益を1100億円も押し下げた。

 従業員1人が死亡した栃木研究所の損傷が大きかったホンダも457億円、被災したいわきのエンジン工場や在庫部品の破棄損などで日産も396億円の特別損失を計上している。

円高も収益を圧迫した

 昨年夏以降の急激な円高直撃による目減りも大きかった。1年前の'10年3月期の平均為替レートは1ドル=93円、1ユーロ=133円だった。

 それが90円を大きく割り込んで80円台に突入し、'11年3月期通期の平均レートは前期に比べてドルで7円、ユーロで16円の円高となり、それぞれ86円、117円の水準で推移した。

 円高による差損はトヨタが2900億円、日産が1475億円、ホンダが1376億円となった。トヨタの場合、円高と震災の影響で4000億円もの利益がぶっ飛んだ計算になる。

震災に関係する損失については、工場損壊や車両流出の被害から工場の操業停止に伴う固定費負担、生産停止に伴う見こみ損失などがあり算出方法に温度差がある。このグラフは各車が発表した震災による損失額をまとめている

 それでも赤字に転落せずに4081億円もの純利益を確保したのは、新興国での販売が好調だったのに加え、リコール疑惑問題などの危機を乗り切るために全社的に取り組んだ血のにじむようなコスト削減努力で、7700億円もの増益要因となったことが大きい。

 コスト削減はトヨタばかりではない。スズキの鈴木修会長兼社長は「石原都知事ではないが、工場内の自動販売機の電源を金曜の夜から月曜の朝まで止めたら、かなり節電になった」と語っているように、各社「内なるコストダウン」に余念がない。

昨年は、各社とも'11年3月期の業績予想を決算発表時に公表していたが、その時点での為替レートを1ドル90円程度と予想していたが、それでも90円を下回る円高となり、前年に続いて自動車メーカー各社の収益に影響を与えた

 その努力の結晶は、株主への還元にも反映される。年間配当金をトヨタは前期よりも5円増配の50円、ホンダも16円増配の54円、日産と富士重工は無配から復配に転じた。ただ、赤字のマツダは無配に転落、三菱は引き続き配当を見送っている。

 もっとも、トヨタの場合、'08年3月期の配当金は140円だから、ピーク時に比べればわずか3分の1にすぎない。足元をみれば、震災による稼働率の低下、余震や電力不足、急激な円高など懸念材料は多く、各社とも綱渡りの経営を続けており、ここしばらく増配もしくは復配は期待できないだろう。

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