『がん患者、家族をつなげる支援コミュニティ~LIVESTRONG(リブストロング) の取り組み』

「LIVESTRONG」のホームページ

 がん(癌)患者、家族のための支援財団、「LIVESTRONG (リブストロング)」の名前を聞いたことがありますでしょうか?

 25歳の若さでがんを発症、苦しい闘病生活を乗り越え、自転車ロードレースの最高峰「ツール・ド・フランス」で前人未到の7年連続総合優勝を達成した、米テキサス出身のランス・アームストロング(Lance Armstrong)氏(39歳)が設立したランス・アームストロング財団のことです。同財団は1997年に設立され、癌と診断された人、その家族等を勇気づけ、必要な情報やサポートネットワークを提供することを使命としている団体です。2004年にがん撲滅・啓発のためにナイキとタイアップして企画された黄色のリストバンドのキャンペーンを始めた団体といえば、ご存知の方も多いかもしれません。

 ツイッターやフェイスブック等のソーシャルメディアにより可能となりつつある「人、モノ、お金、情報の新しいマッチング」をテーマに様々な先端的な事例を目にする中で、LIVESTRONGの活動はオンラインコミュニティの効果的な活用という点で注目に値する活動を展開しています。多くの人が治療法等の情報交換をしたり、励まし合ったり、署名活動や募金活動を行ったりすることで、ひとつのムーブメントを起こしつつあることを感じます。今回は簡単にLIVESTRONGの活動をご紹介します。

LIVESTRONGのソーシャルメディア活用

 1997年に設立された同財団は現在フェイスブック上のファンの数が約148万人、設立者であるランス・アームストロング氏のツイッターアカウント(@lancearmstrong)のフォロワー数は約300万、財団CEOのダグ・ウルマン(Doug Ulman)氏のアカウント(@livestrongceo)は約100万、そして団体のオフィシャル・アカウント(@livestrong)は約12万と、米国の非営利団体の中でもずば抜けた数の人からの支持を得ています。

「LIVESTRONG」のフェイスブックページ

 もちろんスポーツ界のスーパースターである設立者の人気が影響していることは間違いありません。一方、世界中で現在癌とともに生きている約2800万人と言われている規模の人からの、オンライン・プラットフォームの中で繋がりたい、支え合いたいというニーズに対し、LIVESTRONGが効果的にサービスを提供していることも見逃すことは出来ません。

 一方的に財団からの告知や寄付の依頼を情報発信するのではなく、常にファシリテーターとしてコミュニティの声に耳を傾け、適切な問いを投げかけ、寄せられた発言に対してきめ細やかにお礼やコメントをする、というコミュニケーションのスタイルを垣間見ることができます。

 例えば、「友人や家族ががんであることを宣告された時にどのようなことに注意したらいいですか?」
というような問いに対しては、体験者だから分かる、共有したい情報や意見、メッセージががん生存者(サバイバー)含む多くの方から寄せられています。またこうして集められた知見をLIVESTRONGが「ガイドブック」としてまとめたり、ヘルプラインとしてカウンセリング・サービスに活用したりしています。

 2009年に同財団初めてのオンライン・コミュニティ・エバンジェリストに就任したブルック・マクミラン(Brooke McMillan)氏は、それまでの5年間、コールセンター担当として電話で患者や家族からの電話の質問に答えるという業務に従事していたこともあり、きめ細やかな気配りがソーシャルメディア上からも感じられます。現在は彼女と数名のチームメンバーがブログ等のメディア活用を含めコミュニティ・メンバーとの対話を進めています。

「LIVESTRONG」のツイッターページ

 こうしたがんと闘う強いコミュニティを形成することで、同財団の年間収益は寄付、企業からのコーズ・マーケティング収益、グッズ販売等併せ、約4800万ドル(約38.4億円:2010年実績)にも達し、その8割を実際のプログラム運営やアドボカシー活動の費用に充てています。

 現在アームストロング氏は過去の競技人生における薬物使用疑惑に関し、連邦政府から調査が行われ、マスコミ等で話題になっていることも、残念ではありますがここで記載させて頂きます。本人は一貫して否定しているものの、財団にとっては難しい時期を迎えていることと思われます。

 ただ、同財団の様々な活動は既に設立者個人の枠を超え、がんと闘う何百万人ものコミュニティの一人ひとりの想いを繋ぐ場所として、かけがえのない場所になっているように思えます。活動は国際的な広がりを見せ、ここ日本でもLIVESTRONGの理念に賛同するボランティア団体(ジャパンフォーリブストロング)が立ち上がり、オンライン上での交流やチャリティーウォークイベント等が行われています。

 自分や自分の親しい人が体験するまで、多くの人にとっては普段馴染みのないと思われる癌という病に対し、今後日本でもソーシャルメディアが多くの場面で役割を果たしうるのではないか、ということをLIVESTRONGの活動は私たちに示してくれています。

 日本でも最近ではインターネット、動画を活用した試みが増えつつあり、支援のコミュニティが広がる予兆を感じます。例えば、がん医療情報を社会により広く発信するために関連組織が垣根をこえて設立された、「キャンサー・チャンネル」というウェブサイトなどがあります。

 こうした医療分野、そして患者支援コミュニティ運営におけるソーシャルメディア活用に関して、先端的な事例等ありましたら、本記事に対するご意見、フィードバック等と併せ、「ソーシャライズ!」専用Facebookページまでお寄せ頂けたら幸いです。よろしくお願いいたします。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら