ついに破綻!JALが外資にさらわれる懸念
山一證券、長銀の倒産と比較する

 JALこと日本航空が倒産した。19日午後5時に同社は東京地裁に会社更生法の適用を申請。東証は日本航空株を2月20日付で上場廃止にすることを決定し、株式は100%減資となる見込みだ。

 手順としては正攻法であり、「普通の倒産」といえる。ただし普通でないのは、この後、企業再生支援機構を中心とした巨額の支援が行われる見込みであることだ。

 JALの経営状態が悪いことは以前から広く知られていたが、「まさか政府がJALを倒産させることはないだろう」と思っていた人が多いだろう。

 この点は、かつて1997年、98年に相次いで破綻した山一證券、日本長期信用銀行とよく似ている。

 当時、多くの人が銀行の経営状態が悪いことは知っていたが、大手の金融機関は潰れない(政府が潰さない)だろうと思っていた。これらの破綻は衝撃的だったし、個人や企業のマインドまで変化させた。ただ、世間一般に与えた意外性という意味なら、JALの倒産はもっと意外だったかも知れない。

 山一證券も長銀も、社内にいる社員自身さえ、その多くが、よもや自社が潰れることはないだろうと思っていた。もちろん株価の下落などは社員でなくても分かるのだが、それでも「いつ潰れるのか」を正確に見分けることは、金融のプロでも難しかった。まして、自分にかかわる情報の解釈には、「こうであってほしい」という期待が反映しやすい。JAL社員の多くもそうだったのではないか。

 山一證券の場合は、簿外に大きな損失を隠していたわけだが、潰すかどうかは、当時の大蔵省の長野彪士証券局長の判断によるところが大きかった。JALの場合は、法的整理には最後まで反対したようだが、前原誠二国土交通大臣の言動が事態の進展を加速した面があった。どちらも追い込まれた末の正攻法処理だが、工夫の乏しい処置だったといえる。政府側の監督責任者に恵まれなかった点は、両者はよく似ている。

 山一證券は、もっと収益があった時に隠れた損失を処理していれば、会社は残ったのではないかと思える。また経営陣が大蔵省や距離の近い銀行(当時の富士銀行)は助けてくれるのではないかと思っていた甘さも命取りだった。

 ただし、日銀特融で焦げ付いた貸し出しは最終的に千億円単位に留まり、損失処理に数兆円単位の公的資金投入が必要だった長銀、日債銀よりは、山一證券の方が財務的な死に顔はきれいだった。

 JALの損失処理と再建に投入される公的資金は、最終的に1兆円を超えるかも知れない。公的資金に与えるインパクトは山一と長銀の間くらいだ。 

全日空がJALを吸収する可能性は?

 山一は、自主廃業がはっきりしてしばらく経ってから、リテール部隊をメリルリンチ証券が買収することが明らかになった。しかし破綻が確定した時点では基本的に組織は消滅することになっていた。

 長銀の場合は一時国有化の形で救済され、その後外資に売却され、新生銀行として衣替えした。行員にとってはいきなり組織が消滅するような事態になったわけではない。

 長銀は経営が傾いてから、一時SBCとの提携を発表し、これを深化させて生き残ろうとしたが、最終的に話がまとまらず、提携の画策は不調に終わった。JALも、経営陣が最後に米国デルタ航空との提携を軸にした再建案での自主再建を主張したが、時すでに遅く、債権者の支持を得るに至らなかった。この類似性は、将来の不安を連想させる。

 山一、長銀、JAL、すべての共通点は、儲けていれば、潰れずに済んだことだ。この点、社員たちには、「自分たちが十分儲けてさえいれば、会社は潰れずに済んだのに」という後悔が残るだろう。

 JALの今後について最も気になることは、この再建案の行方が最終的に長銀のケースに似て来るのではないかということだ。

 遠慮なく言うと、金融機関の債権放棄(最大の貸し手は日本政策投資銀行であり、同行の損は意味的には国民負担である)とさらに公的資金を投入してバランスシートをきれいにし、不採算路線の閉鎖まで行った挙げ句に、外資系の航空会社においしいところだけを持って行かれる展開が心配だ。

 現在、世界的に大手エアラインの経営は苦しい。不景気によるビジネス客の利用減に加えて、燃料価格の上昇、格安航空会社の登場による価格競争激化など、いずれも手強い収益圧迫要因が並ぶ。本来は競争があることが好ましいのだが、率直に言って、日系の大手航空会社が2社あることは無理なのではないだろうか。

 国策として航空会社を強化するなら、JALを十分にスリム化してから全日空に吸収させるくらいの画策をしなければならないだろう。

 しかし前原大臣肝いりの「タスクフォース」を送り込むとすぐに、JALの債務超過額がマーケットの噂として流れてきたような杜撰な情報管理の下で、こうした交渉をまとめることはとても無理だろう。全日空としては、吸収合併を持ちかけられても、怖くて本格的な交渉に入れないだろう。同社としては、JALの今後の縮小・消滅を待つ戦略を採る公算が大きい。

 今後、債権放棄などの金融的な処理が決まると、JALのビジネスとしての再建案が議論されることになるだろうが、おそらくJALに格安航空会社並のコスト構造を求めるような無理気味の話しか出ないのではないだろうか。

 もし現在の環境下でJALの再建を果たしたとすると、稲森和夫CEOは掛け値なしに世界的な名経営者と言っていいだろう。秘策はあるのだろうか。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら