本/教養


「地元・岩手すら見捨てた『許されざる政治家』の実像」
著者インタビュー:『角栄になれなかった男 小沢一郎全研究』松田賢弥(ジャーナリスト)

 3・11大震災以降、小沢一郎氏は不気味なことに水面下に潜っているようだ。内幕として仕掛けた「菅下ろし」は不発に終わり、また被災地そっちのけで政争に明け暮れるその姿は、国民から呆れられた。

 かつて「壊し屋」と呼ばれた小沢氏に、復活はあるのか。20年にわたって小沢氏を取材し、その集大成とも言える『角栄になれなかった男 小沢一郎全研究』を上梓したジャーナリスト・松田賢弥氏が語る。

被災地に足を踏み入れない小沢一郎

 大震災が起こった3月11日、私は東京の仕事場で本書の原稿を書いていた。私の生まれ故郷でもある岩手県を含む東北地方が大震災に見舞われ、三陸沖沿岸が津波に呑まれる姿を見て、胸が締め付けられる思いだった。

 それから政治の動きを注意深く見てきたが、政治家からはこの未曽有の危機を打開しようという意気込みがまったく感じられない。

 一番の象徴が、岩手県を地元としている小沢一郎だろう。自らの子飼いである達増拓也岩手県知事と盛岡で面談しただけで、沿岸部の被災地に足を運ぶそぶりすら見せなかったのだ。

 大津波で甚大な被害を受けた陸前高田市や大船渡市はもともと小沢の選挙地盤で(旧岩手二区)、父・佐重喜の時代から世話になってきた地域のはずだ。陸前高田市出身の黄川田徹議員が民主党から当選できたのは、小沢の影響力が沿岸部にまで及んでいるからだろう。

 その被災地に小沢本人が足を運ばないのは、あまりに異様だ。そもそも小沢はここ数年来、郷里・水沢に足を運んでいない。和子夫人も行っていないと聞く。小沢一郎にとって、「郷里・岩手」という言葉は選挙で当選するための道具でしかなく、土地に対する思い入れなどないということなのだろう。