牧野洋の「ジャーナリズムは死んだか」
2010年09月23日(木) 牧野 洋

NPO型オンラインメディア「ボイス・オブ・サンディエゴ」を支える5つの収益源

全米各地で生まれる新しい調査報道メディアの挑戦

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 2005年2月、南カリフォルニア・サンディエゴで民間非営利団体(NPO)形態のオンライン新聞「ボイス・オブ・サンディエゴ(VOSD)」が創刊された。

 前回(「新メディアの実験場」サンディエゴで活躍する調査報道専門NPO」)も触れたように、同紙創刊の最大の支援者が地元ベンチャーキャピタリストのバズ・ウーリーだ。創刊時に35万ドルの資金を拠出したうえ、その後も毎年寄付を続けている。彼の累計寄付額は130万ドルに達している。

 ウーリーはVOSD創刊時に1つの条件を設けた。それは「長期的に持続可能なビジネスモデルにするため収益を多様化すること」だった。営利企業として利益を出すのは難しいが、NPOとして収益基盤を安定化させることは可能――こんな考え方が背景にあった。

 この条件に従ってVOSDを経営しているのが、最高経営責任者(CEO)兼共同編集長のスコット・ルイスだ。

 もともとは山岳地帯ユタ州ソルトレークシティ出身のルイス。海軍士官の妻が海軍基地のあるサンディエゴへ転勤になったのに伴い、サンディエゴ地元のビジネス紙の記者になった。そんな時、VOSDから声がかかった。

 ルイスは「われわれがモデルにしたのは公共ラジオ放送。地域に密着したNPOジャーナリズムは、公共ラジオ放送という形で何十年も存在している。NPOとしてスタートするなら、それを参考にしない手はなかった」と語る。

 アメリカで「公共ラジオ放送」と言えば、ワシントンに本部を置くNPO「ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)」のことだ。寄付金や助成金などで運営されるラジオネットワークであり、主に報道番組を制作し、アメリカ各地の公共ラジオ局へ配信している。

 NPRは音楽番組も制作しているが、NPOらしく独立性を売り物にしている。音楽番組の中でリスナーに寄付を呼び掛ける際、「NPRではスポンサー企業ではなく、DJが曲を選んでいます」と強調する。

 ルイスは続ける。

「VOSDは、文字ベースの『オンライン版公共ラジオ放送』とも呼べる。その意味で、公共ラジオ放送をちょっと変えただけで、目新しいビジネスモデルとは言えないかもしれない」

「あなたの寄付は貴重です」 

 VOSDの収益源は主に5つある。

 第1に大口寄付者。年5万ドルから10万ドルを寄付する慈善事業家や富裕個人が中心になる。ウーリーが筆頭格であり、2009年にも20万ドル寄付している。

 第2に小口寄付者。VOSDの使命に賛同する「一般会員」による寄付であり、1人当たりの寄付金は年5ドルから5000ドル。一般会員数は現在1200人に上る。

 第3に慈善財団。地元の「サンディエゴ・ファウンデーション」のほか、ジャーナリズム支援で定評のある「ナイト・ファウンデーション」など14財団から助成金を得ている。

 第4に企業広告とスポンサー。現在スポンサー数は12社前後。人気の「ファクトチェック」コラムは地元レストランの協賛を受け、同レストランの広告を1年中載せている。

 第5にコンテンツサービス。VOSDの報道を既存メディアへ有料で提供するサービスだ。有力ネットワークNBC系列の地元テレビ局に週2本のレギュラー番組を提供している。

 現在、VOSDの年間予算は約100万ドル。このうち35%が個人からの大口・小口の寄付、30%強が慈善財団からの助成金、30%強が企業広告・スポンサーとコンテンツサービスという構成になっている。

 中長期的には、VOSDは慈善財団への依存を20%以下へ減らそうと考えている。財団の助成金は大きいとはいえ、毎年自動更新されることはない。ベンチャーキャピタル用語で言えば「シードマネー(種まき資金)」であり、安定収入源として頼りにするわけにはいかない。同様の理由で大口寄付の割合も下げる方向だ。

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