菅直人首相「笑顔なき続投」小沢一郎前幹事長「怒りの報復」が始まる 
9・14代表選 全ドキュメント
「ノーサイド」はあり得ない! 

 独裁者は「議員票の半数獲得」を頼みに、新たな戦争―政界大再編を仕掛ける

 どよめきが上がったのは、党員・サポーター票の得票数が読み上げられた瞬間だった。小沢一郎前幹事長(68)が51ポイント獲得したのに対し、菅直人首相(63)は249ポイント。一般国民の小沢氏への嫌悪感を如実に顕した数値は、多くの民主党議員を安堵させたことだろう。自分が小沢さんを裏切ったわけじゃない。これは国民の選択なんだ―と。

「新しい代表には菅直人さんが当選されたことをお知らせします」

 9月14日午後3時40分、東京・芝公園の「ザ・プリンス パークタワー東京」に設置された開票センターで、菅首相の続投が宣言された。最終獲得ポイントは菅氏が721、小沢氏が491。実に230ポイントの大差がつき、菅首相の圧勝だった。

 だが、勝利した直後の挨拶で、すでに菅首相の表情は苦渋に満ちていた。

「お約束した通り、ノーサイドで」

 "昨日の敵"小沢氏を取り込んだ挙党態勢で進むと方針を掲げる菅首相の表情は、強ばったままだ。

 そして、壇上に上げられ、菅首相と握手をさせられ、「ノーサイド」を認めさせられる格好の小沢氏とて、誰が見ても無理に笑顔をこしらえていることが見て取れるほどだった。

 小沢ガールズ代表の田中美絵子代議士(34)は唇を嚙んで、本誌に言った。

「一生懸命やったんですけど・・・」

 首相本人の渋面をよそに、菅首相支持派の表情は緩みに緩んだ。選対本部長を務めた江田五月前参院議長は本誌に、

「民主党の議員が、国民の声をしっかり受け止めたということでしょう」

 と語り、小沢氏の専横ぶりに苦言を呈してきた前民主党最高顧問の渡部恒三氏に至っては、満面の笑みを浮かべて、

「素晴らしい。国会議員の良識と勇気を見た思いだね。小沢君には僕のような長老、相談役として頑張ってもらいたい」

 と、セミリタイアを勧める始末だった。

 とはいえ、小沢氏にとってこの結果は、想定の範囲内の出来事だった。

「まだ、(来年の)3月がある」

 代表選中盤、小沢氏は側近にこう漏らした。だが、敗北宣言というわけではない。この段階で地方議員票、党員・サポーター票とも6対4で敗色濃厚との票読みが流れ、小沢氏は国会議員票の過半数を確実に制する戦略に切り替えたのだ。

「衆参両院の与野党が逆転しているねじれ国会が解消されたわけではなく、続投が決まっても菅政権の運営が厳しいことに変わりはありません。代表選に敗れても、小沢さんが民主党議員の過半数を押さえておけば、菅首相に対する発言力は高まる。つまり、小沢氏は党内にもねじれ現象を起こそうとしていたわけです」

 ある小沢派の議員が、こう代表選中の戦略を解説した。だが、フタを開けてみれば、あまりにも大差がついた。

 そんな計算はいっぺんに吹き飛ぶ。全国紙政治部記者が、小沢派の心中を推し量る。

「一言で言って、小沢さんは負け過ぎました。国会議員票で412対400と6人の差がついて負けており(国会議員票は1人2ポイント)、一見、善戦したかに見えますが、議員の過半数を押さえなくては党内で圧倒的な世論を形成できず、善戦では菅首相の脅威にならないのです。さらに党員・サポーター票に至っては、小沢一郎という政治家に対する国民の不信感が、いかに根深いかが露呈しました」

「小沢一郎の処遇」

 裏を返せば、菅首相サイドも同じ時期に、少なくとも地方議員票、党員・サポーター票における勝利を確信したとも言える。夏の参院選を大敗に導いた菅首相が代表選終盤、国会議員の人心を掌握するには、手は一つ。ポストの大安売りしかない。9月10日に1年生議員や女性議員約210人を前にした討論会の席で、

「50、いや100ぐらいの特命チームを作り、皆さんに自分の得意なチームに入ってもらい、政府・与党一体で改革を進める」

 と空手形を切って枝野幸男幹事長(46)に叱られたが、懲りる様子は微塵もなかった。自陣営の選挙対策本部に現れると、声高らかに叫んだというのだ。

「400人内閣だ。菅政権は400人の閣僚で運営するんだ」

 菅首相の周辺によると、代表選の最中から、首相は人事案を口にし始めたという。いくつか例を挙げよう。

 小沢氏が嫌った枝野幹事長の替わりに岡田克也外相、前原誠司国土交通相の名前が浮上。だが、両者を選ぶと露骨な「脱小沢路線」と受け取られるという理由でペンディングに。

 閣僚では「鎧よろい兜かぶとで馳はせ参じます」などとオベッカを使って小沢支持を表明した原口一博総務相は更迭。

 細野豪志幹事長代理は前原グループに所属しながら小沢支持に回ったが、事前に前原氏に「(小沢を)離党させないため」と仁義を切り、菅首相にも「お目付け役となるため」と報告している。こうした"忠義"はポイントが高く入閣の可能性大・・・。

 9月12日、菅首相は官邸に、仙谷由人官房長官(64)、枝野幹事長、それに寺田学首相補佐官(33)らを集めた。すでに議題は「小沢一郎の処遇」に移っていた。その会合の後に寺田氏に会ったという議員は、次のように証言した。

「仙谷さんは、やはり『菅さんが何とか続投できそうなのは、脱小沢を貫いたからで、中途半端な融和は、かえって国民の信頼をなくす』と徹底抗戦を主張し、現在の菅内閣とほぼ変わらぬ小幅な人事案を主張したようです」

 菅首相側は、挙党態勢の建て前を貫くため、小沢氏にも「それなりのポスト」を与えなくてはならないことに頭を痛めているという。前出の議員が続ける。

「副代表ポストを打診するようですが、小沢氏は受けないでしょう。それどころか小沢氏サイドからは、仙谷官房長官の更迭と引き替えに、挙党態勢に協力すると駆け引きしているようです。それが叶わないのなら、小沢グループは全員、入閣せず、党の役職にも就かず、完全に非主流派として生きるというのです」

 仙谷氏は「簡単に党を割ったり、造反することはできない」と、小沢派の動きを読み切っている。その見解は正しい。

「民主党サポーターを対象にした選挙でこれだけの票差ですから、一般国民の小沢氏に対する嫌悪感は、この比ではない。

 来年4月の統一地方選を控え、甚はなはだしく不人気の小沢氏を『支持する』と明言できる議員は、どれだけいるでしょうね」
(全国紙政治部デスク)

 小沢氏は当分、手も足も出ない。ではなぜ、代表選に勝利した菅首相の表情は冴えないのか。全国紙政治部記者が語る。

「問題は予算関連法案が目白押しとなる年明けの通常国会です。ねじれ国会であっても、本予算は衆院優越議決で通過させられますが、関連法案は通せず、来年度予算が編成できない事態が起こりうる。そうなれば、せっかく続投できた菅政権もクラッシュします。その時こそ、小沢氏の存在感が、再度クローズアップされることになるのです」

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