代表選最中に小沢支持を打ち出した全国郵便局長会「政治遊び」の愚かさ
またもや郵政は政争の具に

 菅直人首相と亀井静香国民新党代表は9月17日、連立政権の維持を約した合意書に署名・捺印した。この合意書の特色は、 あの郵政改革法案について、「速やかにその成立を期す」との文言を盛り込んだことにある。

 しかし、永田町・霞が関には、この合意が誠実に履行されると信じる向きは ほとんどない。

 ここで影を落としているのが、全国郵便局長会の“政治遊び”だ。実は、先の民主党代表選の最中に小沢一郎元幹事長支持を打ち出し、菅政権中枢の怒りを買っているのである。

 関係者によると、17日の午後1時から行われた連立合意書の調印式には、民主党側から菅代表(首相)、仙谷由人官房長官、岡田克也幹事長、国民新党側から亀井静香代表、下地幹郎幹事長の5人が顔を揃え た。

 そして、2009年9月に合意した 民主、国民新、社民の「三党連立政権合意書を尊重し引き継ぐ」ことと、郵政改革法案の速やかな成立を目指すことの2項目からなる「合意書」を、菅、亀井両代表は交わした。

 だが、それで も菅政権の約束は信用できないと言わんばかりに、国民新党側は「総務大臣を原口一博氏から片山善博氏に交代させたことは、(郵政改革法案 に対する)民主党の姿勢を変えるということではないですね」と確認を迫ったという。

 だが、永田町や霞が関には、民主党が誠実に合意の履行を試みると見る向き はほとんどない。

 新聞ジャーナリズムでさえ、この合意のはかなさを嗅ぎつけている。

 時事通信は「片山総務相はかつて地方紙に寄稿」し、「同法案に批判的な意見を公表した」と指摘している。毎日新聞も「仙谷官房長官は国家戦略担当相だった今年3月、ゆうちょ銀行の肥大化につながるとして郵政改革に異を唱えた経緯がある」などと指摘、同法案の先行きの不透明感 の強さを報じている。

 実際のところ、参議院で過半数を持たない連立与党にとって、郵政改革法案に限らず、どのような法案でも可決・成立させるのが容易でないのは事実である。

 しかし、この案件には、菅政権をもっと本格的なサボタージュの誘惑にからめとらせた“事件”がある。

 それは、全国郵便局長会(旧全国特定郵便局長会、柘植芳文会長)が代表選の真っ最中の9月7日に、赤坂のすし屋で開いた「郵政事業をご理解いただく会」である。

 実は、局長会は、この席に、態度を鮮明にしていなかった26、7名の1年生衆議院議員を招き、同局長会が小沢一郎元幹事長を支持していることを説明したうえで、小沢氏への投票を要請する挙に出たのだ。

 しかも、会合には、小沢氏本人が臨席し、自ら支持を訴えた。

 これほど派手で大掛かりな選挙運動が、対立候補の菅陣営の耳に入らないわけがない。

 菅陣営はまず、これまで局長会が公式支持を表明してきた国民新党が、小沢氏を支持するグループと連携しているのではないかと疑心暗鬼になった。そして、同党の姿勢を問いただしただけでなく、監督官庁の総務省に対しても局長会の“政治遊び”を糾弾したという。

 菅政権としては代表選で勝利して事無きを得たものの、局長会に対する怒りや小沢派へのわだかまりが氷解したわけでは決してない。むしろ、局長会は謝罪の意を示すため、幹部更迭によってけじめをつけると申し出ざるを得なくなっている。

「ゆうちょ廃止論」浮上の可能性も

 菅政権の反小沢シフトはあからさまだ。小沢グループから菅改造内閣への入閣が1名もなかったことは周知の事実である。人事による報復だけではない。ねじれ国会で国会運営に苦労する中、あえて渦中の郵政改革法案の成立に尽力する意欲などか けらほども持ち合わせていないという。むしろ、法案を国会に提出して、あとは店晒しにしようという意図が露骨という。

 局長会は、日本郵政グループの経営安定化を願うあまり、代表選の前から、 郵政改革法案に理解を示してきた小沢氏への支持を打ち出したのだろう。

 しかし、昭和30年代以降、田中角栄氏や田中派、経世会の支持母体として特定の政治勢力にの めり込み過ぎて、小泉純一郎元総理をはじめとした他の勢力から恨みを買い、その結果、民営化という事態を招いたことへの反省がみられない点は、局長会の組織として甘さと言わざるを得ない。はっきり言えば、学習効果がないのである。

 こんな“政治遊び”を繰り返していては、経営の安定化どころか、早晩、政治家からさらに多くの恨みを買う。そして、遠からず、民営化よりも乱暴な「ゆうちょ廃止論」などを突きつけられる日が訪れても不思議はない。
 

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