ベルギー、オランダなど「連立先進国」の政策決定プロセスに学べ
連立協議の過程で非現実的なマニュフェストの変更を

 9月14日の民主党代表選挙で、菅氏が小沢氏を下し、再選を果たした。また、17日には、党・内閣の人事を完了し、菅改造内閣が発足した。

 民主党選挙期間中のほとんどをヨーロッパで過ごしたので、その間の日本の「空気」については分からないが、焦点が「小沢一郎」、つまり親小沢か反小沢かであったことは確かである。

 過去20年の間、日本の政治は「小沢一郎」を軸に展開してきた。今回の代表選挙が、その軸を終わらせることになったのかどうか、まだ即断はできないであろう。しかし、「政治とカネ」の問題を中心に小沢的な政治手法が国民の強い批判に晒されたことは忘れてはならない。権力闘争の側面が強く出過ぎると、日本人は拒否反応を示す。

 それは、菅氏の勝利が、その実「圧勝」と言えるものではなかったからである。
確かに党員・サポーター票は多かったが、ポイント制によるふくらみがある分は差し引かねばなるまい。地方議員では、四分六、国会議員では6人差というのでは、まさに党が二分したのである。

 マスメディアによる小沢攻撃、度重なる世論調査の公表などを考えると、小沢氏はよくここまで票を獲得したと言ってもよいのではないか。それを「世間の常識と永田町の常識が乖離している」などと単純に言い切るのは問題である。

 菅氏には、「小沢氏よりはましだ」、「何度も総理を替えるのは困る」といった消極的支持しかない。それは、この3ヶ月間、経済でも外交でも、思い切った政策を断行できなかったからである。このような姿勢を今後とも続けていくならば、支持率の低下は免れえないであろう。

 今回の改造人事を見てみると、「反小沢」色を強めたことが特色である。
代表選挙中の世論調査では、菅支持と小沢支持が、ほぼ7対2で開いており、これが菅氏の勝利につながったことは間違いない。それ故、世論調査を中心に考えれば、反小沢色を強める作戦は当然のことであろう。しかし、問題は国会対策である。

 代表選挙の結果がどうであれ、参議院では民主党と国民新党では過半数に達しないという事実に変わりはない。菅首相は、政策ごとの部分連合を模索すると言っているが、それでは政権が安定しないし、法案を出すにしても、それが参議院で成立するかどうかが最後まで分からないことになる。そのような状態では、政権の円滑な運営はできまい。

 したがって、安定した基盤を持つ連立政権を構築することが不可欠となる。部分連合というのは現実には機能しない。

 私が先般訪問したベルギーでは6月に総選挙が行われながら、まだ内閣が発足していない。それは政党間の連立協議がうまくいかないからである。

連立内閣成立まで半年かかることもある

 もちろんベルギーは二重言語国家で日本とは事情が異なるが、数ヵ月かかろうと、部分連合ではなく安定した多数派連合を模索するのには、それだけの意味があるのである。オランダでも事情は同じで、半年も内閣ができなかったこともある。

 予算案は衆議院が優越するが、予算関連法案は、他の法律案と同様に衆参同様の重みを持つ。したがって、参議院の壁は高い。現状のような民主党の議席では、政策で妥協し、修正して安定的な連立政権を築くのが憲政の常道である。日本でもすでに細川内閣以来、連立政権が常態化している。

 ベルギーやオランダなどの連立政権先進国の経験も参考にして連立の作法というものを確立する必要がある。

 最大会派の政策に問題がある場合、選挙で民意を問うた以上、その会派自らがそれを修正することは難しい。しかし、政治を安定させるという大義名分の下、連立協議の過程で政策変更することは連立の作法として何の問題もない。

 民主党にとっても、このプロセスを経て非現実的なマニフェストの修正を行うほうが、国民の支持を調達できるのではないか。

 国の内外に問題が山積している。経済でも外交でも、日本の地盤沈下は甚だしい。それに正面から取り組むことが菅内閣の課題である。

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