小沢一郎が持ち出した「日銀法改正」「インフレターゲット」が大再編の芽になる
みんなの党、公明党の動きも焦点に

 民主党代表選で再選された菅直人首相を待ち受けるのは、ねじれ国会だけではない。負けても、やはり「小沢一郎」という波乱要因である。

 それを意識させたのは、小沢が14日の演説で「デフレ克服が最優先。日銀法改正やインフレターゲット政策も視野に入れて、あらゆる手段を講じる」と述べたからだ。代表選の最後の最後になって、それまで口にしていなかった「日銀法改正」や「インフレターゲット政策」に突然、言及したのはなぜか。

 複数の関係者によると、代表選最終盤になった先週金曜日(10日)に小沢支持の若手議員たちが劣勢を跳ね返すために、小沢に二つの政策を演説に取り入れるよう提言したためだ、という。

 そうだとすると、必ずしも小沢支持派の間で十分に練られた政策というわけではない。小沢は起死回生の一発逆転を狙ってインパクトの強い日銀法改正とインフレターゲットを持ち出したことになる。つまり政策論より政局論の産物である。

 とはいえ、この二つは案外、じわじわと後で効いてくるかもしれない。

 というのは、先週と先々週のコラム(「余裕の小沢一郎が『公約』に仕掛けた「みんなの党」への秋波」と「小沢一郎「国の資産の証券化」で「政府のスリム化」は実現するのか」)で取り上げた「国の資産の証券化」と同様、これまた、みんなの党が掲げている重要政策であるからだ。

 みんなの党は参院選のアジェンダに掲げるだけでなく、日銀法改正の法案を準備している。

 一部で報じられた改正案の概要によると「政府と日本銀行が協力して達成すべき経済政策の目標に係る協定を締結することを通じて、両者の経済政策における役割分担と責任の範囲の明確化を図る」などとなっている。

 これだけだと分かりにくいが、ようするに政府と日銀が物価安定目標(インフレターゲット)を掲げて、かつ日銀は目標を達成するための政策手段について独立性を有することを明確にする、という趣旨だ。

 こんな法案が実際に国会に提出されたとき、小沢支持派はどう対応するのか。ここがポイントだ。

 小沢とその支持グループは、小沢が演説で二つの政策を「視野に入れて、あらゆる手段を講じる」と述べたのだから、みんなの党が出す法案に賛成する可能性がある。少なくとも、頭から反対はできない。

 一方、菅支持派はこうした政策に対する態度を鮮明にしていない。つまり、民主党内が賛成派と反対派で意見が分かれる可能性が出てくるのだ。

 小沢とすれば「みんなの党の取り込み、ないし連携を狙って二つの政策を言い出した」というわけではないにせよ、結果的に法案に対する態度が一種の踏み絵になって、政局の芽になるかもしれない。

 みんなの党だけではない。公明党も景気対策に物価安定目標政策を掲げている。公明党は参院で19議席を確保しているので、民主党にとっては公明党の存在はきわめて重要だ。

きたるべき金融政策の大転換と政局

 民主党内では、もともと今回の代表選とは関係なく、デフレ脱却のために金融政策が果たす役割について問題意識が高まっていた。「デフレから脱却し景気回復を目指す議員連盟」(デフレ脱却議連、会長は松原仁衆院議員)の活動が象徴的だ。

 そうした動きに加えて、なにより日本経済は円高と株安が加速し、景気が悪化している。菅政権は代表選の最中に、雇用重視を唱えて企業への奨励金支給を目玉にした経済対策を閣議決定したが、景気を下支えするにはいかにも力不足だ。

 15日には急伸した円高を前に単独介入に踏み切った。ところが、これも介入だけでは効果は限られている。日銀の金融政策を根本的に緩和方向に切り替える必要がある。

 つまり景気の実態を直視するなら、遅かれ早かれ抜本的な日銀改革と政策転換が避けられない、と私はみる。

 経済を無視して、政治は動かない。経済が危機的状況を迎えたときこそ、政治も根本的に変わるチャンスが出てくるのだ。

 小沢vs菅の戦いはひとまず、菅の勝利に終わった。

 だが、日本経済がデフレと円高株安の中期トレンドから脱出できない以上、いずれ金融政策の大転換が政権の最重要課題に上ってくるはずだ。そのとき、小沢vs菅の戦いは、みんなの党や公明党など野党をも巻き込んで、再び新たな次元で始まるのではないか。

 (文中敬称略)

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