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コンピュータで徹底分析 日本人は楽観しすぎている!「福島第一の再爆発に備えよ」
全米で最も著名な理論物理学者
ミチオ・カク教授が明かす
〔PHOTO〕gettyimages

 「いいですか。忘れてはいけませんよ。いったん作業員全員が避難するようなことになれば、あとはもうフリーフォール(止めようのない急降下)です」。最悪の事態はこれから起きるのかもしれない。

取材・文 松村保孝 ジャーナリスト

これは時限爆弾です

「1906年4月、私の祖父はマグニチュード7・9のサンフランシスコ地震に遭遇しています。そのときの44倍以上のエネルギーが、今回の東日本大震災では放出されました。

 それほどの巨大地震だったわけですから、何ヵ月あとになっても大きな余震は起こりうる。マグニチュード9・1のスマトラ島沖地震では、3ヵ月後にマグニチュード8・6の余震が発生しています。東日本大震災のマグニチュードは9・0でしたから、それに近い規模の巨大余震がいつ東北地方や福島第一原発を襲っても、決して不思議ではありません。

 日本の専門家の中には、『多くの死者と行方不明者を出した地震津波に比べて、原発事故の被害は少ない』という人がいるようですが、それは楽観しすぎです。指先でビルの屋上の外壁にぶら下がり、『見てみろ! 安定しているじゃないか! 誰も死んでいないのだから、すべてOKだ』と言っているに等しい。本当はいつ再爆発してもおかしくない—これが福島第一の実態なのです」

 こう話すのは、ニューヨーク市立大学教授(理論物理学)で日系3世のミチオ・カク氏(64歳)である。

 カク教授は、ハーバード大学を卒業後、カリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得。ニューヨーク市立大学で30年にわたって教鞭を執る一方、物理学の普及活動にも熱心に取り組んでおり、『アインシュタインを超える』など多くの著書がある。

Photo:Sameer A.Khan

 東日本大震災以降は、CNNやABCなどの報道番組に精力的に出演し、福島第一の今後などについて解説を行っている。その明晰な語り口は人気が高く、いまアメリカで最も著名な理論物理学者である。

 カク教授は福島第一の現状をどう捉えているのか。ニューヨーク・セントラルパークの北にあるキャンパスの研究室を訪ねた。

---事故発生から4ヵ月近くが経過しました。当初のような大きな爆発が最近起きていませんが、福島第一はヤマを超えたのでしょうか。

カク とんでもない。私は福島第一を、静かに時を刻む「時限爆弾」だと考えています。時限爆弾は一見安定していますが、爆発させないためには信管を抜かなくてはならない。

 翻って福島第一は今、瀬戸際でぐらぐらしていて安定していない状態です。原子炉の水温は高いままで、来年にならないと冷温停止にはならないでしょう。

 しかも、ちょっとした余震に見舞われて、原子炉を冷却するためのパイプが破裂し、原子炉の圧力容器や格納容器、使用済み核燃料プールの破壊が進めば、事故処理はまた振り出しに戻る。現時点でさえ、作業員は原子炉建屋の一部にしか入れず、一回の作業時間もたった数分から数十分に限られ、そのわずかな時間で年間許容限度の放射線を浴びることもある。いつ状態が悪化してもおかしくない福島第一は時限爆弾なのです。

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