「環境問題」「消費者問題」でいまも世界をリードするヨーロッパの成熟した民主主義
民主党代表選ばかり盛り上がる日本の政界も学ぶべき

 ヨーロッパに9日間出張して、9日に帰国した。今回の公務出張の目的は、ヨーロッパの消費者行政の視察である。まず、ブリュッセルを訪ねて、ベルギーとEUの現状を調査した。次いで、ストックホルムに移動し、消費者保護の先進国であるスウェーデンの政策を学んできた。

 私が若い頃留学していたヨーロッパは、人類の指針となるような先進的な取り組みを行ってきた。戦後の日本は、アメリカ一本槍のような感じがするが、ヨーロッパの重みを忘れてはならないし、アメリカに対する牽制球としてもヨーロッパを活用する必要がある。

 ヨーロッパ統合の歩みについては、戦後、石炭鉄鋼共同体から始まって、いまや通貨の統合にまで至っている歴史は尊敬するに値する。ギリシャのソベリンリスクも、独仏枢軸で何とか克服しようとしている。

 環境問題も、ヨーロッパが先陣を切った。ドイツなどで緑の党が生まれ、環境を重視する政策が展開されたのであり、ホテルやスーパーなどでの徹底した環境保護には驚かされたものである。しかし、今や、日本をはじめ世界で同様な政策がとられるようになっているし、政治の世界でも環境政党はその存在位置を確立した。

 消費者問題も、おそらくは環境問題と同様な推移をたどることが予想される。日本では、消費者庁が発足して1年が経つが、省庁の縄張り行政からまだ自由ではない。ヨーロッパでも同様な縦割り行政に悩まされている状況はあるものの、それを克服すべく、各国、そしてEUレベルでの努力が続けられている。

 たとえば、ベルギーでは一般的な農業政策は地方政府に任せ、食の安全については連邦政府が統一して権限を行使する仕組みになっている。このようなことができるのもEUという枠組みのおかげである。

 さらに、消費者保護については、ヨーロッパでは、政府のみならず、NPOも大きな役割を担っている。消費者と企業とを比べると、当然前者の力が弱いので、政府やEUが彼らに財政的支援を行っている。

 たとえば、EU委員会はヨーロッパ消費者連盟に財政支援を行っているが、当の連盟は、EU委員会の消費者政策を堂々と批判する。

 これこそが、成熟した民主主義であり、トックヴィルではないが、自発的結社やロビー活動が民主主義の基礎であることを再認識させられた。

 日本では、戦後、保守政権が続き、ロビー活動と言えば政官業の癒着を連想させられ、環境保護や消費者保護と言えば左翼運動と相場が決まっていた。

 そのような政治風土の中では、民主主義を成熟させるようなロビー活動やNPOの活動も十分には展開されなかったきらいがある。政権交代が、そのような風土に風穴をあければ日本のためになるが、現実にはどうであろうか。

 ヨーロッパでは、消費者からの苦情を処理するシステムや学校教育の現場での消費者教育が進んでいる。スウェーデンでは、教科書に消費者関連の法律の説明や、家計の維持方法などについての説明が記されている。日本でも、子ども達にどのようにして消費者問題を教えるかが今後の課題となろう。

世界から日本の重みがなくなりつつある

 ところで、ベルギーやスウェーデンでは、すでに秋になっており、朝晩はコートが必要なくらいに冷え込んでいる。その涼しさに心身ともに癒されたが、帰国した日本は30度を超える残暑である。

 しかも、民主党の代表選挙の熱気で蒸し暑いこと、このうえない。各種の世論調査も入り乱れ、識者による論評も多様であるが、菅か小沢か、その結果は、今日の午後判明する。その結果次第で、また日本の政治は大きな転換点を迎える。

 しかし、ヨーロッパから日本を見ていて気がかりなのは、世界における日本の重みがなくなりつつあること、日本が沈没の危機にあることである。9月後半にはニューヨークで国連総会があり、10月初めにはブリュッセルASEM首脳会合が予定されている。その後も外交日程が山積している。

 日本の首相がそのような場に出席できないことになれば、国際社会における日本のプレゼンスはゼロになりかねない。中国の後塵を拝すことになってしまう。本当に心配である。

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