「ネットの自由」を標榜するサイバー同盟に乗り遅れ
楽天・三木谷社長も嘆く
国際社会から孤立した菅政権の大失態

この首相はいったい、いつまで政権の座に居座り、どこまで日本を窮地に追い込んだら、自己保身という罪の重さが理解できるのだろうか〔PHOTO〕gettyimages

 米、仏、英を中心とした「サイバー同盟」の一員として、「ネットの自由」を標榜する側に立つのか、それとも、中国やアラブ諸国のネット上の基本的な人権の侵害に対して、何も言わないのか。

 日本は歴史的な選択を迫られているにもかかわらず、その場しのぎの延命策に躍起の菅直人政権は国際社会の激変も、事の重大さもまったく理解していないようである。

 この首相はいったい、いつまで政権の座に居座り、どこまで日本を窮地に追い込んだら、自己保身という罪の重さが理解できるのだろうか。

 昨年末以来、「インターネットの自由と安全」を巡って、米欧諸国と、中国をリーダーとする新興諸国の対立が深刻さを増していることは、多くの人が直感的に感じていることではないだろうか。

 そもそものきっかけは、中国やインドが数ヶ月前から、チュニジアやエジプトで長期独裁政権を崩壊に追いやった「インターネットの自由」を自国内で抑圧し、自国民による民主化要求を抑え込もうと試みていることだ。こうした行為に、米、英、仏中心とした米欧諸国は猛烈な危機感を募らせている。

 加えて、米欧諸国は、中国国内のサーバーを経由して行われる先進諸国へのサイバーテロが一向に減らないことにも苛立ちを強めている。すでに、水面下では、サイバーテロに共同で対処するための軍事同盟の強化を視野に入れた協議に着手しているのだ。

 ところが、菅直人政権は、周知のように、早くからレームダック状態に陥り、福島原発事故ひとつをとっても円滑に処理できない体たらくだ。国際関係が緊張を増す中で、日本の舵取り役を期待する方が無理なのかもしれない。

 実際のところ、米欧各国が5月のOECD(経済協力開発機構)の50周年記念式典やG8サミット(主要国首脳会議)の際に、アジアで唯一、価値観を共有する仲間と期待し、愁波を送ってきたにもかかわらず、菅首相自身がその意味を理解できず、ひと言も発言できなかったという。その様子を見て、関係省庁の官僚たちは知らんふりを決め込んでしまった。その結果、日本は今、深刻な国際的孤立という危機に直面しているのである。

「アラブの春」に危機感を募らせた中国、イラン

 そもそも論に話を戻そう。

 昨年暮れ、チュニジアでは、生活のために、無許可で野菜を街頭で販売したことを罪に問われた青年が抗議の焼身自殺を図ったことを機に、大規模なデモが続発、年が明けると、ベン・アリ大統領が国外逃亡に追い込まれた。これがジャスミン革命である。

 ジャスミン革命は各地に伝播した。そして、エジプトでは、長期間にわたって独裁体制を敷いてきたムバラク大統領が辞任に追い込まれた。

 「アラブの春」と呼ばれた、これらの民主化運動はリビア、シリアをはじめ、多くのアラブ諸国でいまだにくすぶり続けている。

 見逃せないのは、その原動力として、インターネットやブログ、SNSが、そのポテンシャルの大きさを見せつけたことである。

 それに対抗して、中国やイランといった国々は、「アラブの春」に危機感を募らせて、ネットに対する検閲の強化などを打ち出した。

 米国がそうはさせまいと、「インターネット上の基本的人権」などを擁護する姿勢を鮮明にしたのは、今年2月15日のことだった。クリントン米国務長官がワシントン市内で「インターネットの自由」と題する演説を行い、中国とイランのネット検閲に名指しで言及、「中短期的には規制が可能でも、長期的には国の成長と発展を締め付ける『縄』になる」と批判したのである。

 さらに、5月16日になると、オバマ米政権は、米国としてこの分野で初めての対外戦略である「サイバー空間の国際戦略」を公表した。

 内容は、サイバー空間における基本的人権の尊重やプライバシーの保護といった従来からの基本原則に加えて、新たにアクセスの信頼性の確保やサイバー・セキュリティに関する十分な注意を盛り込み、これらを世界共通の指針とするよう求めるものだった。

 特に、自由貿易の維持や、知的財産の保護、ネットワークへの不正侵入の防止、サイバー犯罪に対する国際的な法執行の強化、市民の参加の保証などを「優先すべき政策課題」として盛り込んだ。「アラブの春」に危機感を強めて、ネット規制を強める中国をはじめとした新興国、途上国をけん制する姿勢を一段と鮮明にしたのだ。

 もうひとつ、見逃せないのは、「優先すべき政策課題」の中に、「サイバー空間の潜在的な脅威に立ち向かうため、軍事上の同盟を構築又は既存の同盟を強化する」との項目も明記した点だろう。

 この10日あまり後に迫っていたOECDやサミットの首脳会合へ向けて、米国はあらかじめ、友好各国に対して共同歩調をとるように迫る姿勢を表明していたのである。

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