「原発運転再開」はストレステストよりも安全基準を重視し、「埋蔵電力」を隠す東京電力に情報公開を迫れ
発表のたびに電力供給量が増える不思議
ストレステストが再開の条件なのはおかしい 【photo】getty images

  菅直人首相は7月6日、全原発にストレステストの実施を表明し、大問題になっている。海江田万里経産相の働きかけによってすでに再稼働受け入れを表明した自治体では突然の方針転換に大混乱した。梯子を外された海江田経産相も辞任を示唆した。

 この政治混乱は酷い。ストレステストが再稼働の条件になるかどうかさえ政府見解ははっきりしていない。政治的な手順を言えば、EUでのストレステストの話は大震災発生直後からあるが、もしストレステストを言うのであれば、浜岡原発を止めた5月上旬に言うべきだった。あの当時、浜岡は停止、その他は再稼働という方針のはずだった。それを菅首相は、浜岡だけを取り上げていいとこ取りしたのだ。ズル菅といわれる所以だ。

 ストレステストとは、いろいろなところで使われるが、金融機関に対するものが有名である。金利が2%急に上昇したとか通常あまりないような条件で金融機関の財務の健全性をみるシミュレーションテストだ。郵政民営化の際には、制度設計を担当した私は、民営化された郵政にストレステストを実施して、その構造の弱点など分析したことがある。

 原発であれば、地震の加速度を段階的に上げる、津波の高さを段階的に上げる、無電力状態を想定するなどでシミュレーションを行うことになるだろう。原発固有の話だが、地震を海溝型地震、断層型地震、直下型地震と三類型に分類しそれぞれ想定している。これらの想定外もシミュレーションするだろう。

 EUの場合、テロに対して原発が安全かどうかの項目も含まれ、6月から域内143の原発を対象にストレステストが始められている。その結果は1年後にでるようだ。

 こうしたストレステストを原発に行うのは悪くない。しかし、それを実施するうえで改善すべき問題もある。

再稼働に向けたアリバイづくりになる懸念

 まず、どこまで想定するかも人任せである。誰が実務を担うのか。信用できるのか。
具体的な計画、手法は経産省原子力安全・保安院が、第三者機関である内閣府原子力安全委員会の意見を踏まえてつくるというが、はたしてできるのか。経産省原子力安全・保安院が浜岡以外は安全上支障がないと判定していたことが、菅総理に簡単に覆された。そういうところでやるストレステストで安心が得られるのか。また、ストレステストも業者任せになるのではないか。

 次に、ストレステストをどのように使うのか。今の政府は、ストレステストを再稼働の条件にする方針だ。定期点検で停止中の原発が津波や地震にどこまで耐えられるかを調査する第一弾と、欧州連合(EU)を参考にした総合的な安全評価を全原発で実施する第二弾を考えているようだ。となると、今点検中の原発14のうち12基は来年2月までに再開予定なのだが、ストレステストの内容次第ではその再開も危うくなる。

 となると、再稼働に向けて手抜きストレステスト、アリバイ作りになる可能性もある。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら