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2010年09月11日(土)

『バイラル・ループ あっという間の急成長にはワケがある』
著者:アダム・ペネンバーグ 翻訳:中山宥・前編

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『バイラル・ループ あっという間の急成長にはワケがある』
著者:Adam L. Penenberg(アダム・ペネンバーグ)
翻訳:中山宥
講談社
定価1785円(税込)
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⇒『バイラル・ループ』特設サイト(9/14より無料PDF公開)
◎担当編集者よりの紹介◎

 

 ユーチューブやミクシィ、フェイスブック、ツイッターなど、いま成功している「ウェブ2.0企業」には、すべて共通した"ある秘密"がある。「バイラル・ループ」と呼ばれる現象がビジネス戦略に組み込まれているのだ。

  これはモノやサービスが人の口コミや紹介を通じて、"ウィルスのように伝播していく現象"のことである

 誰も読んでくれる人などいないとわかっていて、ツイッターでつぶやく人はいないだろう。知り合いがいないのに、ミクシィに登録する人もいないはずだ。本当に気に入り、利用したいと考えたモノやサービスなら、消費者は自ずと周りの人に薦めるーー。こうして、利用者自身が気に入ったモノやサービスを積極的に紹介していく「バイラル・ループ」が拡がり、かつてないスピードで企業規模が急拡大しているのである。

 では、いかにして"感染"するビジネスは生み出されたのか?

 ニューヨーク大学准教授のアダム・ペネンバーグは、「バイラル・ループ」を利用して世界的企業となった企業をいくつも取材し、その成功物語を一冊の本にまとめた。ウェブメールサービスの「ホットメール」やオークションサイト最大手の「イーベイ」のほか、容器メーカーの「タッパーウェア」がいかにしてシェアを拡大したかや、米オバマ大統領当選の背景までをつぶさに考察、その秘密に迫っている。

 「バイラル・ループ」にいち早く気付いた起業家や投資家、経営者たちがいかにしてそれを経営に活かしたか。本書は彼らの証言を元に、各企業の急成長ぶりを活写している。

 ベンチャー企業、NPOや多国籍企業など、組織の形態や業種を問わず、ITテクノロジーの力を最大限に引き出す「バイラル・ループ」を企業戦略に組み込むことで、飛躍的な成長を望めるだろう。ライバルに差をつけるための次代のマーケティング戦略、「バイラル・ループ」。限られたリソースで確かなパフォーマンスを狙う現代のビジネスパーソン必読の書だ。

* * *

[まえがき]  ITジャーナリスト 佐々木俊尚

 バイラル・ループというのは、インターネット上でブログやツイッター、ユーチューブなどのソーシャルメディアを経由して、情報がウイルスのように伝播していく現象のことだ。

 本書ではバイラル・ループの成功例が、数多く取り上げられている。たとえば序章に描かれている2008年のアメリカ大統領選挙。バラク・オバマ陣営はこの選挙で、徹底的なバイラル・ループ戦略を採った。その内容については本書をお読みいただければと思うけれども、ネットを使った選挙運動がまだ認められていない日本の現状と比べれば、ソーシャルメディアの構造に精通し、その可能性を存分に生かした選挙運動のあり方には驚嘆させられる。

 実はオバマ陣営には、フェイスブックの共同設立者だったクリス・ヒューズや、04年の大統領選挙で徹底したネット戦略を採って話題を集めたハワード・ディーン陣営にいたジョー・ロスパースなどが参加していた。これらのメンバーが中心になって、さまざまなソーシャルメディア戦略を多面的に展開したのだった。

 こうしたバイラル・ループ戦略は選挙のみならず、広告宣伝やさまざまなウェブのサービスの展開など、いまやありとあらゆる分野で採用されている。本書を読み進んでいけば、バイラル・ループがいかに各分野を横断的に覆い尽くしていっているかがつぶさに理解できるはずだ。

 そしてこのバイラル・ループも、どんどん進化してきている。

 初期のネットでは、バイラル・ループの中心は検索エンジンだった。検索結果の上位にランキングされれば、多くの人がそのサイトを訪れるようになる。しかし検索エンジンが情報流路の中心だった90年代はまだ「バイラル」というほどには強い伝染力はなく、どちらかといえば情報はおだやかな速度であちこちに波及していった。

 その次にやってきたのは、ブログだ。日本では03年ごろに普及し始めたブログは、書く側も読む側も敷居が低いことに加え、ブログのエントリー(記事)同士をリンクで結びつけるトラックバックの機能によって、情報の伝達範囲は格段に広がった。

 00年代半ばには、日本でもブログマーケティングが口コミの新たな手段として注目されたのは記憶に新しい。だがブログの場合、誰がそのブログを読み、どのように影響を受けているのかという全体像を可視化しにくい。実際にブログの影響を効果測定しにくく、特定の分野で影響力のあるブログを探すのが難しいということもあった。

 だがこの時期になると、「Web2.0」という言葉の下に動画共有サービスのユーチューブや写真共有のフリッカー、人と人を結ぶSNSなどさまざまなソーシャルメディアがまさに百花繚乱のように噴出し始める。

 たとえばSNSであれば、利用者と利用者がどうつながっているのかというソーシャルグラフ(人間関係)が明確にわかっていて、情報がどう流れていくのかということがある程度まで把握できる。友人の情報を読んだユーザーの属性(性別、年齢、住所など)も特定可能で、効果測定が行いやすい。現時点で日本ではそこまで行われていないが、SNS上で友人をたくさん持っていて、特定の分野で影響力の高いインフルエンサーを特定し、そこに集中的に情報を流すといったことも可能になってくる。

 日本の広告業界では、いまだにソーシャルメディアに対して「どう取り組めばいいのかわからない」と不安を感じている人が少なくない。中には「炎上してしまう危険性があって怖い」と尻込みしている人も少なくないだろう。

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