希代のヒットメーカーが挑むメディカル・エンタテインメント VOL.7
『陽の鳥』 著者:樹林伸

『陽の鳥』
著者:樹林伸
講談社
定価1,680(税込)

⇒本を購入する(AMAZON)
◎担当編集者よりの紹介◎

 「生命倫理と家族愛」をテーマに、希代のヒットメーカーが挑むメディカル・エンタテインメント大作!

 関東大学畜産学部の沖田森彦は医師免許を持つ霊長類クローンの研究者。妻を亡くし、高いIQを持つ小学生の息子・有基と二人で暮らしている。1999年、沖田は助手の名嘉城数矢とともに、世界で初めてヒト・クローン胚の樹立に成功していた。科学の歴史に新たに名を刻む、世紀の発見。しかしその発表を間近に控えた矢先、息子の有基が突然の事故に遭い、この世を去ってしまう。

 悲嘆に暮れる沖田が下したある決断---それは、助手の名嘉城と共謀し、生命科学のタブーであるヒト・クローン技術によって、息子を「復活」させることだった・・・!!

「お待たせしました。授業中だったものですから」

 二〇代半ばの若い先生で、生徒たちからは優しいと評判らしいが、森彦はあまり好きではない。どうも彼女の優しさは、無責任の裏返しなのではという気がする。

「すみません、沖田有基の父です」

 苛立ちを抑えて丁寧に名乗る。息が荒いのが自分でもわかるが、これはどうしようもない。

「息子が学校に行っていないという連絡を、私の同僚が携帯電話で受けたそうで」

「はい。お父様のお仕事場にお電話さしあげたのですが、お出にならなかったので、もう一つの緊急連絡先にかけさせていただきました」

 やたらに『お』が多い言葉づかいが鼻につく。私立小学校はうるさ型の親が多いようなので、若い教員たちも言葉づかいを仕込まれているのだろうけれど、こういう非常事態に際してやたら丁寧に事情を説明されても、逆に事務的な印象を受ける。マニュアル通りに対応しているらしき如才なさは、若いわりにしっかりしているという父母たちの評判どおりだが、子供のことを本気で心配している様子が声色から感じられないのはいささか不安だった。

 それとも、小学校の教員をしていればこの程度のトラブルは日常茶飯事なのか。そうであってほしい。あと一時間もしたら彼女からまた連絡が入り、お子さんが泣きながら登校してきました、と苦笑まじりで伝えてくる。森彦が学校に迎えにいくと、すっかり泣き止んでご機嫌な有基が、いつものように力一杯抱きついてきて---。