調査報道NPOのウォッチドッグ創業者インタビュー「ジャーナリズムはビジネスになるのか」 「調査報道は公共サービス」「広告を出すスポンサーなんて皆無です」

2010年09月09日(木) 牧野 洋
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――コストがかかるとなれば、それを賄うのも大変です。調査報道に喜んで広告を出す企業はいるのでしょうか?

ハーン 個人的な経験から言えば、皆無です(笑)。

 新聞社の経営は主に広告収入に頼って成り立っています。特に自動車と不動産広告です。それぞれ別刷りのセクションがあるほどです。あまりにも多額のカネが入ってきたから、新聞社には公共サービス、つまり調査報道を手掛ける余裕があったのです。

 言い換えると、自動車と不動産の両業界が調査報道を支えていたわけです。もちろん、両業界とも「公共サービスだから協力しよう」との判断から広告を出してきたわけではありません。あくまで売り上げを増やすためであって、調査報道のことなどこれっぽっちも考えていなかったはずです。

 新聞社の広告担当者が企業を訪問して、「権力の不正を暴く調査報道記事が載る紙面に御社の広告を載せませんか?」と営業したら、どんな対応をされるでしょうか。門前払いされるのがオチです。

 広告と調査報道は相性が悪いのです。新聞社にとって調査報道から利益を生み出す有効なビジネスモデルがないのは、今も昔も変わりません。変わったのは、インターネットの普及や深刻な経済危機を背景に、自動車と不動産広告が大きく落ち込み、調査報道へ回る資金がなくなったことです。

調査報道は構造的のもうからないのか

――調査報道は構造的にもうからない?

ハーン 面白いインターネット新聞がテキサスにあります。「テキサス・トリビューン」です。ベンチャーキャピタリストのジョン・ソーントンが昨年夏に立ち上げたNPOで、テキサスの政界動向について独立した視点で報道するのを目的にしています。

 調査報道について彼のスピーチを聞いたり、彼から直接話を聞いたりする機会がありました。彼はベンチャーキャピタリストですから、最初に厳密なビジネスプランを作りました。そこで下した結論が「調査報道でカネもうけはできない」でした。

 だからこそジョンはNPOを選んだのです。彼自身も資産家ですが、NPOであれば広く寄付を集められます。実際、テキサスの著名な資産家や有力な慈善財団から資金調達しています(「企業乗っ取り屋」と呼ばれたT・ブーン・ピケンズも、テキサス・トリビューンに寄付した富裕個人の1人)。

――調査報道の救世主はNPOということですか?

ハーン 調査報道全体の中でNPOの役割が高まっていくとは思いますが、どの程度までかは分かりません。営利企業として経営される新聞社の調査報道を上回るまでになるかどうか・・・。

 アメリカ各地で誕生する調査報道NPOを束ねる上部組織「インベスティゲーティブ・ニューズ・ネットワーク(調査報道ネットワーク)」が昨年7月に発足し、寄付に頼らずとも持続可能なビジネスモデルを模索しています。WIも同ネットワークの一員です。

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