厚生労働省がやっとあの重い腰を少しあげた。「マザーキラー」の異名をとる子宮頸がんの予防ワクチン接種の重要性を認め、その一部を公費で助成する方針に転換したのだ。
同省は先週火曜日(8月31日)、財務省に提出した来年度概算要求の特別枠で、各地の市町村が実施する助成事業の3分の1の補助に必要な150億円を初めて予算要求に掲げたのである。

子宮頸がんは、その名の通り癌の一種。日本では毎年1万5000人前後が発症し、3500人前後の患者さんが亡くなっている。
最近は患者の低年齢化も顕著で、45歳以下の女性の死亡原因の2位にランクされる病気である。
まだほんの端緒とはいえ、厚生労働省を予防体制作りに追い込んだ多くの関係者の真摯な努力を高く評価したい。これは日本の医療行政において画期的なことといえる。
一方、行政側の対応には2つの問題がある。第一は、今回、急きょ、助成を決めた根拠だ。高まりを見せた世論を無視できなくなっただけで、きちんとした政策哲学が見えてこない。
肝心の助成額が「市町村の事業の3分の1」に過ぎない150億円にとどまったことは、その証拠である。日本をワクチン後進国に転落させたワクチン行政は今回も改善が見られなかった。
6月15日付の本コラム(「子宮頸がん『ワクチン接種の公費負担』も参議院選挙の争点に」)で紹介した通り、子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)が発症の原因になる癌だ。
HPVが性交渉で感染するメカニズムが解明されており、性交渉経験を持つ女性の8割が、少なくとも生涯に一度はHPVに感染するとされる。
そのうち9割以上の人は免疫力がウイルスに勝り、自然にHPVを駆逐する。だが、残り1割以下の人(全体の8%前後の人)は、子宮入り口にあたる頸部の細胞に変化が起きて癌になってしまうという。
HPVウイルスには様々なタイプがあるが、「サーバリックス」(英国系製薬会社製)というワクチンは全体の6~7割のHPVの予防に有効とされる。定期的な検査と併用すれば、子宮頸がんのほとんどを予防できるという。
ところが、これほど期待されるワクチンの販売が国内で解禁されたのは、昨年暮れのこと。なんと世界で99番目という遅さだった。遅いとか、不十分とか「お役所仕事」の特色は、この解禁の遅さだけにとどまらない。
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