菅・小沢「代表選」政策論争で決定的に欠けている「金融政策」
30~40兆円の量的緩和で1ドル100円に

 民主党代表選も、残り1週間になった。メディアもさすがにいつまでも政局話ばかりではということなのだろう、政策議論もでてきた。

 しかし、いまもっとも大切な景気対策についてみれば、残念ながらほとんど両者には差がない。

 菅直人総理の政策は、8月30日に発表されたものだ(同日の筆者のコラム参照)。小沢一郎氏は、「22年度予算で計上された経済危機対応・地域活性化予備費(1兆円)と国庫債務負担行為限度額(1兆円)の計2兆円を全額執行し、住宅ローン供給の円滑化、エコポイントの延長、学校・病院の耐震化の景気対策をする」としている。

 両者の基本的な違いは、国庫債務負担行為(1兆円)について、菅氏は使わず、小沢氏は使うという点だ。国庫負担行為は、後年度に歳出計上するものであり、実質的には国債発行増と同じである。

 一方、為替介入について、菅氏は「引き続き為替の動向について注視していくとともに、必要な時には断固たる措置をとる」とし、小沢氏は「市場介入を含むあらゆる方策を果断に実施する」とされている。両者の差は本質的にはない。

 両者に欠けているのは、金融政策の話である。為替レートが二国間の通貨の交換比率である以上、後述するように金融政策が決定的に重要なのだが…。

 代表選の最中、金融政策に言及すると、マスコミから、中央銀行の独立性を損なうとの批判が出るから避けているという見方もあるかもしれない。しかし、こんな批判は、日本のメディアが不勉強なだけだ。金融政策の目標に言及することは、先進国で共有されている考え方である。

 事実、5月下旬に、バーナンキFRB(連邦準備理事会)議長が来日して講演したときにも、金融政策の目標を中央銀行が独立して決めるのではなく、政治で決めるのは民主主義国家では当たり前といっている。しかし、このときも、日銀に洗脳されているマスコミはまったく報道しなかった。

 いずれにしても、金融政策の話が欠けているので、民主党代表選の景気・円高対策に迫力がない。菅氏はマニフェスト微修正で、小沢氏マニフェスト遵守という程度である。マニフェストにない景気・円高対策こそ、差別化できる分野なのに、金融政策に言及していないのである。

もはや先進国では協調などない

 例えば、円ドルレートで円高になるのは、円とドルの総量を比べて円のほうが相対的に少ないからだ。2008年秋のリーマンショック以降、各国中央銀行は通貨を増やしているが、日銀だけが増やしていないために、円はほとんどの通貨に対して円高になっている。

 それは、次のふたつの図をみればわかる。

 最初の図では、リーマンショック以降、各国中央銀行は日銀に比べてバランスシートを拡大していることがわかる。

 次の図では、それに応じて、円が各国通貨に対して円高になっていることはわかる。

 各国通貨に対する円高は、日銀が各国中央銀行に比べてバランスシートを拡大させなかったことで、8~9割は説明可能になっている。つまり、今の円高の8~9割は日銀の責任なのだ。

 ここまで、日銀の責任が明確なのだから、逆に行うべき対策は自ずと見えてくる。

 今の円高を打開しようとすれば、日銀がバランスシートを拡大させればいいのだ。上の図を統計的に分析すれば、例えば、円ドルレートを100円くらいにしようとすれば、30~40兆円増の量的緩和をやって、バランスシートを拡大すればいい。

 為替レートについて、露骨に目標として切り下げ競争をするのもどうかと思うが、今や先進国間で協調介入などない。各国とも必死に金融緩和して結果としてレート引き下げを行っている。

 では、どうすべきか。

国際慣行とも整合的、かつ、中央銀行の独立性に反しない政府と日銀の共有目標として、物価安定目標がある。現時点でいえば、2年以内でインフレ率を2%程度にすると言う目標なら、30~40兆円の量的緩和は、その目標達成のために政策として自然に出てくるものである。

 こうした国際的にもオーソドックスで精錬され、国際的な批判を受けず、しかも現在の日本の経済問題に対処できるような政策は、菅対小沢の論争では見られないのだろうか。

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