「全身麻痺」で話すことができない交通事故被害者が夫に送り続ける「愛の言葉」 
感動ノンフィクション『巻子の言霊』主人公と筆者の対談

 あまりに不運な交通事故によって全身麻痺となった65歳の妻を献身的に支える73歳の夫。そんな夫に妻は会話補助機を使って懸命に愛の言葉を送り続けた――。

 二人の姿を通して、真の愛情のありかたと交通事故被害者の悲惨な現実を描いた『巻子の言霊』。老老介護、尊厳死、歪な保険制度といった現在日本が抱えるさまざまな問題の生々しい実情も浮き彫りとなっていることもあって、現在、大きな反響を呼んでいる。

 今回、著者の柳原三佳氏と同書の主人公となった松尾幸郎さんが対談。同書に込められたメッセージについて改めて語り合った。

全国から寄せられる、切実な感想文

柳原 巻子の言霊 ~愛と命を紡いだ、ある夫婦の物語』が出版されて、はや2ヵ月経ち

柳原三佳氏

ました。

 突然の交通事故で全身麻痺となり、話すことも食べることもできなくなった最愛の奥さま・巻子さん。ご主人である幸郎さんはそんな巻子さんを、大きな愛で包みながら献身的に介護し、幾多の逆境を乗り越えてこられました。

 幸郎さんの生き様と、病床から会話補助機を使って懸命に愛の言葉を綴る巻子さんの優しさ・・・。

 お二人の深い絆に感銘を受けたという読者の方々から、私のもとには連日たくさんの感想文が届いています。松尾さんの方にも相当な数のメッセージが届いているようですね。

松尾 はい、私の方にも、毎日たくさんの電話や手紙、メールが届いており、その反響の大きさに、自分でも驚いているところです。

柳原 私もこれまでいろんな本を書いてきましたが、今回の本に寄せられる感想文はどれも長文で、内容が非常に重く、また奥深いのが特徴です。しかも、感想に加え、ご自身の人生や過酷な体験についても切々と書き連ねてあるんですね。

松尾幸郎さん

 これはやはり、松尾さんご夫妻が、これまでに体験された苦しみやその中から見えてきた世の中の不条理に対する強い問題意識を、包み隠さず、赤裸々に語ってくださった結果ではないかと・・・。

松尾 そうかもしれません。私どもが正直に、全てをさらけ出したために、今まで沈黙されていた不幸な方々も勇気を持って声を出されるようになったのではないでしょうか。私はそれを見て、なんと多くの人が同じような苦しみを体験してきたものか、ということに気づかされました。

柳原 事故から約3年経ったある日、巻子さんが会話補助機を使って、『ゆきおさんをにほんいちあいしています』とおっしゃる場面が出てきますね。