中国
墜落事故で異例の「日本式お詫び会見」まで行った中国航空業界の「事情」
急成長で陸も空も交通インフラに軋み

「誠に申し訳ございませんでした。犠牲者及び遺族の関係者の方々に、深くお詫びを申し上げます」

 カメラマンのフラッシュが一斉に焚かれる中、河南航空監事会の劉航主席は、2度にわたって、深々と頭を下げた。

 日本で企業が不祥事を起こした時などによく行われる「社長のお詫び会見」が、先日、中国でも行われた。中国人は日本人のように頭を下げないものと思っていたので、ビックリである。日本人の私だけでなく、周囲の中国人に聞いても、企業のお詫び会見など前代未聞ではないかという。

 6月初旬の鳩山首相の辞任会見で、鳩山首相が日本国民に対して頭を下げた時の映像が、中国でも繰り返し放映されたが、中国人の目には、非常に奇異に映ったものだ。

 8月24日夜、黒竜江省のハルビン空港を飛び立った河南航空8387便が、目的地の伊春空港への着陸に失敗し、炎上。乗客乗員96人のうち、機内後部に乗っていた42人が死亡した。今回の「お詫び会見」は、この事故を受けてのことだった。

 中国では、2004年11月に上海発内モンゴル自治区包頭着の53人を乗せた飛行機が墜落して以来、5年7ヵ月間にわたって航空機の無事故運転記録を続けてきた。最近は、胡錦濤主席も温家宝首相も、「中国の空の便は諸外国より安全である」というのが自慢で、各国との首脳会談の場などで、事あるたびにそのことを強調してきた。

 その「安全神話」が、今回あっけなく崩壊してしまったわけだ。そのため胡錦濤主席の怒りは凄まじく、「国内の全航空機を徹底的に点検し直せ!」と、航空業界に向かって檄を飛ばした。

アジア最大の航空市場を支えるお粗末な事情

 中国は、いまやアジア最大の「航空大国」となっており、数年後にはアメリカを抜いて世界一の輸送量となる見込みだ。一昨年に天津にオープンしたエアバスの巨大工場は、中国市場に1000機以上の航空機を提供し続けると宣言している。

 だが今回の河南航空の惨事は図らずも、急成長を遂げる中国航空業界の「恥部」をさらけ出すこととなってしまった。そもそもこの航空会社は、過疎化に悩む河南省が支援して、半ば強引に深せん航空の不良子会社を買い取ったため、96%もの負債率を抱えていた。飛行機は、「安かろう、悪かろう」のブラジル製中古機9機が主力だった。

 また、東北地方の夜便は視界不良で警告が出されているにもかかわらず、昼より夜の方が経費が安いことを理由に、夜間にハルビン-伊春を往復する過密スケジュールが組まれていた。黒竜江省側も、08年7月に3年計画で伊春空港の建設に入ったが、折からの金融危機で資金繰りが苦しくなり、管制塔が不備のまま、昨年8月に無理やり開港させていた。

 河南航空の杜撰な経営は、中国の航空業界の恥部の氷山の一角にすぎない。中国ではいま、各地にパイロット養成学校が乱造されており、訓練が不十分なまま、若いパイロットが各航空会社に送り込まれている。ダイヤは過密になる一方で、今年上半期の定刻通りの発着率は76%にすぎない。

 出発ゲートが出発直前になって変わることなど日常茶飯事で、変わったことすら教えてくれないこともある。日々大混雑が続く北京首都国際空港のトップは汚職で摘発されたし、最有力航空会社の中国南方航空でも、経営陣が「総逮捕」となった。

 空が空なら、陸も陸である。

 日本で「110」と言えば、お巡りさんだが、北京では、「京蔵高速道路」の略称である。8月以降、この「110」が大いに注目されている。世界最大の渋滞道路と化しているからだ。

 分岐点がある内モンゴル自治区のオルドスから終着の北京まで、わずか200㎞にすぎない。普段なら飛ばせば2時間で行ける距離なのに、現在は何と20日間! 以上もかかるのだ。なぜなら、この200㎞の区間に、わずかなスキもなく、車が並んでいるからだ。そのほとんどは、石炭などの貨物を満載したダンプカーである。

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