土壇場で反対派委員を大量登用の「茶番」
言論封殺の審議会で強行した「IFRS採用先送り」で本当に喜んでいるのは誰か?

 審議会というのは、役所がやりたい政策を実現するための隠れ蓑だとしばしば批判されてきた。本尊の姿が見えないから隠れ蓑と呼ばれる訳だが、ここまで大根役者が露骨に姿を現すと、茶番劇という他に適切な表現方法はない。

 舞台は6月30日に金融庁で行われた企業会計審議会。国際会計基準IFRSの扱いについて審議するとして、委員が召集された。

 審議会の冒頭、異変が起きた。事務局が新任の臨時委員の名前を呼び上げたのだが、何とその数10人。ここ1年ほど、IFRS導入反対のキャンペーンを精力的に繰り広げてきた佐藤行弘・三菱電機常任顧問ら"反IFRS派"がズラリと顔をそろえた。幕が開いたらメインキャストががらりと変わっていた、というわけだ。

「意見書」を無視した事務局

 冒頭、挨拶に立った自見庄三郎・金融担当大臣は、こう言い放った。

 「今回は政治的決断として大きく舵を切らせていただきました」

 企業会計審議会では2009年にIFRSの扱いに関する中間報告をまとめた。上場企業にIFRS導入を義務付けるかどうか2012年までに決断。もし強制適用ということになった場合は3-4年の準備期間を置く、というものだった。これを「2012年にとらわれず、総合的に成熟された議論を早急に開始する」としたうえで、準備期間を「5-7年」としたのだ。要は先送りを決めた、と述べたわけである。

 いくつかの議題を先に議論し、IFRS問題にテーマが移ると、ここでも異常な光景が繰り広げられた。「臨時委員」として任命されたばかりの委員が次々とIFRSへの反対論を述べ始めたのだ。普通、臨時委員は、正規の委員に遠慮して、なかなか発言しないことが多いが、今回は、事務局に促されて滔々と反対論をぶち上げる委員が目立った。

 真っ先に発言したのが、佐藤行弘氏。自らがまとめた企業の要望書を説明し、「要望は大臣のご挨拶と機をいつにした内容」だと媚びへつらった。ちなみにこの要望書については、以前このコラムでも取り上げた。

 そもそも自見氏は、審議会に先立って先送りの方針を政治主導として記者クラブで発表したが、その資料は「自見事務所が作ったもので、金融庁の担当課は関与していない」代物で、内容は佐藤氏らが掲げる反IFRSの主張そのものだった。「機をいつにしたとは良く言ったもんだ」と正規の委員は苦笑していた。いわば、舞台上に大根役者と振り付け師が同時に現れたようなものだったのだ。

 正規の委員である島崎憲明・住友商事特別顧問が「2009年に決めた日本版ロードマップを見直すにはそれなりのデュープロセスが必要。唐突感がある」と大臣の政治主導に異論を唱えたが、新任の反対派の声にかき消された。日本公認会計士協会の山崎彰三会長が「2012年に決断するというのは国際公約になっているので、先延ばししないで欲しい」と発言したが、もはや反論というよりも哀願調だった。

 審議会では反IFRS派の声が圧倒的に大きかったが、それも当然だった。事前に推進派・賛成派に圧力がかかっていたのだ。

 推進派の旗頭とも言える藤沼亜起・IFRS財団評議員会副議長(元日本公認会計士協会会長)は欠席。取締役を務めている東京証券取引所自主規制法人の会合と重なったためだ。同法人のトップは林正和・元財務事務次官で、金融庁は当然、その日程を知っていたはずだ。さらに藤沼氏は欠席に当たって「意見書」を審議会宛に出したが、事務局はそれを無視。審議会では意見書が出ている事実すら報告されなかった。

 国際派の金融マンである柴田拓美・野村ホールディングス副社長兼COOも海外出張で欠席だった。その日程もはるか以前から決まっていた、という。

 それまでのメインキャストは軒並み降板させられたり、舞台の袖で羽交い絞めにされていたわけだ。

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