国交相がJR東海に建設を指示
[リニア]巨大プロジェクト14年度着工目指す

 大畠章宏国土交通相は運行時速500キロという超高速特急、リニア中央新幹線の整備計画を正式決定し、5月27日JR東海に対して建設を指示した。東京―名古屋間(2027年開業予定)を40分、東京―大阪間(45年開業予定)は1時間7分で結ぶ計画。1973年の基本計画決定以来40年近くを経て、地元自治体に求めている中間駅建設費も含めた総工費約9兆円の巨大プロジェクトが正式に始動した。

 国交省の決定は、リニア計画を審議してきた同省の交通政策審議会・中央新幹線小委員会が5月12日、東名間で最短の南アルプス直線ルートを取るJR東海の建設計画を妥当とする最終答申を出したことを踏まえて行われた。

 答申に向けた同審議会の議論が大詰めを迎えた3月11日、東日本大震災が発生した。このため同新幹線の耐震・防災対策が十分かどうかについてにわかに関心が高まったが、答申では結局、追加対策を求める記述は盛り込まれず、「追加投資は必要ない」というJR東海の主張を容認する形となった。

 その一方で答申は、想定される東海地震など巨大地震の発生による交通の大動脈の寸断を避けるには、東海道新幹線のバイパス機能を持つリニア中央新幹線の重要性が「更に高まった」と指摘。建設計画の妥当性を強調する内容となった。

 最終答申に先立って行われた一般からの意見募集では、建設計画に対し「震災発生で新たな大規模事業を進められる環境ではなくなった」とか、「復興の取り組みを官民で優先すべきだ」といった反対論、慎重論が多数寄せられた。しかし、国交省は答申を尊重し、JR東海が示した計画通りに建設することを最終的に決定した。

 建設計画にブレーキをかけなかった理由として国交省は、リニア中央新幹線の早期建設が災害に強い国土作りに役立つことに加え、3大都市圏約6000万人が相互に1時間で結ばれる巨大都市圏が形成されることや、日本の独自技術で建設することが、中長期的な経済成長や技術革新に大きく貢献するためだと説明している。リニア計画が、暗い話題ばかり多いこの日本で、数少ない明るい話題であることは間違いない。

「未来に展望示す大事業」強調

 大畠国交相はJR東海に建設を指示した5月27日の記者会見でこの点を強調し、「震災によって国内で何となく未来への期待が薄れているが、リニアは未来に対する展望を示す事業として大事だから、一歩進めることにした」と話した。

 建設計画決定を受けて、JR東海は6月7日、東名間で4駅設ける予定の中間駅のうち、地元調整が遅れた長野県を除く神奈川、山梨、岐阜の3県にそれぞれ1駅ずつ設置する3駅の予定位置を直径5㌔円の形で公表した。

 予定地は、神奈川県が相模原市(橋本駅周辺)、山梨県は甲府市など峡中地域(甲府盆地南部)、岐阜県は中津川市西部(美乃坂本駅周辺)。予定位置の選定に当たってJR東海は、在来線や高速道路とのアクセスの利便性、技術的に設置可能で、用地確保が可能であることなどを重視したという。山田佳臣社長は7日の記者会見で「十数年間の地形と地質調査を経た上で、今回の結論に達した」と説明した。

 発着点となる東京、名古屋の両駅(それぞれJR品川駅、JR名古屋駅に併設)と、中間駅のうち神奈川の計3駅は地下駅になる。山梨と岐阜は地上駅で、車両基地が設けられる。

 長野県内の調整を待たず、3県の予定地を「見切り発車」的に発表した形だが、JR東海が発表を急いだのには訳がある。建設に実際に着手するには、環境影響評価(アセスメント)の手続きを踏むことが欠かせないが、アセスは終了まで2~3年かかるとされる。JR東海は14年度中の着工を計画しているが、予定通り着工するには逆算して、今年中にはアセスの手続きに入っておく必要がある。

 手続き入りで沿線自治体の同意を円滑に取り付けるには、計画案の公表を極力早め、自治体と十分な意見交換の時間を確保する必要があると判断した。

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