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 国家公務員の給料がどのように決まるかご存じだろうか。今年度の国家公務員給与に関する「人事院勧告」が8月10日に公表された。内容は「民間水準」にあわせて平均年間給与を1・5%下げるというもので、一見もっともらしい。だが、ちょっと待てよ。民主党がマニフェストに掲げていた国家公務員の人件費2割カットはどうなるのか。

 国家公務員はストライキを打てないなど労働基本権に制約がある。その代償措置として、中立的かつ独立性の強い人事院が民間給与水準を調べて、それに合わせるように公務員の給与水準を政府に勧告する―。以上は、官僚側の表面的な説明だ。

 現実はどうか。人事院は公務員労組と親密で、公務員に優しい役所だ。その証拠は人事院勧告に表れている。表向きは公平な調査に見えるが、ベースとなっている民間企業調査の対象は、優良大企業に偏っているのだ。

 タテマエでは従業員数50人以上の企業を調査していることになっている。だが、その内訳を見ると、500人以上の企業については、全国の8割程度の4000社程度を調査しているのに対し、それ以下の50~500人規模では、全国の2割程度の5900社程度の調査に止まっている。その結果、人事院勧告のベースになっている民間給与は高めになっているのだ。

 似たような調査としては国税庁の民間給与実態統計調査がある。こちらは従業員50人未満の企業も対象にした、より幅広い調査だ。最新データである08年分で比較すると、人事院調査による民間給与(除くボーナス、年間ベース)が465万円なのに対し、国税庁調査では365万円と、100万円も差がある。

 しかも、03年から08年の6年間を見ると、人事院勧告では17万円増えているのに、国税庁調査では逆に9万円も減っている。要するに、人事院勧告は平均的な企業ではなく恵まれた優良企業をベースにして、そことの格差をなくすという観点で数字が出されているので、一般人の感覚とはズレが生じるのだ。

 同じ政府の中に、より広い範囲で調査している国税庁の統計があるのだから、人事院がわざわざ高めの数字を出すために調査する必要はないはずだ。

 こうした公務員に有利な数字を、原口一博総務大臣などは金科玉条のごとく受け止め、「人事院勧告を尊重する責務がある」などと発言している。

 これは、法律の観点に立っても、常識から考えてもおかしな話だ。国家公務員法および一般職公務員給与法のどこにも、勧告を尊重する義務など書いていない。国家公務員法上の制度は、人事院勧告を参考に内閣が給与改定案を作成し、最終的には国会が決定する、となっている。人事院は、神聖な存在でもなんでもなく、一つの官僚機構に過ぎない。

 その官僚機構の出した結論を、政治家があたかも金科玉条のごとく扱うのは、まさに民主党が官僚主導になっている証拠である。過去にも、鈴木善幸内閣で「財政非常事態」を宣言し、人事院勧告に従わなかった例はある。さらに、地方には人事院と似たような組織があるが、地方の財政事情によって勧告通りにならない例はよくある。

 民間企業の経営が傾いたら、ボーナスゼロ、給与大幅カットというのは当たり前だ。公務員だけは、いかに財政状態が悪くなっても、優良企業並みの給与水準を確保するというのはまったくおかしい。


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