韓国とEUにFTAが発効
農業の国際競争力を強化し、国家戦略のもと「第二の開国」を

すでに2010年、欧州の自動車販売で韓国の現代自動車が初めてトヨタ自動車に勝っている〔PHOTO〕gettyimages

 韓国とEU(欧州連合)のFTA(自由貿易協定)が7月1日に発効した。このFTAにより、自動車部品やカメラやリチウムイオン電池などの関税は相互に即時撤廃される。乗用車関税も1500CCを超えるものが3年以内、1500CC以下のものが5年以内にそれぞれ相互に廃止される。カラーテレビも同様に5年以内に関税が廃止される。

 このFTA締結によって輸出などが伸びるため、韓国政府は将来的に6%近くGDPが伸びると試算しているという。すでに2010年、欧州の自動車販売で韓国の現代自動車が初めてトヨタ自動車に勝っている。日本企業が欧州市場で競争上不利に立たせられるのは間違いない。

 韓国は小さな自国市場を捨ててでも、大きな市場を取るという明確な国家戦略がある故に大胆にFTAを推進している。

 韓国は1997年のアジア通貨危機で、国家破産に近いような大打撃を被っており、グローバル経済で落伍者になる怖さを身を以て体験している。国際的な流れに乗り遅れないようにと考える意識が国のリーダー層にあるのではないだろうか。

日本勢とは投資の規模が一桁違う

 世界は動いている。中国の温家宝首相は6月28日、ドイツのメルケル首相と会談し、約150億ドル(約1兆2000億円)の商談に成功した。EUの航空機メーカーであるエアバス社が中国から大量の旅客機の受注を受けた。

 またドイツのフォルクスワーゲン(VW)が中国での新工場建設を決めた。VWの10-15年の設備投資計画は約622億ユーロ(約7兆2774億円)であり、そのうち中国向けは106億ユーロ(1兆2402億円)だ。日本勢とは投資規模が一桁違うといった感じだ。

 日本が大震災からの復興に手間取っている間に世界の産業情勢は日に日に変化している。日本は国際競争から取り残されているのではないかとさえ感じる。企業が国際競争に負けることで、国内の税収や雇用は確実に細る。震災の影響を直接に受けていない、すぐにでも動ける企業や人が海外に打って出て、富を稼いで日本に持ち帰って来ることも日本復興の早道のひとつだと思う。

 でも日本ではそんな議論よりも、松本龍復興相が宮城県知事に対して「無礼な発言」をしたことがメディアでは大きく取り上げられている。そんなことは大した問題ではない(筆者はあの発言は無礼だと思わない。被災の現場も「知恵を出せ」という考えはまっとうだと思う)。

 菅政権はTPP(環太平洋経済連携協定)に参加する方針を打ち出していたが、いつのまに雲散霧消し、先送りされた。その間に世界は動いている。

 自由貿易には賛否両論があり、特に農業関係者の反対の声は大きいが、日本がTPPなどに参加して農業が国際競争にさらされれば、日本の農業は本当に滅んでしまうのだろうか。筆者はそうは思わない。むしろ自由貿易の波の乗らない方が国益を損なうと感じている。

 たとえばこんな事例がある。

 04年に発効した韓国-チリのFTAで韓国車がチリでシェアを伸ばした。日本とチリも07年にEPA(経済連携協定)を結んで盛り返している。07年にチリでのトヨタ車の販売が約2・7万台、現代自動車グループが約4・4万台だったのが、10年はトヨタ車が2・5万台、現代グループが5・9万台となり、その差は開いている。チリの自動車市場は大きくはないが、自由貿易への対応が遅れればグローバル競争では不利になることを示唆している。

 自由貿易になれば、他国から製品が入り込み、日本企業が苦境に立つとの指摘もあるが、たとえば日本では自動車の輸入関税は1978年に撤廃されているが、日本車は輸入車に駆逐されていない。その理由は品質で勝っているからであり、その競争に勝つことが企業の力を強めることにもつながる。

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