「本格的内閣改造で長期政権」の見方も出た菅首相の足下を掬う「閣内不一致」
これが早期退陣の人脈図だ
菅首相に早期退陣圧力をかける政界人脈図
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 菅直人首相の政権維持への執着について、永田町では今や驚きを通り越して感心する向きのほうがはるかに多い。民主党内の権力抗争という観点からすると、岡田克也幹事長を筆頭に党執行部が一致しての「菅降ろし」を進めたにも拘わらず、その菅包囲網を正面突破した菅首相は稀に見る策士・戦士なのかもしれない。

 そうした"戦う政治家・菅直人"の一面を、これまで我々は知らなかったし、敢えて見ようとしなかったのだろう。

 いずれにしても、執行部の首相早期退陣という目論見は潰えた。8月31日までの延長国会会期中の菅首相の退陣は殆んどない。それどころか、本コラムで指摘してきたように、菅首相は「脱原発」をシングルイシューにして「8月下旬衆院解散・9月中旬総選挙」に踏み切る可能性が強まったという見方をする永田町関係者が増えてきている。

 あるいは、6月27日の記者会見での「一定のメドとは、1.11年度第2次補正予算案2.再生可能エネルギー促進特措法3.特例公債法案の成立である」という首相発言からしても、「脱原発解散」はなくても2.と3.の成立が会期内に難しくなれば、「新体制」確立を理由に本格的内閣改造と党執行部の一新人事を断行するのではないかとの見方も浮上している。

 筆者には全くもってリアリティが感じられないが、菅氏は長期政権を強く意識しているというのである。来年秋の民主党代表任期切れまでの続投に本気だというのだ。

 先ず、「脱原発解散」について。党内主流派の凌雲会(前原グループ)を率いる前原誠司前外相は30日、国会内で開いたグループ会合で「被災地のことを考えるとあってはならない。悪い意味で歴史に残る」と述べ、首相自身が衆院解散・総選挙の可能性を示唆していることに不快感を表明した。

 また、求心力が著しく低下したとはいえ党内最大のグループを依然として束ねる小沢一郎元代表に近い輿石東参院議員会長も同日の記者会見で「民主党も早く衣替えして国民に応えられる党にならなければならない」と、首相の思惑を強く牽制してみせた。

 それだけではない。菅氏の事実上の独断専行だった自民党の浜田和幸参院議員を一本釣りで片山善博総務相の大臣政務官に起用した人事についても、言葉遣いは慎重であったが、閣内では野田佳彦財務相が「正面玄関からきちんとお願いすべきことだ」、官邸内でも仙谷由人官房副長官(党代表代行)は「これで与野党協議がぶち壊しになった」と、両氏ともに強い調子で批判している。

梯子を外された海江田大臣

 そして今回の閣僚人事で見落とせないのは、菅首相が海江田万里経済産業相を完全に「敵」に回してしまったことである。首相の信任厚い細野豪志首相補佐官を原発事故収束・再発防止担当相(原発担当相)に抜擢したことで、海江田氏は「2階に上げられ、梯子を外された」との想いを強く抱いているのだ。

 そもそもは首相の方針で現在停止中の原発の再稼動を実現すべく同氏は29日、その第1弾として佐賀県に乗り込み、古川康知事に直談判して九州電力玄海原発2、3号機の運転再開の意向を引き出したのだ。

 ところが海江田経済産業相は今、菅首相が細野原発担当相に首相が密かに期待する「脱原発」ムードの国民への浸透を図るべくムードメーカーの役割を担わせたのではないかとの疑心暗鬼に囚われているのではないか。

 こちらのほうがはるかに深刻である。早晩、閣内不一致という局面が出来するはずだ。

 上手の手に水が漏れる、という言葉もある。細野氏の原発担当相大抜擢、自民党からの一本釣りによる政務官起用、松本龍防災相の復興担当相兼務、亀井静香国民新党代表の首相補佐官指名など、確かに意表を衝いた人事ではあったが、党内外からのハレーションが余りにも大きい。

 党執行部にはいま首相を早期退陣に追い込む手立てがないように見える。しかし、一夜で飲食店3軒(鮨、焼肉、イタリアン)をハシゴするなど上機嫌の菅首相が自ら墓穴を掘る日が、延長国会会期中に必ずやって来る、と筆者は確信している。

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