希代のヒットメーカーが挑むメディカル・エンタテインメント VOL.6
『陽の鳥』 著者:樹林伸

『陽の鳥』
著者:樹林伸
講談社
定価1,680(税込)

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◎担当編集者よりの紹介◎

 「生命倫理と家族愛」をテーマに、希代のヒットメーカーが挑むメディカル・エンタテインメント大作!

 関東大学畜産学部の沖田森彦は医師免許を持つ霊長類クローンの研究者。妻を亡くし、高いIQを持つ小学生の息子・有基と二人で暮らしている。1999年、沖田は助手の名嘉城数矢とともに、世界で初めてヒト・クローン胚の樹立に成功していた。科学の歴史に新たに名を刻む、世紀の発見。しかしその発表を間近に控えた矢先、息子の有基が突然の事故に遭い、この世を去ってしまう。

 悲嘆に暮れる沖田が下したある決断---それは、助手の名嘉城と共謀し、生命科学のタブーであるヒト・クローン技術によって、息子を「復活」させることだった・・・!!

 冬の朝の陽光は水平に近い角度でカーテンまでも開け放った窓から差し込んでくる。清潔さだけはどこにも負けない森彦の研究室。一二畳ほどの室内すべてにほの暖かい自然の光が行き渡り、白い壁全体が輝いて見えた。奈緒の発案で選び名嘉城に注文させた造花も、深めの皿のような器を用いて生け花風の自然なアレンジがなされていて、花弁の白と黄色の柔らかいコントラストが陽光によく映えている。

「この角度からがいいと思うんだが」

 森彦はカメラを片手で構えながら、陽光に鼻をくすぐられてくしゃみをしている契約助手の伊い庭ば冴こさえ子の白衣の袖を引っ張って、
「どう思う、伊庭さんは。こんなに明るい生命科学分野の実験室というのも、めったにない。そこを強調しておきたいんだよ」

 息子の運動会の様子を撮るためだけに買った、ビギナー向けのキヤノンの一眼レフ。プロ・ユースの高級機と何が違うのか、カメラに興味のない森彦にはまったくわからないほどに、はずれなくいい写真が撮れる。

 いつもは雑然としているデスクの上は、伊庭が早朝出勤して片づけてくれていた。つねに掃除を心がけ、空気清浄機も一週間に一度フィルターを替え、空気中の塵にさえも気をつかっている。だから太陽の強い光の中にも塵が舞う様が浮かぶようなことはない。光を完全に透過する澄みきった空気は、逆に何か特別な浄化力のようなものが満ちているようにも思えた。

 窓際から見ると一番奥の位置にある棚の上の造花アレンジメントも、あつらえたように部屋にマッチしている。近くで見た時はもう少し高さがあったほうがいいかとも思ったが、遠目には天井の低さが目立たずにかえっていい。昨日まで飾ってあった背の高い白い花瓶と紅薔薇では、写真の中でぽつんと遠目に浮きあがると、真っ白な壁に血でも飛んでいるかのように見えたかもしれない。