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本誌独自調査
関東1都6県の「放射線汚染度」すべて明かす!

シーベルトは放射線が人体に対して与える影響の度合いを表す。ベクレルは放射性物質が放射線を出す能力の値を表す
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 東京の空間と土壌、関東全域の汚泥処理施設を徹底的に調べた。葛飾区0・28、板橋区0・26、東京大学0・17マイクロシーベルト・・・私たちは汚染された中で生活していたのだ!

 これまで私たちが受け取っていた空気中の放射線量の情報は、正しく危険を知らせる数値ではなかった。文部科学省の委託を受けた各都道府県は、環境放射線を計測する装置「モニタリングポスト」を設置している。だが、東京(新宿区)では地表から19・8m、千葉県(市原市)6~7m、神奈川県(横浜市)は23mの地点に置かれ、我々の生活空間の線量を測っているとは、とても言えない状態が長く続いていたのだ。

 だからであろう。6月15日から1週間かけて、東京都は都内100ヵ所を対象に、地上5cmと1mそれぞれの高さで放射線量の計測を開始した。東京都環境保健課は、「人の生活空間である地上1mと、子供はより地面に近いところで遊ぶだろうと5cmの高さで計測することにした」と主旨を説明する。要は、福島第一原発の事故から3ヵ月経って、ようやく住民のニーズを汲み上げたわけである。

 そして、都下の複数の自治体も計測を始めた。都や各自治体などの調査結果をまとめたのが上の図表である。6月19日までの都の調査で、最も高い0・28マイクロシーベルトを記録した葛飾区も、6月2日から区内7ヵ所の区立公園で週1回の独自調査をスタートしている。

「葛飾区内にホットスポットがあると言われますが、他の自治体と測定機器、場所など、条件が一致していない中での結果なので、単純に比較するのは難しいと思います。健康に害を及ぼすほど、すべての放射能がここに集まっているとは考えておりません」(葛飾区環境課)

 また、足立区では、'99年にJCOの臨界事故(茨城県東海村)が起きた際、すでに計測機器を購入し、月1回の測定を続けていたと説明する。

「震災の翌日から毎日計測しています。'10年度の年間平均が0・06マイクロシーベルト(毎時)でしたが、原発事故の後は、数値的にはケタが一つ違ってきています」(足立区環境保全課)

0・16マイクロシーベルト

 一方、文京区では、まったく計測をしていない。同区環境政策課が説明した。

「現時点で区として計測を行わない理由は、測定方法、結果の評価方法に統一的な見解がないからです。今のように各区がバラバラの条件で勝手に測っても、計測結果の比較ができません。放射線の影響は区を越えます。そうであれば隣接する区と同じ基準で測り、比較できたほうがいい。機械も違い、計測の仕方も決まっていない状況では意味がなく、逆に、区民の不安を煽るだけのことでしょう」

「統一の基準がない」との不満は、計測している自治体も口にしていた。ある自治体の環境部門担当者が、こう明かした。

「都の区長会が、国に対して『福島の学校、幼稚園の基準に相当するものがないので、早急に安全基準を作ってほしい。また基準を超えた時の対応策も示してほしい。その際、他所への移動の必要が生じれば、その費用は国が負担すべき』という要望を出す予定があると聞きます」

 軽々しく「福島の基準」というが、福島県の子供たちが強いられている年間20ミリシーベルトならセーフという高すぎる値は、多くの専門家が異論を唱えている数字だ。そもそも都下の自治体が計測を始めたのは、住民の要望が強かったからである。つまり〝フクシマ〟以後、東北はもちろん、関東でも多くの人が放射線汚染は現実のものだと受け止め、低線量被曝のリスクと向き合って暮らしており、何の情報(数値)も持たないままでは不安だから、これまでの行政の計測方法にダメ出しをしたのだ。

地表からの高さを変えて放射線量を計測する東京都職員。モニタリングポストでは生活者に有益な数値は計測できなかった(6月17日、代々木公園)〔PHOTO〕蓮尾真司

 では、与えられた数値をどう読み解けばいいのか。本誌は、神戸大学大学院海事科学研究科の山内知也教授(放射線計測学)に話を聞いた。山内教授は、福島第一原発の事故後、江東区の保護者からの依頼で土壌汚染の調査に乗り出し、関東地方の公園やグラウンドなどで放射線量の計測を続けてきた。実体験を基に、山内教授が東京都をはじめとした自治体の計測について、こう評価する。

「今、気になるのは子供への影響です。計測する地表からの高さは問題ありません。ただ、計測ポイントが問題です。経験上、同じ敷地内のある地点で0.1マイクロシーベルトを切っていても、別の地点では0.3、0.4を記録することがありました。

 これは水とともに流れ、微粒子になりやすい土に付着して留まるというセシウムの性質によるものです。水溜まりができるところを測ると、ほぼ間違いなく濃度が高く、その水が蒸発した結果、同じ敷地でもそのポイントは数倍の濃度差が出るのです。東京都をはじめ自治体が計測した地点は、公園やグラウンドの真ん中といった代表的な地点でしょう。それではダメで、付近の水溜まりやその痕跡を探せば、0.3、0.4という数値が計測されることは十分ありえます」

 山内教授は、放射線量の濃淡を判断するうえで、「0・16マイクロシーベルト」という目安となる数値を挙げた。

(0・16-0・05)×24時間×365日/1000=0・96≒1

 この計算式は、毎時0・16マイクロシーベルトの環境下で1年を過ごすと仮定すると、文部科学省が目標値として定めた年間1ミリシーベルトの被曝量にほぼ到達することを示している。もともと自然界にある放射性物質からの自然被曝線量0・05マイクロシーベルトを引いて計算するのがポイントで、事故以降の異常を抽出した計算式になっている。

 前述した通り、保護者の依頼で江東区の土壌調査を始めた山内教授は、公園などの線量を測り始めてから、興味深い事実に気が付いたという。それは排水溝の放射線レベルが、他の地点より一段と高いという現象だった。山内教授は語る。

「側溝の水が放射線を出しているのだと気付き、水の行き先を調べてみると、その地域の汚泥処理施設である東部スラッジプラント(江東区新砂)に突き当たりました。江東区の公園の場合、数値の高そうな場所を探し当てると0.2マイクロシーベルトが計測されましたが、プラント周辺は、どこも0.2以上が計測されたのです」

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