日本振興銀行事件において、東京地検特捜部は、8月3日、逮捕勾留中の木村剛前会長(48歳)、西野達也前社長(54歳)、山口博之元専務(49歳)、関本信洋元執行役(38歳)ら4名を検査忌避による銀行法違反で起訴した。警視庁捜査2課が手がけてきたこの事件は、いつの間にか特捜事件になっていたのである。

ここで起訴事実となった検査忌避とは、金融庁の立ち入り検査時に電子メール約710通をサーバー内から意図的に消去したうえ、「メールは担当者の過失で消えた」などと嘘の説明をして検査を妨害したというものである。
日本振興銀行に対する検査は、平成21年6月から平成22年3月までという異例の長期間にわたった。妨害というのであれば、日本振興銀行に対する9ヵ月もの長期検査こそ立派な業務妨害であろう。
検査忌避は、検査する立場の金融庁にとってこそ看過できない犯罪かもしれないが、一般の国民にとって、そんなものは金融機関と監督官庁の内輪喧嘩に過ぎない。鳴り物入りの長期検査の結果出てきたのが検査忌避だけというのでは、捜査機関の面目丸つぶれではないか。
たかがメールの消去ごときで逮捕起訴されるというのでは、国民感情として納得し難いものがある。そこで「やっぱりあんた達ではダメだ」とばかりに、捜査2課に代わって特捜検察が登場したと考えるべきであろう。検察庁特捜部が出てきた以上、事件は検査忌避だけでは終わらない。
悪質性が低い出資法違反容疑
事件は、木村前会長の再逮捕を経てさらに拡大する可能性がある。ここで特捜検察が狙っているのは、商工ローン大手SFCGの債権買取に際して日本振興銀行が受取った手数料の出資法違反容疑と、中小企業振興ネットワークをめぐる迂回融資疑惑だと報じられている。
その出資法違反容疑は何かというと、日本振興銀行がSFCGの債権買取に際して買戻特約を設定するとともに45.7%の手数料を取った点が問題とされている。
容疑に関する金融庁側の理屈は、そもそも買戻特約付きの債権譲渡は債権を担保とした資金の貸付に他ならず、従って受取った手数料は実質的な金利に相当し、一方、当時の出資法の上限金利が29.2%なので、45.7%の高率手数料は出資法違反となるというものである。
僭越ながらこの点につき起訴勾留中の木村前会長に代わって反論すれば、SFCGの債権買取取引では譲渡された債権がすべて買戻されるわけではなく、買戻される債権は一定期間経過後に不良債権であることが判明した債権だけなのであるから、当初から買戻しの予定されている債権担保の融資には該当せず、従って出資法の上限金利は適用されないということになるのであろう。
要は、SFCGの買戻特約付債権買取取引の実態を債権担保融資と見るか債権譲渡と見るかの違いである。これでは日本振興銀行サイドからは何とでも反論できてしまう。
しかもこの高率手数料はことのほか悪質性が薄い。
もとより出資法が上限金利を定めているのは、貸金業者が消費者の弱みに付け込んで反社会的な高金利を取ることを禁止するためであり、その立法趣旨は消費者保護にある。
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